表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
129/168

「一本目」


空気が張り詰める。


誰も動かない。


デミクロンの後ろでは二本のドラゴンが唸っていた。


ルクスは構える。


回転を全身に纏う。


戦争で何度もやった。


何百回もやった。


だが。


目の前にいるのがデミクロンだと思うと身体が重かった。


「先輩」


デミクロンが呼ぶ。


「なんだ」


「避けてくださいね」


次の瞬間だった。


ジュゴォォォォォォン!!


ドラゴンの首が消えた。


速すぎた。


ルクスの視界から完全に消えた。


「ッ!?」


横から衝撃。


ドゴォォォォォン!!


ルクスの身体が吹き飛ぶ。


建物の壁へ叩きつけられた。


肺の空気が全部吐き出される。


「がっ……!」


呼吸ができない。


痛みより先に息ができなかった。


地面へ落ちる。


だが休む暇はない。


二本目。


ドラゴンの顎が迫る。


ルクスは反射的に回転を集中させた。


ギャリギャリギャリギャリ!!


火花が散る。


防げた。


そう思った。


だが。


ドラゴンの力が強すぎた。


防御ごと押し込まれる。


腕が軋む。


骨が悲鳴を上げる。


「ぐっ……!」


「先輩」


デミクロンは歩いてくる。


「弱くなりました?」


その言葉が胸に刺さる。


違う。


弱くなったんじゃない。


迷っているだけだ。


ルクスは立ち上がる。


血が口から流れる。


ドラゴンは再び構えた。


「来い」


ルクスが言う。


デミクロンは少し悲しそうな顔をした。


「本当に」


「なんであんなことしたんですか」


そして。


ドラゴンが飛ぶ。


今度は正面。


ルクスは回転を放つ。


巨大な渦。


地面が捲れる。


木々が吹き飛ぶ。


ドラゴンと衝突する。


ドォォォォォン!!


爆発のような衝撃。


土煙が舞う。


周囲の隊員達も吹き飛ばされる。


だが。


煙の中からドラゴンが出てきた。


無傷だった。


「なっ……」


ルクスの顔が強張る。


その隙。


一瞬だった。


ドラゴンが腕へ噛みつく。


ガブッ。


嫌な音がした。


ルクスは何が起きたか分からなかった。


ドラゴンはそのまま首を振る。


ブチブチブチッ!!


肉が裂ける。


骨が砕ける。


血が噴き出す。


そして。


右腕が肩から千切れ飛んだ。


一瞬だった。


静寂。


ルクスは呆然とする。


自分の右肩を見る。


無い。


腕が無い。


血だけが噴き出している。


理解が追いつかない。


数秒後。


激痛が来た。


「ああああああああああああああああああ!!!!」


絶叫。


膝をつく。


地面が血で染まる。


肩の断面から血が噴き出す。


止まらない。


止まらない。


止まらない。


「あがっ……!!」


「あああああ!!」


呼吸が乱れる。


視界が白くなる。


痛い。


痛い。


痛い。


痛い。


ルクスは地面を殴ろうとする。


だが腕が無い。


右腕が無い。


その事実がさらに痛みを強くする。


「先輩」


デミクロンの声。


ルクスは顔を上げる。


涙で滲む。


汗で滲む。


血で滲む。


何も見えない。


「まだ一本目です」


その言葉に周囲が凍り付く。


ドクの顔から血の気が引く。


「ルクス!!」


叫ぶ。


駆け出そうとする。


だがレグルスが止めた。


「行くな!!」


「でも!!」


「今行ったらお前も死ぬ!!」


レグルス自身も拳を握り潰しそうなほど力を入れていた。


助けたい。


だが入れない。


デミクロンが強すぎる。


ルクスは肩を押さえる。


血が指の隙間から溢れる。


止まらない。


止まる気配がない。


「はぁ……はぁ……」


呼吸も苦しい。


意識が遠のく。


だが。


デミクロンは終わらない。


ドラゴンが再び唸る。


二本とも。


今度は足を見ていた。


ルクスはそれに気付く。


嫌な予感がした。


本能が叫ぶ。


逃げろと。


だが身体が動かない。


血を失い過ぎている。


立つだけで精一杯だった。


デミクロンは静かに言った。


「次は」


「足です」


ドラゴンが地面を蹴った。

面白ければブックマーク評価お願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ