「親友」
レグルスは一人だった。
誰もいない部屋。
机を殴る。
ドン!!
「くそっ!!」
もう一度殴る。
ドン!!
拳から血が流れる。
それでも止まらない。
「何もできなかった」
「何も救えなかった」
机を掴む。
肩が震える。
「クソクソクソクソクソ!!!!」
荒い息が部屋に響く。
ルシカが死んだ。
ブイゼンも死んだ。
どちらも止められなかった。
「なんでなんだよ……」
声が掠れる。
「なんでだよ……」
レグルスは壁にもたれた。
ずるずると床に座り込む。
「俺が何かしたのかよぉぉ……」
ルクスにはドクがいる。
支えてくれる人がいる。
だがレグルスにはいなかった。
ルシカがいた。
親友だった。
別宇宙でも友達になれた。
そんな奴だった。
その親友がいなくなった。
ガチャ。
扉が開く。
レグルスは慌てて顔を上げる。
「……レグルス?」
ルクスだった。
「なんでもない」
反射的にそう答える。
だがルクスは近付いてきた。
「なんでもないわけないだろ」
レグルスは黙る。
ルクスはさらに言った。
「なぁ」
「俺に言えることなら言ってくれ」
「何があったんだ」
レグルスは俯いた。
言うべきじゃない。
そう思った。
だけど。
もう抱えきれなかった。
「言ったらお前は死ぬかもしれない」
ルクスは少しも迷わなかった。
「それでもいい」
「お前が楽になるなら」
レグルスは目を閉じる。
そして全て話した。
ブイゼンが死んだこと。
拷問の末に死んだこと。
拷問官がルシカだったこと。
そして。
ルシカが自殺したこと。
全部。
何も隠さず。
話し終わった頃には部屋は静かだった。
ルクスは固まっていた。
「は?」
小さな声。
「お前……なに……言って……」
拳が震えている。
呼吸も乱れている。
「クソ……」
本当に小さな声だった。
だが。
ルクスは昔とは違った。
抱え込むだけでは駄目だと知っている。
前に進むしかないと知っている。
ルクスは目を閉じた。
大きく息を吸う。
そして吐く。
何度も。
何度も。
やがて顔を上げた。
「レグルス」
「……なんだ」
「俺は前に進む」
レグルスは黙る。
ルクスは続けた。
「父さんが死んでも」
「ルシカが死んでも」
「俺は前に進む」
声は震えていた。
それでも言った。
「だから」
「お前も進め」
レグルスは何も言えなかった。
ただ。
少しだけ。
本当に少しだけ。
胸の重さが軽くなった気がした。
部屋の外では夜風が吹いていた。
戦争はまだ終わっていない。
失ったものも戻らない。
それでも。
二人は前を向こうとしていた。
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