「ありがとう」
ルクスはドクと食事を終えた後、一人でレグルスを探していた。どうしても言わなければならないことがあったからだ。
格納庫の近くでレグルスを見つける。
レグルスは壁にもたれて缶コーヒーを飲んでいた。
「レグルス」
「おう」
レグルスは振り返る。
ルクスは少し黙った。
そして頭を下げた。
「この前はごめん」
レグルスは目を丸くする。
「なんの話だ?」
「空挺に戻った時」
「ああ」
差し出された手を払った時のことだった。
ルクスは拳を握る。
「あの時は色々限界だった」
「分かってる」
レグルスは笑った。
「だから気にしてない」
「でも」
「気にしてないって言ってんだろ」
ルクスは黙る。
レグルスは缶コーヒーを一口飲んだ。
「お前は辛い状況にいた」
「五年間潜入して」
「人を騙して」
「戦争して」
「帰ってきたら父親が捕虜」
レグルスは肩をすくめる。
「俺でもあんな反応する」
ルクスは少し笑った。
本当に少しだけ。
レグルスも笑う。
「だから謝罪は受け取った」
「ありがとう」
「おう」
しばらく沈黙が続く。
嫌な沈黙ではなかった。
戦争の終わりが近い空気だった。
ルクスは空を見る。
「なあ」
「なんだ」
「俺さ」
言葉を探す。
「ドクがいて良かった」
レグルスは吹き出した。
「急に惚気か?」
「違う!」
「顔赤いぞ」
「うるさい!」
久しぶりだった。
こんな会話。
レグルスは笑う。
「生きろよ」
ルクスは少し驚く。
「何だよ急に」
「いや」
レグルスは空を見る。
「生きてりゃどうにかなることもある」
「そういうもんだ」
ルクスは返事をしなかった。
だが少しだけ。
本当に少しだけ。
未来を考えた。
ドクと話す未来。
戦争が終わった未来。
そんなものを。
その頃。
空挺の奥では騒ぎになっていた。
収容室から連絡が返ってこない。
隊員達が扉を開く。
そして絶句した。
ブイゼンは動かない。
ルシカも動かない。
誰かが震える声で言った。
「医療班を呼べ!!」
だが。
もう遅かった。
空挺の中に重い沈黙が広がる。
その知らせがルクスの元へ届くまで。
あと少しだった。
面白ければブックマーク評価お願いします




