「再会」
ルクスは収容室を出た後、そのまま空挺の一角で眠ってしまった。五年間張り詰めていたものが切れたようだった。任務は終わった。戦争はまだ終わっていない。だがルクスの身体は限界だった。
どれくらい眠ったのか分からない。
肩を揺すられる。
「ルクス」
聞き慣れた声だった。
ルクスはゆっくり目を開く。
目の前にいた人物を見て固まった。
「……ドク?」
声が震える。
夢だと思った。
五年間会っていない。
何度も思い出した顔だった。
「夢なのか」
ドクは首を横に振る。
その目には涙が溜まっていた。
「夢じゃないよ」
ルクスは何も言えなくなった。
ドクは泣いていた。
ぽろぽろと涙を流していた。
「なんで」
ルクスは小さく呟く。
「なんで泣いてるんだよ」
ドクは涙を拭う。
「心配したから」
その一言だった。
ルクスは目を逸らした。
「泣くなよ」
声が震える。
「俺は人殺しだ」
ドクは黙る。
「俺は大量虐殺者だ」
「街を壊した」
「人を殺した」
「いっぱい殺した」
ルクスは拳を握る。
「だから俺のために泣くな」
「そんな価値ない」
ドクは一歩近づいた。
「だからなんなの」
ルクスは顔を上げる。
ドクは泣きながら叫んだ。
「だからなんなの!!」
空挺の通路に声が響く。
「私はあなたを見てる!」
「何をしたとかじゃない!」
「私はあなたを見てるの!」
ルクスは何も言えなかった。
ドクは続ける。
「五年前だって知ってる!」
「あなたが私のために何かしようとしてたことも!」
「全部知ってる!」
ルクスの呼吸が乱れる。
ずっと怖かった。
ドクに嫌われるのが。
軽蔑されるのが。
それが一番怖かった。
「俺は」
声が掠れる。
「俺は生きてていいのか」
ドクはゆっくり近づいた。
そして。
おでことおでこをくっつけた。
「え」
ルクスは固まる。
ドクは静かに言った。
「私はあなたがいいの」
ルクスの視界が滲む。
言葉が出ない。
五年間。
戦争の中で生きてきた。
人を騙して。
人を殺して。
感情を殺して。
それでも。
その一言だけで。
救われてしまった。
少し離れた場所でブイゼンはその様子を見ていた。
「良かったな」
誰にも聞こえない声だった。
「本当に良かったな」
ブイゼンは小さく笑った。
そして静かに目を閉じる。
親として。
これ以上ないくらい安心していた。
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