「必中」
煙が晴れていく。
デミクロンは目を見開いた。
そこには一人の男が立っていた。
大きな爆弾を肩に担いでいる。
「ブイゼン先輩!」
デミクロンが叫ぶ。
ブイゼンは振り返らない。
敵陣だけを見ていた。
「下がれ」
その一言だった。
敵軍の特殊装甲戦車が前進してくる。
五年前の戦いの跡地から発見された結晶。
それを利用して作られた特殊装甲。
普通の砲撃では破壊できない。
セートラス軍は何度も苦しめられていた。
だがブイゼンは巨大な爆弾を持ち上げる。
重い。
本来なら投げられる重さではない。
それでも持ち上げた。
デミクロンは知っている。
ブイゼンの能力を。
投擲。
投げた物は必ず当たる。
どんな距離でも。
どんな障害物があっても。
必ず。
「行け」
ブイゼンが爆弾を投げる。
空へ。
高く。
高く。
敵兵達が慌てる。
戦車が砲塔を向ける。
迎撃しようとする。
だが遅い。
爆弾は吸い込まれるように戦車へ向かった。
そして。
ドォォォォォォォォン!!
巨大な爆発。
特殊装甲戦車が吹き飛ぶ。
周囲の戦車も巻き込まれる。
爆炎が空を赤く染めた。
デミクロンは思わず叫ぶ。
「やった!」
周囲の兵士達も歓声を上げる。
だがブイゼンの顔は暗かった。
敵はまだいる。
こちらも限界だった。
塹壕は崩壊。
兵士達は大量に死んだ。
補給も足りない。
このまま戦えば共倒れになる。
指揮官から通信が入る。
『全軍撤退!』
歓声は止んだ。
皆理解していた。
勝った訳ではない。
生き延びるための撤退だ。
セートラス軍は後退を始める。
デミクロンも走る。
振り返る。
そこには壊れた戦場があった。
友達だった兵士。
昨日まで話していた兵士。
もう動かない。
何百人も失った。
それでも戦争は終わらない。
基地へ戻った頃には夜になっていた。
誰も喋らない。
食堂も静かだった。
デミクロンは一人で座る。
手には布が握られていた。
ルグシカスのバンダナだった。
血で汚れている。
デミクロンはそれを見つめる。
「先輩……」
声が震える。
悔しかった。
何もできなかった。
守れなかった。
そして。
決めた。
決意した。
次に戦場へ出た時は。
必ず勝つと。
誰にも聞こえないように。
小さく呟いた。
その夜。
デミクロンは眠れなかった。
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