「夏祭り」
二年が経った。
セートラスとの戦争は終わっていた。
傷は残っている。
失った人も戻らない。
それでも人は生きていく。
デヴァイスも以前の活気を取り戻しつつあった。
そして今日は年に一度の夏祭りだった。
ルクスは祭り会場を歩いていた。
屋台。
提灯。
笑い声。
二年前の戦争が嘘みたいだった。
「ルークス!」
聞き慣れた声。
振り向く。
ドクだった。
紫色の髪が揺れる。
ルクスの心臓が跳ねた。
二年経っても治らない。
むしろ悪化していた。
「お、おう」
「おうじゃないよ」
ドクは笑った。
「一緒に回ろうよ」
ルクスの脳が停止した。
「え?」
「だから一緒に回ろうって」
「いや聞こえてる」
「じゃあ行こう」
腕を引かれる。
ルクスは連行された。
遠くの屋台。
先輩達が見ていた。
「行った」
「行ったな」
「もう付き合えよ」
レグルスは焼き鳥を食べながら笑う。
「二年経っても進展遅すぎだろ」
ルシカは肩を震わせていた。
笑いを堪えている。
ルクス達はまずりんご飴を買った。
ドクは嬉しそうだった。
「やっぱりこれだよね」
「好きだな本当に」
「好き」
その言葉だけでルクスは固まる。
ドクは気付いていない。
りんご飴の話である。
ルクスだけが致命傷を負った。
その後も焼きそば。
射的。
金魚すくい。
色々回った。
気付けば日も暮れていた。
「花火見に行こう」
ドクが言った。
ルクスは嫌な予感がした。
そして当たった。
案内された場所。
あの山だった。
「ここ好きだな」
「景色いいからね」
ルクスは苦笑する。
二年前。
ここで大暴走した。
今では笑い話だった。
二人は腰を下ろす。
しばらく沈黙。
風が吹く。
そして。
ドクがルクスの肩にもたれかかった。
ルクスの脳が停止した。
完全停止。
再起動不可。
「ド、ドドドドドドドドドド」
「なに?」
「いやなんでもない」
ドクは小さく笑った。
「変なの」
遠くで花火が上がる。
大輪の花。
夜空を照らす光。
ルクスは花火を見ようとした。
だが無理だった。
隣にいるドクが気になりすぎた。
花火なんてほとんど見ていない。
そして祭りが終わる。
二人は帰り道を歩いていた。
ドクは少し眠そうだった。
「楽しかった」
「そうだな」
「来年も行こうね」
ルクスは少し驚く。
そして笑った。
「おう」
その約束だけで。
ルクスは十分幸せだった。
そしてその頃。
支部では。
レグルス。
ルシカ。
そして生き残った隊員達が酒を飲んでいた。
「で?」
レグルスが聞く。
「進展したと思う?」
全員首を横に振った。
ルシカが吹き出す。
「まだだろうね」
満場一致だった。
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