「守る者」
作戦当日。
空は曇っていた。
誰も冗談を言わない。
誰も笑わない。
それでも逃げる者はいなかった。
前線の最前列に立ったのはレグルスだった。
ルクスではない。
ルクス以外ならレグルスが最も強い。
だからこそ先頭に立つ。
レグルスは隊員達を見回した。
特攻隊。
誰もが死ぬ可能性を理解している。
それでもここにいる。
レグルスは静かに口を開いた。
「犠牲なくして成功はない」
誰も喋らない。
全員が聞いていた。
「俺だって死にたくない」
「お前達だって死にたくない」
「怖いに決まってる」
レグルスは拳を握った。
「だが誰かが止めなければならない」
「誰かが守らなければならない」
レグルスは前を見る。
敵軍。
戦車。
砲台。
兵士達。
数え切れないほどの人間。
「我々は人を止める」
「皆を守るために」
その言葉に先輩達が頷いた。
ルクスは何も言えなかった。
胸が苦しい。
自分を生かすために。
この人達は死ぬかもしれない。
レグルスはルクスの肩を叩く。
「そんな顔するな」
「まだ誰も死んでない」
ルクスは唇を噛んだ。
「でも」
「俺のために」
レグルスは首を横に振る。
「違う」
「お前のためじゃない」
「守りたいもののためだ」
ルクスは顔を上げた。
レグルスは笑う。
「お前もその一つだけどな」
先輩達が笑った。
少しだけ空気が軽くなる。
そして。
サイレンが鳴った。
作戦開始。
レグルスは一歩前へ出る。
「行くぞ!」
その瞬間。
物質同士を結合する能力が発動した。
地面。
鉄。
瓦礫。
全てが巨大な壁となる。
砲撃が飛ぶ。
壁が受け止める。
爆発。
衝撃。
それでもレグルスは止まらない。
先頭を走る。
誰よりも前へ。
誰よりも危険な場所へ。
ルクスはその背中を見ていた。
昔なら理解できなかった。
何故誰かのためにそこまでできるのか。
今なら少しだけ分かる気がした。
だからこそ苦しかった。
その背中が。
あまりにも大きく見えたからだった。
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