「犠牲」
ルクス達は敗北した。
完全な敗北だった。
敵は対能力者用戦車を開発していたのだ。
回転を利用しようとしても妨害される。
能力の発動そのものが不安定になる。
ルクスは何度も挑んだ。
だが突破できなかった。
先輩達も負傷した。
隊員達も倒れた。
そしてデヴァイスは撤退を決定した。
支部の会議室。
空気は重かった。
誰も喋らない。
地図には赤い印が増え続けている。
セートラス軍は止まらない。
このままでは負ける。
レグルスも理解していた。
ルシカも理解していた。
そして。
誰かが口を開く。
「ルクスを守るべきです」
静まり返る。
「今のデヴァイスで敵戦線を突破できるのはルクスだけです」
誰も否定できない。
「ならルクスを戦場まで届ける必要があります」
その言葉の意味を全員が理解した。
ルクスも。
「待ってくれ」
ルクスが立ち上がる。
「何を言ってるんだ」
誰も答えない。
答えられない。
代わりにレグルスが口を開いた。
「特攻隊を作る」
ルクスは固まった。
耳を疑った。
「は?」
「ルクスを敵本陣まで到達させる」
「そのために囮が必要だ」
ルクスは机を叩いた。
「ふざけんな!」
会議室に響く。
「人を死なせる気かよ!」
誰も怒らなかった。
皆同じことを思っていたからだ。
だが現実だった。
物資が無い。
戦力が無い。
時間も無い。
このままではもっと多くの人が死ぬ。
だから。
少数を犠牲にして多数を救う。
そんな選択肢しか残っていなかった。
ルクスはレグルスを見る。
「止めろよ」
レグルスは目を逸らさなかった。
「止めたいさ」
「でも俺は皆を守る側なんだ」
ルクスは何も言えなかった。
その時だった。
先輩Aが立ち上がる。
「俺行くよ」
先輩Bも立つ。
「俺も」
先輩Cも笑う。
「ルクス泣くなよ」
ルクスは呆然とする。
「なんでだよ」
「なんでそんな簡単に」
先輩Aは苦笑した。
「簡単じゃねえよ」
先輩Bも笑う。
「めちゃくちゃ怖い」
先輩Cは肩をすくめる。
「でもお前死なせる方が嫌なんだよ」
ルクスは言葉を失った。
誰も英雄じゃない。
誰も死にたくない。
それでも。
自分が行くと言う。
ルシカは黙ってその光景を見ていた。
死をなくしたい男。
その理想とは正反対の決断。
拳を握り締める。
血が出るほど強く。
それでも何も言えなかった。
会議は終わった。
作戦は決定された。
ルクスを守るために。
デヴァイスは犠牲を出すことを決めた。
そしてルクスは。
初めて戦争を憎んだ。
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