「尊敬」
ルクスは屋上から戻った後も、ずっとルシカの話を考えていた。
死をなくす。
そんなことができるとは思わない。
だけど馬鹿にする気にもなれなかった。
ルシカは本気だったからだ。
適当に言った言葉じゃない。
何億という人間の苦しみを見て、それでもなお辿り着いた答えだった。
ルクスは自室のベッドへ倒れ込む。
天井を見る。
「すげぇな」
思わず呟いた。
自分なら耐えられなかったと思う。
人を殺してしまったことですら、まだ引きずっている。
なのにルシカは何億もの絶望を見た。
それでも壊れなかった。
翌日。
ルクスは訓練場へ向かった。
先輩達もいる。
少し前までなら気まずかった。
だが今は違う。
キャンプ場での一件の後、先輩達も少しずつ態度を変えていた。
完全に信用された訳ではない。
それでも前よりは良かった。
「おはようございます」
「おう」
先輩も普通に返事をする。
それだけのことなのに少し嬉しかった。
訓練が始まる。
能力は相変わらず上手く使えない。
回そうとしても回らない。
だが暴走もしなくなっていた。
ルシカの装置のおかげだった。
休憩時間。
ルクスは遠くを見る。
ルシカがいた。
隊員達と話している。
年齢はそこまで離れていないように見える。
だけど雰囲気が違う。
どこか大人だった。
そして何より。
誰よりも真剣だった。
命について。
人について。
死について。
ルクスは思う。
レグルスは尊敬している。
強いから。
格好いいから。
初めて自分を認めてくれたから。
だけどルシカは少し違った。
強さではない。
生き方だった。
「変な人だな」
ルクスは小さく笑った。
死をなくすなんて無理だ。
きっと誰だってそう思う。
だけど。
もし本当にそんな世界があるなら。
少しだけ見てみたい。
ルクスはそう思っていた。
遠くではルシカが笑っていた。
その笑顔は優しかった。
だけどどこか寂しそうでもあった。
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