「死をなくす男」
キャンプ場には静寂が戻っていた。
先程まで螺旋状に捻れていた地面は元には戻っていない。だが回転だけは完全に止まっていた。
先輩達も武器を下ろしている。
納得した訳ではない。
ただルシカの言葉を無視できなかっただけだった。
ルクスは地面に座り込んでいた。
身体から力が抜けている。
そして目の前の男を見上げた。
「なんで……」
ルシカが振り返る。
「なんで助けてくれたんですか」
ルクスは聞いた。
本気で分からなかった。
自分は何もしていない。
むしろ問題ばかり起こしている。
人を殺した過去もある。
デヴァイスに来てからも怪物と戦い、本部が壊滅した。
なのに。
ルシカは自分を信じた。
ルシカは少し考えた。
そして答える。
「俺がお前を助けたんじゃない」
「え?」
「殺させなかっただけだ」
ルクスは意味が分からなかった。
ルシカは近くの岩へ腰掛ける。
そして空を見上げた。
「俺はな」
「この世界から死をなくしたい」
その場にいた全員が静かになる。
あまりにも大きな話だった。
誰も冗談だとは思わなかった。
ルシカは本気で言っている。
そう分かる声だった。
「どんな理由があろうと」
「どんな事情があろうと」
「殺させたくない」
ルシカはそう言った。
先輩達も黙って聞いている。
ルクスも何も言えなかった。
ルシカは続ける。
「だからお前も死なせない」
「先輩達も死なせない」
「敵だろうが味方だろうが関係ない」
ルクスは呆然としていた。
そんなことを本気で言う人間を初めて見た。
「無理じゃないですか」
思わず口から出た。
ルシカは笑った。
「知ってる」
「じゃあなんで」
「無理だからやるんだ」
その答えはルクスにはよく分からなかった。
だが不思議だった。
少しだけ格好良いと思った。
ルシカは立ち上がる。
「今日は終わりだ」
「支部へ戻るぞ」
先輩達も動き始める。
だがルシカだけは少し遠くを見るような目をしていた。
何かを思い出している。
後悔するような。
苦しむような。
そんな目だった。
ルクスは気付かなかった。
ルシカが今見ていたのは。
過去だった。
そしてそれこそが。
ルシカが死をなくそうとする理由だった。
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