「代償」
レグルスとゼルクロノスが睨み合う。
その時だった。
ゼルクロノスの身体に異変が起きた。
腕。
胸。
足。
ルクスの回転を受けた部分が螺旋状に捻れていた。
ゼルクロノスは自分の腕を見る。
理解できなかった。
今までどんな傷を負っても治ってきた。
だが今回は違う。
治らない。
回転が止まっているのに元へ戻らない。
その時。
本能が叫んだ。
危険だと。
逃げろと。
ゼルクロノスは初めて恐怖を覚えた。
自分が好きだった。
自分の力が好きだった。
強い自分が好きだった。
なのに今は怖かった。
理解できないものが目の前に現れたからだ。
ゼルクロノスは無我夢中で飛び上がる。
雷を撒き散らしながら空へ向かう。
誰も追わなかった。
いや追えなかった。
数秒後には大気圏を突破し、宇宙へ消えていた。
そして遠くへ。
さらに遠くへ。
ゼルクロノスは逃げ続けた。
泣きながら。
誰にも見られない宇宙の中を。
一方その頃。
ルクスは倒れていた。
壊滅状態となったデヴァイス本部。
崩れた壁。
燃える施設。
瓦礫の山。
その中をレグルスが歩いていた。
生存者を探しているのだ。
「こっちは無事だ!」
「医療班呼べ!」
各所から声が飛ぶ。
そしてレグルスは瓦礫の下に人影を見つけた。
ルクスだった。
「おい」
返事は無い。
死んでいるようにも見えた。
だが呼吸はあった。
レグルスは安堵する。
「生きてるか」
ルクスは気を失っていた。
初めての実戦。
初めての怪物。
初めての死の恐怖。
初めての大規模な能力発動。
身体が限界を迎えていた。
脳が意識を強制的に切ったのだ。
レグルスはルクスを背負う。
周囲を見回した。
本部は壊滅。
デヴァイスの五つの拠点のうち一つが消えた。
被害は大きい。
だが地球は守られた。
そして何より。
ゼルクロノスを退けた。
その事実だけは変わらなかった。
レグルスは気絶しているルクスを見る。
「まったく」
小さく笑う。
「とんでもない新人が来たもんだ」
だがルクスは聞いていなかった。
深い眠りの中に落ちていたからだ。
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