「本番」
街一つ消し飛ばせそうな雷が空に集まっていた。
ルクスは顔を引きつらせる。
「いや……」
「無理だろあれ……」
本音だった。
さっきの雷ですら死にかけたのだ。
あんなものを受けたら終わる。
周囲の隊員達も青ざめている。
幹部達ですら表情が固い。
レグルスはすぐに判断した。
「全員退避!」
怒鳴る。
隊員達が下がる。
だがルクスは動けなかった。
足がすくんでいた。
恐怖だった。
巨大な雷雲を見ているだけで身体が震える。
逃げなきゃいけない。
そう分かっている。
なのに動けない。
その時だった。
ゼルクロノスが腕を振り下ろす。
空が光る。
そして。
雷が落ちた。
轟音。
世界が白く染まる。
誰も目を開けていられなかった。
地面が吹き飛ぶ。
建物が崩壊する。
衝撃波が周囲へ広がる。
ドクは思わず目を閉じた。
誰もが思った。
ルクスは死んだと。
だが。
爆煙の中心で何かが回っていた。
小さな渦だった。
最初は小さい。
だが少しずつ大きくなる。
回る。
回る。
回る。
雷そのものが巻き込まれていた。
ルクスだった。
本人も何をしているのか分かっていない。
ただ必死だった。
死にたくなかった。
その一心だった。
だから能力を使った。
気付けば周囲の全てを回していた。
空気。
土。
瓦礫。
そして雷さえも。
完全には防げない。
身体はボロボロだった。
血も流れている。
それでも生きていた。
ゼルクロノスが初めて動きを止める。
興味ではない。
驚きだった。
人類が。
目の前の少年が。
自分の雷を受け止めた。
ルクスは膝をつく。
息が苦しい。
視界も霞む。
もう限界だった。
「無理だ……」
小さく呟く。
「もう無理だって……」
涙が出そうになる。
立てる気がしない。
戦える気もしない。
だがその時。
レグルスが前へ出た。
ルクスの前に立つ。
そしてゼルクロノスを見上げた。
「よくやった」
短い言葉だった。
ルクスは目を見開く。
レグルスは振り返らない。
ただ前を見たまま言う。
「あとは大人に任せろ」
その言葉を聞いた瞬間。
ルクスの身体から力が抜けた。
初めてだった。
この場所で。
少しだけ。
認められた気がした。
だが。
ゼルクロノスはまだ立っている。
戦いは終わっていなかった。
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