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第四章 安土城の再起

安土城の天守が夜明けの光を受けて輝き始めた頃、信忠の軍勢は城下に到着した。

疲労は極限に達していたが、兵たちの顔には安堵と希望が浮かんでいた。


「殿! 信忠様がご帰還だ!」


城下の町人たちが一斉に声を上げる。

その声は、まるで沈みかけた織田家の灯火が再び燃え上がるかのようだった。


信忠は馬を降り、安土城の石段をゆっくりと登った。

その姿は、父信長が天下を見渡したあの天守へ向かう、若き後継者の歩みだった。


城内は混乱していた。

本能寺の変の報が届き、家臣たちは動揺し、兵たちは不安に揺れていた。


「信長様が……まさか……」


「織田家はどうなるのだ……」


「光秀が京を掌握したという噂も……」


そのざわめきが、信忠の到着とともに静まり始めた。


「殿が……信忠様が戻られたぞ!」


「妙覚寺を突破されたのか……!」


「織田家はまだ終わっていない!」


兵たちの声が、城内に広がった。


信忠は大広間に入り、重臣たちを集めた。

柴田勝家、丹羽長秀、滝川一益、前田利家――

織田家を支えてきた名だたる武将たちが揃っていた。


勝家が立ち上がり、信忠を見つめた。


「信忠様……本能寺の変、そして妙覚寺の脱出。

 よくぞご無事で……!」


信忠は深く頷いた。


「父上は討たれた。

 だが、織田家はまだ死んでおらぬ。

 我らがここにいる限り、天下は織田のものだ」


その言葉は、重臣たちの胸に鋭く突き刺さった。


「光秀は父上を討ち、天下を奪おうとしている。

 だが、父上の天下は私が継ぐ。

 織田家の嫡男として、必ず光秀を討つ」


勝家は拳を握りしめた。


「信忠様……そのお言葉、まさに織田家の柱でございます!」


丹羽長秀も続いた。


「殿、安土にはまだ兵がおります。

 国友から鉄砲も届いております。

 光秀を討つ準備は整えられましょう!」


信忠は静かに頷いた。


「まずは兵を集める。

 近江、美濃、尾張の兵を安土へ集結させよ。

 街道を封鎖し、光秀の動きを探れ。

 堺と国友には鉄砲と火薬の増産を命じる」


その指示は、信長のように鋭く、しかし信忠らしい冷静さを帯びていた。


重臣たちが散っていく中、信忠は一人、安土城の天守へ向かった。

父が天下を見渡した場所。

信忠はその最上階に立ち、遠く京の方角を見つめた。


まだ煙が上がっている。

父が討たれた炎の名残が、薄く空に漂っていた。


信忠は拳を握りしめた。


「父上……私は逃げたのではありません。

 織田家を守るために退いたのです。

 必ず光秀を討ち、天下を取り戻します」


その言葉は、天守の静寂に吸い込まれた。

だが、信忠の胸には確かな炎が燃えていた。


安土城は再び動き始めた。

織田家の反撃が、ここから始まる。





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