第二十六章 日本海軍の誕生
長崎沖で南蛮艦隊を退けてから半年。
安土城の政庁には、これまで見たことのない巨大な図面が広げられていた。
それは――
日本式大型軍船の設計図だった。
柴田勝家が目を見開いた。
「殿……これは、南蛮のガレオン船にも劣らぬ巨大船にございますぞ」
丹羽長秀が図面を指でなぞる。
「殿……船体は南蛮式、甲板は日本式、
大砲の配置はオスマン式……
これは、世界の技術を合わせた“新しい船”にございます」
信忠は静かに頷いた。
「日本は世界と戦うための海軍を作る。
そのためには、世界の技術を取り入れねばならぬ」
■造船所の建設
信忠はすぐに命令を発した。
「堺・長崎・敦賀に巨大造船所を建てる」
「木材の供給路を整備する」
「鉄砲鍛冶に大砲の製造を命じる」
「海軍奉行を設置し、海軍を統括させる」
堺の豪商・今井宗久は驚愕した。
「殿……これは、海軍を国家事業として作るということ……!」
信忠は静かに言った。
「海を制すれば、世界を制せる。
日本は海洋国家となる」
■日本式軍船「安土丸」
数ヶ月後、堺の造船所で巨大な船が姿を現した。
船体は南蛮式の頑丈な構造。
甲板は日本式の広い作業スペース。
船首には巨大な大砲。
船尾には操舵室と見張り台。
帆は日本の絹で作られ、軽く強い。
その船は――
「安土丸」
と名付けられた。
柴田勝家が感嘆の声を漏らした。
「殿……これは、南蛮のガレオン船にも劣らぬ軍船にございます!」
丹羽長秀が続けた。
「いや……大砲の配置、帆の軽さ、船体の強度……
南蛮船を超えております」
信忠は静かに言った。
「これが、日本海軍の旗艦だ」
■海軍の編成
信忠は海軍奉行に命じた。
「安土丸を旗艦とし、十隻の軍船を編成せよ」
「鉄砲隊を乗せ、海戦に備えよ」
「航海士を育成し、世界の海を渡れる者を作れ」
堺の商人たちは興奮した。
「日本が海軍を持つとは……!」
「これで南蛮の脅しに屈せぬ!」
「日本は海を渡り、世界へ進む!」
長崎の町人たちも熱狂した。
「日本が海を守る!」
「南蛮の船に怯えずに済む!」
「信忠様は海の天下人だ!」
■南蛮世界の衝撃
ポルトガル
「日本が海軍を作った……!」
「しかも、我らのガレオン船を超えている……!」
スペイン
「日本が海を渡れば、アジアの覇権は日本のものになる……!」
宣教師
「信忠は危険だ。
このままでは、日本が世界を動かす側になる……!」
南蛮世界はついに理解した。
日本は海でも止められない。
■信忠の宣言
安土城の天守で、信忠は重臣たちに向かって言った。
「日本は海を渡る。
海軍を持ち、世界へ進む。
鉄砲を売り、絹を売り、銀貨を流し、
世界市場を日本の手に収める。
そして――海を制し、世界の覇権を争う」
勝家が深く頭を下げた。
「殿……これは、戦国のどの天下人も成し得なかった天下にございます」
長秀が続けた。
「殿は日本を守るだけでなく、
日本を世界へ押し出すお方にございます」
信忠は静かに言った。
「父上……私はあなたの夢を超えます。
日本を世界の中心へ進ませます。
これが、織田幕府の天下です」
琵琶湖の風が安土城を揺らし、
新しい時代の始まりを告げていた。
日本海軍の誕生――
それは、信忠が“世界の海”へ踏み出す決定的な一歩だった。




