↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/20

結末

「アネット! 遠くに離れろ!」


 俺はアネットを下がらせると逆に前に出る。


 突き立ててある両手剣を手に取って、突進。


 魔将は俺の何倍も早く距離を詰めて来て――


「早い……っ!?」


 少々危なかったが、想定していた迎撃ポイントに滑り込む。


「メエエェェイルウゥゥゥッ! ウオォォッ!?」


 魔将の体が途中で大きく前に傾ぐ。


 俺への敵意と殺意が先立ち過ぎて、進路上にある窪みに足を取られたのだ。


 先程セネリオ王子が、魔法で穿ってくれたものである。


 こうなれば魔将は勢いよく前に転ぶしかない。


 だが倒れ込みつつも、丁度左腕を叩きつけて届く位置に俺がいた。


 だとしたら、俺を殺したくて殺したくてたまらない奴はこう来る――


「ガアアアァァァァァァァッ!」


 左の腕が振り上げられる。それだけで風切り音が発する程だった。


 そこから振り下ろして、俺の脳天を叩き潰すつもりだ。


 俺の低ステータスでは、見てから反応する事などとても不可能。


 だが、俺はこうなる事を知っていた。


 怒らせて真っ直ぐ突進させる。途中に転ばせるための穴を仕込む。


 転びながらでもギリギリ手の届く位置に陣取る。


 右手を失った奴は、左手で攻撃してくるしかない。攻撃軌道は一択。


 見てからでは無く、見る前から弾き(ディフレクト)判定をそこにおいて置けば――


 ステータスは関係ない!


「弾けるっ!」


 ガイイイイィィィィィィィィンッ!


 弾き(ディフレクト)で弾かれた魔将の腕と体が大きく仰け反る。


「ヌウウゥゥゥゥゥゥッ!? 小賢シイ真似ヲ――ッ!」


 魔将は再び左腕に力を込めようとするが――


 肉が引き千切れる嫌な音を立てて、左腕が吹き飛んだ。


 それだけではなく、近衛騎士達から受けた全身の傷が大きく開き、大量に血を吹き出した。


「グギャアアアァァァァァァァァッ!?」


 俺のスキル『ディフレクトリバース』による反射ダメージだ。


 これは弾き(ディフレクト)した攻撃のダメージを相手に発生させるもの。


 そして反射するダメージ量や反射比率は、攻撃側の攻撃力と俺の防御力で決定される。


 つまり敵の攻撃力が高いほど、俺の防御力が低いほど、発生するダメージが大きくなる。


 防具を脱いで裸になったのは、ダメージを最大限にするためだ。


 裸かつ極限低ステータスの俺は、理論上『ディフレクトリバース』を最も上手く使いこなせる存在だと言っていいだろう。


 謎ビルドは謎ビルドなりに輝ける場所がある。特にメイルの場合は、だ。


「終わりだ、公爵!」


「クソオオオオオォォォォォォッ! ダガ、オ前モッ!」


 がしっ!


 切り離された筈の公爵の左手が、俺の脚を掴んで動きを封じる。


「道連レダアアアアァァァァァッ!」


 膨大な光と衝撃波を発し、魔将化した公爵の体が跡形も無く吹き飛んだ。


「「や、やったぞ!」」


「「だ、だが――」」 


「メイル! メイルは!?」


「あ、ああ……そんな」


 アネットは戦慄した表情で目の前の光景を見つめている。


「大丈夫だよ。心配するな」


 俺はそんなアネットの肩を後ろからぽんと叩く。


 背影殺(バックスタブ)。


 アネットの背後に回り込んで抜け出したのだ。


 相手の特性は把握しているのだから、当然対策チャートは練って実行に臨んでいる。


「メイル……」


 無事な俺の顔を見ると、アネットはぺたんとその場に座り込んでしまう。


 目が虚ろで、焦点も合っていないような感じは、今までと別人のようだ。


 だが、あんな体験をしたのなら仕方がない。


 精神的な傷を時間が解決してくれれば、と思う。


「メイル! よくやってくれました! やはりケルビンの目は間違っていませんでしたね!」


 セネリオ王子は顔を輝かせて俺を称賛してくれる。


「「助太刀に感謝するぞ、メイル殿!」」


「「おかげで我等も使命を果たすことが出来ました!」」


 近衛騎士の皆さんも、俺の肩を叩いて労ってくれる。


 ――これに関しては少々不味いかも知れない。


 俺はあくまで悪役貴族。


 あまり王子や近衛騎士達、VIPの覚えがめでたくなるのは良くない。


 名声ではなく悪名を世間に轟かせておくのが正史だ。


 だが今回は状況的に仕方がなかった。


 仕方がないと諦めて、これから悪名を稼いで行かないとな。


 ともあれこれで何とか事態は解決――とは行かなかった。


 もう一つ重大な問題が起きていた事を知ったのは、ファーム侯爵領に戻った時だった。


  ◆◇◆


「父上……っ!?」


 ファーム侯爵家の館に戻った俺達を待っていたのは、父ファーム侯爵の変わり果てた姿だった。


 自ら短剣で喉を突いた、凄惨な遺体だった。


「ホロウ公爵家より正式な婚約破棄の通知を受け取った後、侯爵様は一人にしてくれと仰られてお部屋に……その後私達が気づいた時には、側にこれを残して……」


 館の使用人が、俺に手紙を手渡してくれる。


 それは、遺書だった。


 ――我が子の不始末、一死を以て謝罪仕る


 ――ファーム侯爵家は絶えて然るべきですが


 ――どうか家臣、領民には寛大な措置を


 震えるような筆跡で、達筆の父にはあり得ないような文字である。


 それだけの精神的な動揺が伝わって来て、俺としても平静ではいられない。


「くそっ……!」


 握った拳を、思わず壁に叩きつけていた。


 間に合わなかった。いや、待って貰えるほどの信頼が無かったと言うべきか。


 俺が囚われ、正式に婚約破棄も通達され、セネリオ王子が裁きのためにやって来ると知り、父ファーム侯は決断してしまったのだ。


 将来主人公が俺を倒しに来る時、俺の社会的な立場はこのファーム侯爵領の領主だ。


 だから代替わりは、どこかで起こって然るべき。


 このゲーム、ディルフィング・サーガは確かにダークファンタジー要素も強い。


 割と正史シナリオも容赦ない。放っておけば世界崩壊の大量死エンドにもなる。


 とはいえ――こんな代替わりは望んでいない。


「メイル、何と申し上げて良いか――」


 セネリオ王子が俺を気遣って声を掛けてくれる。


 だが、本当に助けが必要なのは俺では無かった。

 

「うぁ……あ、あ、おじさま……」


 アネットは目を大きく見開いたまま、その場にぺたんと座り込んでしまう。


「あああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 身を斬り裂くようなアネットの慟哭が、館の中に響き渡った。


ここまで読んで下さりありがとうございます!


『面白かったor面白そう』

『応援してやろう』

『続きよろしく!』


などと思われた方は、ぜひ積極的にブックマークや下の評価欄(☆が並んでいる所)からの評価をお願い致します。


皆さんに少しずつ取って頂いた手間が、作者にとって、とても大きな励みになります!


ぜひよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。