【第八話】雨の日の午後と注意力
今日の王都は、雨が降っていた。
ざーざーざーと打ち付ける雨音は『転んだリスの紅茶亭』に響いていた。
今日『転んだリスの紅茶亭』はお休みだった。
ただでさえ、人が来なくて閑古鳥が鳴いてる店だ。
こんな雨じゃ、尚更人が来ない。
だからメリアは雨の日は『転んだリスの紅茶亭』は毎回閉めるようにしていた。
「ふぁぁー……」
転んだリスの紅茶亭の居住部分。
そこには二階があり、二階にメリアの自室が存在していた。
「……ねむ」
そう言うとメリアは、読んでいた本を机の上に置き、コーヒーカップに手を伸ばした。
メリアの自室、そこはまるで小さな書店のようだ。
壁を覆うように設置された本棚の中に、所狭しと無数の本が並んでおり、その本棚間にねじ込むようにしてベッドや机が設置されている。
「……あ、コーヒー飲み終わったんだった。テ……」
空になったコーヒーカップを目にしたメリアは、テディを呼ぼうとして止めた。
「あ、そうだ。今テディ洗濯してくれてるんだ……」
そう思いだしたメリアは「しょうがない」と、椅子から立ち上がり、コーヒーカップを持って一階のキッチンへ降りて行く。
「さてと……」
久しぶりにキッチンに立ったメリアは、やかんに汲んできていた井戸の水を入れ、火にかけた。
「よし」
炎であったまるやかんを置いておいて、メリアはコーヒー豆の入った袋から。ベンダー島産、オードリア領産の豆をそれぞれ半分づつ取り、黒い金属製のコーヒーミルへと入れる。
豆を入れ終わり、ふたを閉め……
「うわっ……びっくりした」
金属製の蓋のが思いっきり閉まり、メリアは少し驚いた。
「そう言えば、結構勢いよく行くんだった……さて」
メリアは、木製のハンドルを握り、奥から前へグルグルと回転させる。
ザーザーという雨の音が響く部屋の中。
ゴリゴリと、シャーと豆と金属が擦れる音が響く。
その音は一定のリズムで、眠たげだったメリアに更に眠気を誘う。
「……ふぁぁ。凄い、眠くな……すーすー」
◆◆◆
「……メリアお前何やってんだあああ!?」
ゴンっ‼
「ぎょえっ!?」
テディの叫びと共に、鈍い衝撃が頭に走り、メリアは目を開けた。
「いてて……ちょっと、何いきなり……」
「ん」
テディに文句言おうとしたメリアだったが、テディが差し出した焦げたやかんを見て「あ」と小さく呟いた。
「あ、じゃねえ!危うく火事になる所だったんだぞ!」
「いやー、やっちゃったねぇ」
「やっちゃったじゃ、ねえ……はあ、全く」
そう言うとテディはフライパンをメリアの鼻先に突きつけた。
「もうお前は、金輪際、絶対に、キッチンに立つな!」
「なんでっ……!?」
「何でもかんでもあるかあああああ!チェストおおお!」
「ぎゃああ!」
そう言ってまたフライパンを振りかぶるテディに、メリアはまたぶっ叩かれたのだった。




