【第六話】暇なお店と、納期前
【転んだリスの紅茶亭】は、今日もまた閑古鳥が鳴いていた。
「ふぁぁ……」
カウンターではいつも通りにメリアが欠伸をする、お昼時。
サッサッサと、テディが掃き掃除する音だけが響いていた。
「……んぅー」
メリアがそう背筋を伸ばしたら、ゴーンゴーンと12時を知らせる鐘が鳴った。
「ふへぇ……ん?ああ、もうお昼かー」
そういうと、グーっとメリアのおなかが鳴る。
「昼飯なら、朝作ったスープと、卵サンドがあるから、温めなおして食べな」
「は~……」
「って言いたいところだが、俺が温めなおしてくる。お前がやったら何が起こるか分からんからな」
「失礼な!温めなおすくらいボクでもできるよ!」
そう、ほほを膨らませるメリアをよそに、箒を置いたテディはポムポムとキッチンへと向かって……。
「あ、そうだハチミツは……」
「いらないよっ!」
「旨いのになぁ……」
そうぼやきながら、キッチンへと歩いていくテディ
それを見て「全く……」とつぶやいたメリアはカウンターに突っ伏した。
少しすると、店の奥から、食欲をくすぐる、ジャガイモ交じりの野菜スープのいい香りが漂ってきた。
「温め終わったぞー」
「はーい」
テディからそう言われたメリアはトテトテとダイニングへと向かう。
ダイニングには、ホカホカのスープと、たまごサンドが乗ったお皿が準備されている。
「あとは仕上げに、こいつを置けば……ほれ、おあがりよ!」
そう言ってテディがチャリンと音を立ててコーヒーを置く。
「いただきます~!」
もぐもぐと、食べ始めるメリアの前でテディはもう一食分を用意していた。
メリアの物とは違い、ハチミツがたっぷり塗ってある卵サンドと、ハチミツがたっぷり入ってドロッとしたスープに、飲み物としてハチミツがついている。
「それじゃ、俺もいただき……」
「ねえテディ?」
ふと気になったことがあったメリアはそう声をかけた。
「なんだ?」
「ボクいつも思うことあるんだけどさ。何で君ってご飯食べる必要あるんだろうね」
「知らん。ってかお前が俺を作ったんだから、分からないのはおかしいだろ」
「謎だよなぁ……」
そう言ってメリアはうーんと腕を組んで唸る。
メリアが作る人形には生命が宿る。
正確には、通常のゴーレム技術の延長である、感情を再現した自我が宿るゴーレム……のような技術であり、別の世界で言うところのAI技術のような物と言えばいいのだろうか。
そのため、メリアの人形は意志を持って動くが、食や睡眠と言ったものが必要ない。
無論、それを再現することもできるはできるのだが……テディだけは違った。
腹が減るし、睡眠もとる。
痛みも感じるし、人間のように喋る。
不満も言えば、嫌味も行って、喧嘩もして……
他の人形はそんなことないのに、謎である。
「……あんときは、どうやって作ったっけ?眠くてボーっとしながら、だったからあやふやなんだよ。確か次の日に遠い国から取り寄せたお米と、赤い糸と、あ、あとなんか深爪になってたんだよな……」
ぶつぶつ呟きながら考え事するメリアの前で、テディはガツガツと食事を続けていた。
スープをあっという間にたまごサンドを平らげ、スープを飲み欲し、コップに入ったハチミツを一息で腹に流し込んだテディは「そういえば」とつぶやき続けるメリアに疑問を投げた。
「そういやお前。グラッチェ商会に卸す分の人形で来てるのか?」
「あ、でもそれだ……ん?え?なんて?」
「だから、商会に頼まれてた輸出品の人形。準備できたのかって聞いてんだよ」
「グラッチェ商会……?」
そう言ってチラッとカレンダーを確認したメリアから、スーッと汗が噴き出した。
「あれぇ?おかしいナー。なんか明日納品って見えるんだけど……夢だよね。ハハッ」
「夢じゃないぞ。現実見ろ」
「……やっばい!??」
そういうとどたどたとメリアは、食事を掻っ込むと作業場へと駆け込んでいくのだった。




