【第十一話・前編】買い出しと、買い食いと
メリアの母、ノルティが家に来る。
とはいっても、それは一週間後。
それまでは相も変わらない日常をメリアは過ごしていた。
「おーい、メリア―」
カウンターでぐでーっとうたた寝していたメリアに、テディが声をかける。
「なんだい?テディえもん?」
「テディえもんって誰だよ。いや、な倉庫整理してたら、赤い布がもう無くってよ」
「あれ?もうなかったっけ?」
「っぽいな」
そう言われメリアは「あれぇ?」と素っ頓狂な声を上げた。
「おかしいなぁ、最近使っ……たねそういえば」
そう言って、この前グラッチェ商会に納品した人形を思い出した。
熊、兎、いろいろあったが、一番多かったのは、赤いドラゴンの人形だった。
「確か、ドラゴン系の人形の依頼が多かったから……それだねぇ」
「ああ、そういやそう……何であれ赤色で作ったんだ?ドラゴンつったら、緑が多いだろ」
「へ?うーん、赤いドラゴンってかっこよくない?」
「いや、俺にはよくわからないが……まあ、なんだ」
そう言ってテディはやれやれと、
「つまりお前の趣味か」
「まあ、端的に言えばそう言う事だね」
テディの言葉に、メリアは笑顔でうなずいた。
「……ま、とりあえず。一旦赤い布は補充しなきゃいけないね」
そう言って、メリアは椅子から立ち上がった。
◆◆◆
メリアは、南西区画の商業地区に来ていた。
南西地区は、相も変わらず、お祭りのような騒ぎようだ。
「静けさとは全く無縁だねぇ……」
何ていいつつ、メリアはなじみの店へと人の波をスイスイ移動し進んでいく。
「お、メリアじゃねえか。珍しい魚入ったんだが、買ってかねえか!」
進んでいたメリアは、途中馴染みの魚屋に声をかけられ、立ち止まった。
「え、どれ?」
「ほら見ろよ、ホーオツ海で取れた、新鮮なエビガニエクスだ!」
そう言って魚屋が見せてきたのは、海老なのか、蟹なのか……
「少なくとも魚じゃなさそうなんだけど?」
「何言ってんだ、どう見たって魚……ありゃ?確かによく見たら魚じゃねえな」
そう言って魚屋は「がッはッは」と笑った。
「まあ、とりあえず。今日は別に用事があるからさ、また帰りに寄るよ。最近熱いし、すぐ腐っちゃいそうだしさ」
「そうかぁ?なら、是非その時寄ってくれ」
「うん、それじゃ」
そう言ってメリアは、魚屋と笑顔で別れ歩いていく。
それから2時間後……
「ふへぇ、ようやくついたぁ」
ようやく目的の店へとだとりついたメリアの手には、ソフトクリームと、サンドイッチ。よくわからない雑貨が色々握られていた。
「まったく、ここに来るといつもそうだ。はむっ……あ、美味し……みんないい人なんだけど、ちょっとめんどくさいよねぇ。つい買っちゃうし。もぐもぐ……」
ここに来るのは直線で30分もかからないが、色々な店に呼び止められ、時間をだいぶ使ってしまっていた。
「ま、とりあえず目的のお店についたし、さっさと用事済ませて……っと、いけないいけない」
確かこの店は飲食持ち込み禁止だから、さっさと食べないと。
メリアはそう思い出し、手に持った食べ物を胃の中におさめ始めたのだった。
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