【第十一話・後編】幼馴染とおすすめされたから
南西商業地区。その一角にある店『おしゃれなバーボン』。
そこは、世界各地から服と布地を取りそろえる店だった。
店の大きさはざっと『転んだリスの紅茶亭』の十倍はある。
その上二階まである物だから、その規模は察せる通りだろう。
メリアは店の階段を上がり、二階へと行く。
目的の物が売っているのはこの店の二階だからだ。
『おしゃれなバーボン』の一階はファッション。
二階はその裁縫や仕立てに使う、素材売り場になっているのだ。
「えっと、赤い布……いつも通りの長さ買うとして……。あ、そう言えばピンクと紫も少なくなってきてたよね、あと、青と……」
そう言ってあーだこーだ言いつついろいろ買いこみ……
「ふぅ……」
メリアは店の前で両手いっぱいに抱えて朗らかな笑顔になり……
「買いすぎたっ」
そう言ってどさっと買った物を落としてしまう。
「あばば、やっば。えっと……」
そう言って拾おうと手を伸ばした途端、別の物がドサリと落ちる。
「えっと、これえっと……」
一旦荷物を置いて持ち直そうとするが、なんかいまいち上手くいかない。
「……これ、帰れるか。これ持って」
そう言ってチラリと、遠くを見る。
変わらない人込みに、メリアは「うへぇ……」と苦い顔をした。
「……おや、誰かと思えばメリアさんじゃないですか」
と、声をかけてくるのが一人いた。
「んえ?あ、レオリオ!」
声をかけてきたのは、見覚えのある鎧を着た二足歩行のスラっとしたトカゲの魔族。レオリオだった。
「こんなところで一体……と、聞かなくともわかりますね。見れば」
「え?ああ、ちょっと素材の買い出しにねっ」
「ですよね、で買いすぎて困ってる、みたいな感じですかね?」
「そうそう!あっ」
そう言ってまた、どさりと荷物が落ちた。
「手伝いますよ」
レオリオは少し肩をすくめた後、落ちた物を拾い上げた。
「え、いいの?」
「ええ、暇していましたし。丁度いいです。もう少し持ちましょう」
そう言うと、レオリオは殆どの荷物をひょいっと持った。
「うわぁ、助かる~」
「はは、これくらいお安い御用です……で、このまま帰りですか?」
「え?いや」
「やっぱりそうですか。ま、時間はありますし少し付き合いますよ」
そう言うと二人は揃って歩き出す。
「メリアさんの事ですから、またあれなんじゃないですか?途中で呼び止められたお店であとで買いに来るって言って来たんじゃないですか?」
「正解」
「でしょうね。全く、少しは断ることも必要だと思いますけど」
「だって、おすすめされたから」
そう言うメリアにレオリオはクスリと笑った。
「全く、商人さんはあなた相手だと商売しやすいでしょうね」
「ああ、よく言われる」
「言われてるんですか」
そんな会話をしながら二人はメリアに声をかけた店を順々に回って、いろいろ買っていく。
中には、魚屋のエビカニエクスもだ。
「何ですそれ」
「なんか珍しい魚らしいよ?」
「どう見ても魚じゃなくないですか?」
「あ、そうだった」
さっきより手元をいっぱいにし二人は『転んだリスの紅茶亭』へ戻った。
「いやー助かったよレオリオ」
「いえいえ……それにしても、私が声をかけなかったら貴方どうやってこの量の荷物持って帰ったんですか?」
「え、それは……うーん、どうやってだろうね?」
「少しは考えて物を買うべきだと思いますよ」
そう言って店のカウンターへ二人は荷物を置いた。
「お、帰ったか……まーたいろいろ買ったな」
「いやーいっぱいおすすめされちゃって」
「それなら仕方ないか」
「そこは止めなさいよ」
納得したテディにレオリオはツッコミを入れた。
「ってか、レオリオじゃねえか。久々……荷物運び手伝ってくれた感じか。ありがとうな」
「いえいえ、暇だったから手伝えただけなので、例を言われることでもありませんよ」
「暇か……お前、兵士だろ?暇でいいのかよ」
そう言ってテディが言う通り、レオリオは実はこの国の兵士の一人だった。
メリアと出会った時も、実は巡回の途中であった。
「兵士は暇な方が良いですよ」
「それもそうか」
「……テディ―!片付け手伝って~!」
「はいはい、今行きますよ~」
そう言ってぽむぽむ足音を立て歩いていくテディをレオリオは笑顔で見送ったのだった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
面白かった、続きが気になると思っていただけたら、ブックマークや評価をしていただけると嬉しいです!
コメントも気軽にいただけると励みになります!
応援をいただけると、更新速度が上がる……かもしれません!
今後ともよろしくお願いします!




