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純愛という名の××  作者: 愚者


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9/10

玖話 コノカンジョウノナハ

 鈴音を壁に追いやった政宗は、低い声色で言葉を発す。それは、威圧的で明るいものだった。


「なぁ、鈴音ェ。オマエさぁ、清明とヤったろ?」

「え?何のこと...」

「ハハ、見ればわかる」

「...」

「そう怖い顔するなって」

「こんなところに連れ込んでそんなこと言って、何がしたいの?」

「いやぁ、俺ともヤらせろ」

「...嫌だ」

「いいじゃねぇか、清明とはヤったんだろ?」

「それは、清明くんが好きだから」

「あぁ、知ってるさ」

「...え」

「好きな奴のことは目で追ってしまうだろ?そして、外野から見ている分よくわかるんだよ」

「じゃあさ、なおのことやめてよ」

「だからこそ止められねぇんだよ‼このままだとオマエはあいつのモノになってしまう!それはだめだ」

「...そんなの、無いよ」

「あぁ、最低なのはわかってる。けど、オマエと同じ方法だよ」


 政宗は鈴音のリボンを乱暴にほどき、ボタンを引きちぎるように外していく。


「ねぇ、止めて。やめてよ、止めて、お願い、止めて、それは清明くんのモノ、やめて、けがさいないで、お願い、やめて、止めて、辞めて、病めて、やだ、いやだ、嫌だ、お願い!!助けてぇ!清明くん‼」


 それは拒否と救いを求める声だった。

 この声を、これから起こることを無視すれば、俺の俺たちのこの歪んだ関係は終わるはずだ。

 でも、仕方がないじゃないか。体が勝手に動いてしまったんだから。

 壁の影から飛び出して、政宗を殴り飛ばす。


「離れろ、クズ野郎」


 鈴音を見ると、驚きで目を丸くしていた。ワイシャツは半分以上ほどけていて、見えてはいけないものが露出していた。

 それを政宗に見せる気がわかず、なんとなくブレザーをかぶせた。

 すると、ハッと恥ずかしさと驚きを顔に表し、嬉しそうにブレザーを握りしめる。

 俺は再び、政宗へと視線を向ける。


「おいおいおいおい、テメェが俺に勝てると思ってんのかァ!?清明ィィィィ!!」


 怒りを混ぜた咆哮。それはこの一瞬だけの憤怒ではなかった。

 積もり積もった怒りが一気にあふれ出したかのような爆発だった。


「どんな手を使ってでも殺す」


 自然とその言葉が口からこぼれていた。意外と俺も怒りを抱いていたようだ。

 確かにそんな感じの感情がある。

 目の前にいる奴を殴らなければ気が済まない。殴りたい。これ以上声を聞きたくない。黙らせたい。

 チャイムの音が鳴り響くのと同時に、俺たちは互いに駆け合い始める。

 互いの拳はすれ違い、お互いの頬を強く殴りつける。

 その勢いで口の中を切ったのだろう、口から血がターと垂れる。

 でも、不思議と痛みはない。ただ、怒りしかない。

 向こうとて同じだろう。

 ハハ、俺たちは親友だったのにどこを間違えたんだろうな。

 再び、拳が飛んで来る。俺は重心を後ろにそらし、バネの原理で向かってくる拳に頭突きを当てる。

 頭から少しだけ痛みがあり、血は出てはいないが腫れるか痣になるかするだろう。

 このクズ野郎だけは許せない。どんな痛かろうと、止めない。止まらない。


「ってぇな」


 政宗の拳には血が滴っていた。それでも、彼は向かってくる。


「俺はなぁ、オマエが嫌いなんだよ!!毎回毎回、良いところはお前が持っていく。鈴音も香苗も二人とも...」

「あぁ?何のことだ?お前の方が人気もあってかっこいいこともしてた。そして、モテてただろうがよ!!」

「かもなぁ、でも本当に欲しいもんは全部オマエが持っていきやがった」


 そう言いながら、大ぶりな蹴りを放つ。

 そのけりが俺の腹に直撃し、喉の方まで焼けるような液体がこみあげてくるように感じた。

 そして、腹に来る痛みに屈みそうになるのだが、堪え次の手を放とうと拳を振るうのだが、何かに手首をつかまれて止められる。


「止めろぉう!!」


 見ると、進路指導部の軍 恭兵がいた。

 それを良い気だと言わんばかりに政宗が俺に殴り掛かる。だがそれも、扉から来た先生によって止められる。

 生徒指導部の御李澤 羅漢 。通称、ゴリラ。

 この二人に見つかったということは、結構な大問題になるんだろうな。でも、そんなことはどうでもいいから奴を...!

 もうひとり来た保健室の先生の憲寺院 法子は、鈴音の方に駆け寄ると寄り添うように話しかけていた。

 俺らは乱暴に進路指導室へと連れていかれた。

 俺たちは二つの部屋に分けられ、取り調べとも思える先生との話し合いが始まった。


「なぁ、お前らなんで喧嘩してたんだ」


 軍先生は、威圧感はあるものの優し気に言葉をかけてくる。


「...言いたくありません」

「ハァ、聞ぃてるで。お前の痴情のもつれについてなぁ」

「誰から聞いたんです?」

「クラスの奴らァ、さわいどったで」

「そうですか...」

「原因はその辺だろぉう?この変人が多い学校でも、また様変わりした例だなぁ」


 そういえば、俺は何であいつに怒ったんだろう?

 あいつが人の道を誤ろうとしたから?いや、違う。

 鈴音が犯されそうになったから?いや、少し違う。

 あぁ、そうか。そういうことか。俺のモノに手を出されたことへの怒りからか。怒りからこう思ったのだろう。

 ハハ、散々クズ野郎とか言ったが、一番のクズは俺だったのか。

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