拾話 ボセイ
生徒指導という名の取り調べの結果、俺は二週間の停学処分となった。
鈴音は、一週間ほどカウンセラーに行くことになったらしい。
政宗に暴力的に犯されそうになったため、心のケアが必要と思われたらしい。
それと、俺たちの関係が学校中に広まっているらしい。もちろん立派な尾ひれもしっかりついている。
もう、それは拭えないだろう。拭おうならば、更に強固なものになっていくだろう。
これからの事を考えるのに、この二週間の停学期間は良い時間だろう。
けれどもこの一週間、一人の香苗が心配だな。けれども、俺にどうすることもできない。なんともないことを望もう。
あえて触れなかったが、やはり触れなければならないだろう。
あのクズを。あの親友を。あの怒りを。あの...。あの政宗という男についてを。
あいつは、鈴音を暴力的に侵そうとした点、それを止めようとした俺を殴った点、調べればそれ以外にも色々出てきた。
まさか、クラスに好かれる人気者のあいつに、そんな裏があるだなんて知らなかった。いや、もしかしたら知っていたのかもしれないけど、知らないふりをしていただけかもしれない。
まぁ、そう言うことが全部明るみに出てあいつは退学処分となり、少年鑑別所に贈られることになった。
彼という悪がいなくなったからといってすべてが解決するわけじゃない。今回のこの事件はポンと沸いてきたモノだ。
この件が解決したからといって、俺たちの関係が改善されたわけじゃない。
終わらせるには、この関係をどうにかする必要がある。改善させるにも壊すにも切るにも、何かをする必要がある。
俺が何かをする必要がある。物事を変えれる者は常に行動をする者だけだ。
だから俺も行動をする必要がある。
それがもたらすモノが悲劇であっても喜劇であってもだ。
だが、一つだけ分かるのはハッピーエンドにだけはならない。
なって歪んだ気持ちの悪いエンド、歪んだエンド、誰もの心に拭ない何かを残すエンド、バッドエンド。
あいにく、今回の一件で俺の行く所がちょうどすべてを変える場所そのものだ。
それぞれの親と担任との話し合いで、俺たちの関係が広まったため学校を変えた方がいいだろうと。
今の学校には、俺たちの噂が根がはり始めた。それはどんどん広まっていって大きくなっていた。
このままこの学校に居れば格好の的だ。
この噂はSNS等を通じて他校にまで根を伸ばしていくだろうが、この学校にいるよりかは幾分かマシだろう。
だから、学校を移る。
彼女らと距離をとれば、関係も徐々に徐々に薄れていくだろう。
それが解決になるわけはない。こんなもので解決するはずがない。
けれども他にどうしていいかわからない。だから、進むしかないんだ。
たとえ結末が、悲劇になっても喜劇になってもだ。
だが唯一分かるのはハッピーエンドなんてものにはならないというのは分かる。
あって後味の悪い最悪のエンド。誰かの心に癒えない何かを残すエンド。バッドエンド。
誰もが幸せになるはずがない。誰かしらの心の奥底に重いモノを残すだろう。
実際、今もずっと俺らは苦しんでいる。苦しんで苦しんで、もがき続けている。
きっと、自然にこの傷が癒えることはない。心の中の痣としてずっとあり続けるだろう。時がたてば何事もなかったように生活が送れるだろうが、時に痛む。
俺がどちらかを選べばどちらかは深く深く傷ついてしまう。だから、この選択が一番正しいのだと俺は信じよう。
信じなければやっていけない。
この停学週間が終わったら彼女らと話そう。三人だけで。
—そして、一週間の月日が経った。
一週間ぶりの久しぶりの学校だ。噂の事もあってか、ドキドキと胸を鳴らしていた。もちろん不安と恐怖でだ。
教室に足を踏み入れると、暗い顔をして俯いている香苗と鈴音が離れた場所に座っていた。
クラスの奴らは二人の周囲だけ空間を開けていた。奴らは二人を見てコソコソと何かを話しては嘲笑っていた。
とても、イラつく。
だがその中、俺が呼び出しに行くのも良くならないだろうと思い、LIMEで屋上に来るように呼び出す。
送ると、ピコンという音が二重で教室に響き、二人はスマホを取り出す。
スマホの画面を見るとガタンと音を立てて立ち上がり、教室の外へと駆け出て行く。
教室の前にいる俺には気が付かないようだ。
俺も後を追うように速足で歩いて行った。
屋上への階段に行くと、二人は扉の前で待っていた。
鍵を見ると、別のものに変わっている。どうにも今回の件を受けて学校は鍵を新調したらしい。
俺は階段を上がり彼女らの前に立つ。
二人はなんていうべきか迷っているようだった。
その重い静寂の中、俺は喉を震わせる。
「俺、葦陰高校に転校することにした」
すると彼女らは驚きの音を奏でて、表情を変える。
そこで最初に声を発したのは鈴音の方だった。
「なんで...」
それは悲しく重々しい震える声だった。今にも泣きそうだ。
それを聞くとどうも悲しく思える。自分の選択が正しいと自分に言い聞かせながら答えを返す。
「俺らはこの学校じゃあ格好の的だ。だから...」
「それだけじゃないでしょう?」
女の勘というモノだろう。とても鋭く的を得ていた。
「うん。二人との関係を断ち切ろうと思って」
「なんで?ねぇ、なんで?私のことが嫌いになったの?ねぇ?ねぇ?答えてよ、ねぇ」
前々から思っていたが、鈴音は少し病み気味な感じだ。
「この歪んだ関係を平等に終わらすにはこれが一番いい...」
「良くないよ、なにも良くない‼そんなのは解決じゃない!草芋に蓋をするのと一緒だよ!!」
「なら、どうすればいいっていうんだ⁉」
香苗の怒りに当てられたのか俺の口調も強いモノへとなっていた。ダメだ、ダメだと思いつつも止まらない。
「これが一番自然な解決法なんだよ!俺たちの関係は歪んでる。その歪みはこうもしないと取り除けないんだよ!!」
「ほかにないの?皆で一緒に...」
「そんな方法はない!!みんなが幸せなハッピーエンドなんて俺らに在ってはいけないんだ!!」
あぁ、そうか。俺はこの関係をただ己の心のために終わらせたいんだ。終わらせて、楽になりたいんだ。
そうだよな。全部忘れて新しい生活を送るのが一番楽だよな。
二人は苦しんででも希望へと進もうとしてる。それに比べて俺は...
「ねぇ、新しい環境で私たちやり直さない?三人で」
そう提案したのは鈴音だった。つらそうな顔で、でも希望を目に宿していた。
「無理だ。俺は、お前らとの関係を終わらせたいんだ!終わらせて楽になりたいんだよ!!」
「そんな、酷い...」
鈴音は目に涙を浮かべて階段を駆け下りて行った。
「そうなんだね、それが君の思い描いた結末なんだね...」
香苗は、辛そうに悲しそうに呆れたように清々したように言葉を漏らす。
「...弱い人」
それだけ残して、階段を下りて行った。
香苗の後姿を映すレンズは少しずつ濡れて、視界をぼやけさしていく。
「...しょうがないんだ。もう俺には無理なんだよ!...そうして皆、俺を置いていくんだろ!!おいていかないでよ!...俺だけが弱いみたいじゃないか!俺は間違ってないって笑顔で答えてくれよ!優しく包み込んでよ!!なんだよ、二人とも!俺を..............」
俺の言葉に誰も何も返さない。そこにあるのは静かな静寂だけ。
静かにただ刻々と時間は過ぎ去り、予鈴の音も無視して後悔とともに泣いた。
涙を流すことで一緒に大切な何かが流れ落ちると願いながら。
泣いて、啼いて、哭いて、亡いて、鳴いた。
―完―
―終演 アトガキ―
どうもお読みになっている読者の皆々様方。
えぇ、これは終演。後書きにございます。
紳士淑女の皆様、最後までご一読誠にありがとうございます。心からの盛大で壮大な感謝の意をお送りいたします。
どうでもいい語りは良いから本題に入れって?
えぇえぇ、分かりますとも。物語を最後まで読んだと思えば、こんなふざけた作者の語りを読まされる皆様のお気持ちは、よぉくご理解いたします。
ですのでどうか、物を投げるのはおやめください。
終演だからと言って、ホールの上で語るように綴るなですって?嫌だなぁ、そこまでわかっているなら語らせてくださいよ。この道化の与太話を。
まず始めに何から語ることにいたしましょうか?まぁ、わざわざ終演と名付けて後書きを書く理由ですかね。
それは至極真っ当、『愛』故です。
作品への『愛』ですよ。たとえ、試験的に書いた物語であったとしても、この愚者の一部であることに変わりはございません。
『愛』が何だって?真実を語ってないって?言ったでしょう、与太話と。
ゆっくりと語りましょう。ゆっくりとゆっくりと、ただ書き綴りたいように殴り書きましょう。
まぁ、そんな長くするのもよろしくない無いので、簡潔に申し上げますと「完の後にこんな長ったらしいのが、同じ面に続いては美しくなかったから」と言いましょうか。
まぁ、そんな単純な理由ですよ。
短くすればいいじゃないかって?それじゃあ、伝えたいことが伝えきれないじゃあないですか。
私は語るのが好きなのです。
なので、語りましょう。どんどんゆっくりと語りましょう。
この物語の趣旨について語りましょう。
それはただの私の趣味そのもの。
歪んみ狂った愛、誰もが読むだけで気持ちの悪くなる物語、誰もかれもが幸せにならないラブコメ。
それが私の書きたかったモノにございます。
嫉妬や狂愛、歪んだ愛というのはとても美しい。まるでその感情そのものが、不完全な人間の愛と言わんばかりでしょう?美しいでしょう?愛おしいでしょう?
まぁ、これは単なる私の趣味。共感を得ようとは思っていませんよ。共感を得れるとは思っていませんよ。
まぁ、あとがきで書きすぎるのもあれなんで次が最後にいたしましょう。
この物語の結末は、如何様にして別れるのを自然にするか、主人公をクズくするか、気持ち悪さをのこすか、釈然としないようするか、最後にもやを残すかという点に重きを置きました。
それでもちゃんと香苗や清明の最後の言葉には意味を持たせております。もちろんタイトルにも。
香苗の「...弱い人」は、彼への恋が覚めてしまったことを表しています。ですが、愛情は完全にはぬぐえてはおりません。
最終話のタイトルは「ボセイ」。そう、彼女が恋の後に芽生えてしまった彼への感情は、弱く情けない子供を守ろうとする母性。
実際、最後の主人公の物言いはとても惨めで幼稚な弱い子供らしいでしょう?
それに比べて鈴音は泣いて走っただけで、彼への恋は冷めていません。というかこの結末は、彼女の中の計算の内だったのかもしれません。
清明が二人との関係を終わらせる。すると、清明と香苗の関係も終わり、一人になった上に噂によってクソ野郎のレッテルを貼られた清明の心は壊れていく。
その壊れた心なら呑みこむことも容易でしょう。
全ては自分のモノにするための彼女のシナリオであり演技であったのかもしれませんね。
まぁ正直、鈴音も清明も最低な部類にはいるのでお似合いの二人ではあるでしょうな。
あぁ、まだ未回収のモノがありました。失敬失敬、重ね重ね申し訳ない。
この物語のタイトル「純愛という名の××」の××に入る言葉を伝えてはいませんでしたね。
ここに入る言葉は正直なんでもいいんですよ。
狂愛、母性、浮気、不貞、狂気、感情。
それら全てをひっくるめて××と名付けました。
名状しがたい何かXの感情や感性、性質、行動、思考が××
まぁこれで本当にお話は終わりです。
それではまた、お会いしましょう。
最後にまた会うための言葉を。
―さようなら




