さらばブラック企業
次の日、俺は朝早くの始発で会社に向かう準備をしていた。いつもならまた憂鬱な一日の始まりだと思うが今日は退職届を出して何がなんでもおさらばする予定なので思ったよりも足取りが軽い。
昨日の夜みんなで牛丼を食べながら今日の事を話しあった。今日一日は終電で帰ってくるのか定時で辞めて帰宅できるかわからないからあらかじめパンやカップ麺を渡し、好きにしていいと伝えてある。セバスには簡単にだがスマホの使い方も教え、何かあれば連絡をくれることになっている。
「よし、行くか。今日で絶対辞める、絶対だ。明日は冷蔵庫を受け取るんだ…!」
俺は気持ちを強く決意して出社した。
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「セバスー!」
「お帰りなさいませご主人様」
「お、お帰りなさいませ!」
「セバスもアルトもただいま!退職届も出して定時で仕事を辞めてきたよ!課長じゃ話にならないからいつかのために録音してた課長のパワハラを一番偉い社長に聞かせたらすぐに退職が受理されたよ!」
「それはようございました」
「ほんとによかった!社長から口止め料込みで退職金も加算されるみたいだし、この箱庭で当分稼げなくても数年は生きていける!」
本当にこの3年間で少しずつパワハラの証拠集めといてよかった。出社退社を記録したのも写真に撮ってあるがそれだけだと不安だったからな。
「夜ご飯まだだよな!?退社記念でいい肉買ってきたんだ、みんなでステーキにして食べよう。米はレンジでチンだけどな」
ちょっとオシャレな食卓テーブルを買ってきたんだがさすがに伯爵邸には合わないな。
本来なら長テーブルみたいなので端と端に座ったりするんだろうが、俺たちは広い部屋に食卓テーブルを設置して三人で囲んで食べるスタイルだ。普通の一軒家ならこれで良かったのに、屋敷になるとこういう弊害が…
「そういえば今日一日なにしてたの?」
「あのスマホの中にあるYouTubeというのは大変便利でございますね」
「あのね!YouTubeでマナーのお勉強をしたり、計算の仕方を覚えたりしたの!」
「昨日買われた種や苗木なども植え終わり、水やりも完了しています」
待って、セバスもアルトも優秀すぎて俺泣きそう。頑張ってる子供とか見ると涙腺ガバガバになるなんてもう歳なのかな。
「二人とも疲れたりしたら無理しないで休んだり仮眠取ったりしていいんだからな、他に俺しかいないんだし」
「この程度では働いたうちにも入らないので大丈夫でございますよ」
え、異世界ってそんなシビアなの?もっとお給料アップしてあげなきゃ。
「っ!そういえばお給料の話してなかった!セバス、お給料とかってどのぐらいが普通なのかな?」
「そうですね、この街がある程度発展して貨幣の必要が出てくるまでは物の売買などは物々交換などでいいでしょう。そして給料もですが、今我々が貰っても使い道も大してございませんので必要なものを現物支給とかでよろしいかと」
「助かるよ、本当に。一から街を作ってお金を流通させるって大変なんだね……」
「あの、僕は計算したりするのに紙とペンがほしいのですがいいですか?」
「ああ、たくさん用意しよう」
「ありがとうございますご主人様!」
100均でノートもペンも十分揃うし、使い捨て出来るようなコピー用紙なども用意しておこう。
それとアイちゃん、箱庭に入る際の扉をこの屋敷の扉とリンクさせることはできる?毎回外から屋敷に来るのちょっとだけ面倒なんだけど。
『はい、念じるだけで可能です』
そうなの?俺が毎回最初の平原の場所をイメージしてたからそこに扉が現れただけなのね。
「セバス、次からは箱庭に来る際玄関の扉から直接来るよ。だから明日の冷蔵庫を運ぶ時は玄関開けたら俺の部屋に繋がるようにする」
「かしこまりました」
やっぱり次やることといえば住む人が増えてもいいように家の確保か。今余ってるのは平屋の一軒家だけだしな。
この伯爵邸……いや領主邸の前は通路にしてそれを挟むように住宅や店などを設置していって、もし増えてきて変更したい場合は設置場所を変えられるし。
後は、昨日は家具などを買いに行けたが毎回はいけないので通販である程度注文しておこう。ベッドやテーブル、日用品なんかも業務用でまとめ買いだ。アルトが欲しがっていた紙やペンなんかも通販で頼んでおこう。
「よし、今日のログイン分合わせて2300ポイントもあるし建築ガチャを回して家を増やそう!」
「それがよいかと思います」
「爆死するんですね!」
……言うようになったじゃないかアルト。




