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「外道」スキルって何? 可愛い彼女とキャッキャ、ウフフしたいだけなのに、世界征服するんですよねと言われて困惑してます  作者: ちくわ天。


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第18話 ダーク、ポッカーン

 ゲトリの隣にいた若者が思い出したというように俺を指差した。おいおいマナー違反だぜ?


「あ、あの黒服! 昨日、俺の村で人間の首刈りをしようとした奴だ! 確か「断末魔の首飾り」を作ろうとして……。無理矢理、あのサテンカーリ族の女の子に止められてたぞ!!!」


 店内に大声が響き渡る。


 まごう事なきデマじゃねえか。95%の情報が間違ってるぞ! それなのに店員たちがみんなビビッてる! そんなことを話し出すと……ほらあ、こいつが乗っかっちゃったじゃん。


「愚民、よく覚えてたわね! ペンダントではなく本物の首を飾る「首飾り」。その真意を初めて知った日は、私でさえ恐ろしくて朝食にパンを5本しか食べられなかったものよ!!」


 ……それだけ食べれば十分だ。しかもノリノリだよう。ゲトリを蹴り倒して、ふふんと鼻を鳴らしてる。


「ゲトリとやら、私の美しさに気付いたのは褒めてあげる。でも「暗黒の支配者」であるダークさまを傷つけようとした罪は、雲より高く、海より深いのです。今すぐ懺悔して、ダークさまに許しを請うのです」


 右足を相手の腹に乗せ、すごんでいるローナの、まごう事なき「輩」感、半端ねえ!! 憎々しげにローナを見ていたゲトリはガクリと首を垂れる。


 ん? 


 気になった俺はローナを自分の方に引き寄せる。その瞬間、ローナのいた空間をシミター(三日月刀)が切り裂いていた。


「ご、ご主人さま。ありがとうございます」


 いつの間にかゲトリの奴、刀を抜いてやがる。危ねえ! それなのに俺の肩に頭をつけてるローナは正直、邪魔! ゲトリはやる気満々だぞ!


「ローナ! 隣の金貨、もってこい!!」

「は、はい!」


 ローナの頭をぐいっと押し出し、金貨の詰まれたテーブルへと向ける。時間との勝負だな、こりゃ。金貨を俺の前に置いていくローナを見たゲトリは、大声で怒鳴っていた!


「市長ごと、やっちまえ!!」


 シミターを構え直したゲトリとナイフを持った店員たちが、じりじりと迫ってくる。


「ゲ、ゲトリ! お前、今まで贔屓してやったことを忘れたのか?」


 市長が悲痛な声を上げる。


「忘れてませんぜ、市長さま。この街になかった娼館を構えることができたのは、あんたのおかげでさあ。でも、お礼として金も女も十分に貢いだろう。選挙でも、たくさんばらまいたしな」


 こいつら、腐ってやがる。


「秘密を知られたからには、ここにいる奴は皆殺しだ! おい、お前ら、出てこい!」


 隣の部屋からガラの悪い用心棒が10名ほど、ショートソードを抜いて入ってくる。


「お前ら、いつも通り死体は川に流してこい!」

「へい!」


 でも、市長。グッジョブだ! よく時間を稼いでくれたぜ。


 俺は手に持っていたものを店内に思い切り投げつけた! ガチャン、チャリンという音が部屋に響き渡る。


「な、なんだ?」

「ほしい奴は拾え!」


 お姉さんや客の視線が投げられたものに集中する。それは金色に光り輝いていた。


「金貨!!」


 それを見てローナが声を張り上げる。


「愚民たち。ダークさまのお慈悲です。金貨はいくらでも持っていくがいいわ。こんなつまらない劇を見せられたダークさまは退屈しておいでです」


 そう言うとローナ自身も店内に金貨を投げ始める。お客やお姉さんばかりか、店員や用心棒どもまでが競って金貨に群がっていた。


「おい、それは俺んだぞ!!」

「何言ってんの。早い者勝ちよ」


 金貨に興味を示さないのは、俺、ローナ、そしてゲトリだけだった。


「金貨がほしい奴、武器を放して、拾え! 拾え!!」

「馬鹿者ども! あいつを殺せ! 何してる?」


 そう言われても自分の給料の10年分が目の前に落ちているとなれば、誰も命令を聞かない。


「くそう!」


 そう吐き捨てるとゲトリはシミターを振りかざして、俺に迫ってきた。


「ローナ!」

「はい!!」


 ローナのテレキネシスが発動し、ゲトリはもんどり打って転んだあげくシミターを放してしまう。


「ほい」


 シミターを蹴飛ばし、ゲトリの首にナイフを突きつけ、もう一度、全員に武器を捨てるように話す。ま、もう、誰も武器なんて持ってないけどね。


「ダークさん!!」


 乱暴に店の扉を開けて宿の女将さんが入ってきた。後ろにいるのは?


「副市長リークハルド……」


 市長は真っ赤だった顔を真っ青にした。これからの自分の運命を悟ったんだろう。自業自得さ。


 女将さん、本当に連れてきてくれたんだ! 副市長は街の警備兵を30名も引き連れてきてくれたし。もう、安心だな。俺たちから事情を聞いた副市長は全員を牢屋に入れるように命令を下した。


「連れて行け!!」


 その言葉の後、娼館に残っていたのは、俺、ローナ、女将さん、副市長リークハルド、そしてクレメッティだった。


「ご主人さま。ディーラーのクレメッティさんを知ってたんですか?」


 おいおい、コラリ村を去る時に一番前でブチ上がって叫んでたろ!


「あ、あの人?」


 静かに礼をしたクレメッティさんは、目をキラキラと光らせていた。


「さすがダークさまです。奴隷の違法販売に手を染めていた娼館をつぶし、さらに金を掴ませてさらわれてきた女たちを逃がしてしまったんですからね。そのおかげで私も無職ですよ」

「すまんな」


 クレメッティさんは息を弾ませていた。


「ダークさまの偉大なる世界征服の手伝いができて幸せです。私も村へ帰ることにしますよ」


 征服なんて違うって! そうじゃないと話したかったけど時間もないし、まあ、いいか。そう話すクレメッティに、俺は金貨をひとすくい差し出した。


「これは退職金だ」

「あの程度のイカサマ、楽勝ですよ」


 さらに金貨をひとすくい差し出す。


「俺と一緒に旅に出ないか? 堂々とイカサマを仕掛けるその胆力。村に帰すのは惜しい」


 正直、ローナの百倍は頼りになる。


「とても嬉しいお誘いです。ただ、今すぐは難しいですね。しばらく、愛しいひととゆっくり休みたいので」

「そうか」


 がっちりと握手をしたクレメッティは、娼館の前で大きく手を振りながら笑顔になった。その隣に筋骨逞しい男が付き添っている。クレメッティは、その男と腕を組みながら去って行った。そ、そうなの? この時代、それはいいのか?


 戸惑いながらも見送った俺たちに向かって、副市長はこっちへこいと俺を手招きする。隣の部屋の奥に、副市長の部下が見つけた壺が置かれていた。蓋を取ると、金貨がぎっしり詰まってる。ぱっと見、3000枚くらいはありそうだな。


「ダークさんの取り分です。市長は失脚し娼館は閉鎖。その上、違法奴隷売買まで潰したんですから全部どうぞ」


 副市長、中々の胆力だ。でかい仕事ができるタイプだな。俺は近くにあった2つの袋に金貨を100枚ほど入れると、1つは女将さんに手渡す。


「女将さん。宿屋を直しなよ。穴の空いたシーツじゃ疲れがとれない」

「一丁前に! 今度はシルクのベッドにしてみせるよ!」


 女将さんの笑顔を見ながら、俺はもう1つお願いをする。


「リサちゃんの夢は花畑づくりだったな、これリサちゃんに」


 ひとすくいした金貨を女将さんの袋に入れる。


「あんた……。リサに会わないつもり?」

「一応「暗黒の支配者」だからな」


 女将さんは俺の腹をグーで叩くと、軽くハグをする。


「あ、そうそう。あんたの馬車と部屋の荷物、持って来といたよ。逃げることになったらと思って」


 館から出て行く寸前に女将さんは親指で表の方を示し、ニカッと笑う。小さく手を振ると、そのまま出ていってしまった。


 とてもありがたい。


 市長が捕まったと分かれば市長派がいろいろうごめき出すだろう。宿屋に戻れば、女将さんやリサちゃんに迷惑をかけるかもしれない。その前に、この町を離れないとな。


 俺は副市長に向かって最後の話を切り出す。


「副市長。これから市長派と抗争があるだろ? この金を使いなよ」


 壺をつま先で軽く蹴る。政治はきれい事じゃないからな。


「それはありがたいが、いいのか?」

「いい。あの宿屋の家族が、安心して暮らせる街にするんだろ?」

「勿論だ。街の税金も安くしてみせるよ」


 副市長はふっと軽く笑うと真剣な眼差しでウインクしてみせる。俺たちはがっちりと握手する。どうやら、いい方向に流れそうだ。イジメをしていた奴らを懲らしめることもできたし、すっきりしたぜ!


 するとローナが副市長に向かって、胸を張り偉そうな口調で話し始めた。


「副市長。ダークさまの偉大さが分かりましたね。これから私たちは腐った町を破壊し、この世界を征服します。世直しのために協力してくれますね?」


 片膝をついた副市長は胸に手を当てて宣誓する。


「はっ! 私がこの町の市長になった暁には、ダークさまの世界征服に協力いたします。全ての人が幸せに暮らせるように」

「よい心がけです。困った時は黒い旗を高く掲げなさい。ダークさまが必ず助けてくださるでしょう」


 満足そうに頷くローナと副市長……。おい! 俺の夢はどうなるんだよ? 俺は世界征服なんてしたくねえっての! 一度でもしゃべったことなんてない!!


 俺の夢は、さっきまで叶いそうだったんですよ。可愛い彼女とキャッキャ、ウフフな生活をするっていう……。


 副市長は部下に壺を運ばせている間、俺は袋に入れた金貨100枚(1億円)を何度も眺めていた。しばらくは引きこもりだああああ! 俺はうきうきしながら、娼館を後にする……って、え?


 そこには、さっきまで館にいたおっぱいの大きな女の子がモジモジしながら立っていた。


「あ、あの、ダークさま。私を連れていってくれませんか?」

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