第17話 ダーク、まさか、まさかの……
「いいね。いいね。じゃあ、あのおっぱいの大きな女も、連れて帰ろうかな」
店の奥にいる女の子に、いやらしい目を向ける。妄想を広げながら、ほくほく顔のままカードが配られるのを待つ。
「ダークさま、もう終わりましょ! ね! すごく勝ったんですから」
必死に止めさせようと腕を引っ張るローナの言葉は全く耳に入らない。
「嬢ちゃん、ここで止めさせるんじゃねえよ」
「そうだ、そうだ。ツキがあるのに止めるって事があるかよ」
そうだぜ。あと1回は確実に勝てるんだ。ブラフも入れて勝ちを積み重ねて大儲け! 命を賭ける冒険なんか真っ平ご免だからな! ローナのスキルをつかわないまま、俺は勝ちを金貨を800枚まで積み上げた。
「うほおおお!!」
ハーレムが完成だ! もうスキルなんて使う必要がねえ。さあ金貨1000枚(10億円)、カモーン!!
「金貨100枚、ベットだ!!!」
「……分かりました」
めくっていくと俺がツーペア。で、ディーラーは?
「スリーカードです」
歓声が沸き上がる。あまりに勝ちすぎた俺は、いつの間にか「お前負けろ」みたいな雰囲気が店内に広がっているのを感じた。女の子たちの目も心なしか冷たいぜ。
ま、まあ、まあ。まだ、金貨600枚も残ってる。
……と思った時期が俺にもありました。
気がつけば金貨は500枚に減っていて、もう遊ぶわけにもいかない。ローナのスキルもこれで最後だ。
「オールイン(全部賭ける)だ! 500枚かける!」
これで1000枚にしてフィニッシュだ!
え?
ディーラーが首を振ってる。受けない? ま、まあ、いいか。「占い」スキルももう使えないし、これでフィニッシュってコトで。
結局、俺は金貨750枚を得ることに成功した。机の上の金貨を眺めていると、ゲトリが俺に話しかけてきた。
「旦那、最後に一勝負しねえか? 役に応じて支払いを増やす特別ルールだ」
「ほう、それは?」
「ワンペアは2倍、ツーペアは3倍、ロイヤルストレートフラッシュなら10倍にするのさ」
目を輝かせたままの俺は、その申し出を受けようとする。
「ダメですよ、ご主人さま。絶対帰りましょ!!」
強く腕を引っ張るローナを振り払って、俺はゲトリに詰め寄った。
「ほ、本当だろうな」
「約束する」
俺は前のめり気味に、その申し出を受けていた。金貨を105枚残せば別に負けてもいいだろうし。
カードが配られるとゲトリはニヤリと笑いながら宣言する。
「ペルケレ族の旦那。有り金を全てかけるんですぜ」
え?
カードを手際よくシャッフルしながら、ディーラーが冷静な声で説明する。
「それが特別ルールです。カード交換もなしの一発勝負」
一発勝負? なんじゃ、そりゃ? 後付けのルール変更って絶対にダメだろおおおおお!!
そう頭の中で叫ぶ中、机の上の金貨が回収され、隣の机の上にまとめて置かれてしまった。無情にも俺の前にカードが配られてしまった。
……マジっすか。俺、ハメられた?
ローナの方を振り返るとプンプンと怒っている。
「だから言ったじゃないですかあ!」
す、すまん。でもさ、それだけギャンブルは中毒性があるんだよ。で、俺、詰んだ? 山に埋められちゃうの?
俺の手がぶるぶる震える中、ディーラーは冷静に自分のカードを表にする。
「フルハウスです」
続けてゲトリは宣言する。
「フルハウスは7倍だから合計金貨5250枚が支払いだ。まあ、楽しませてくれたお礼に5000枚(50億)にしとくよ」
あっという間に店員が俺を取り囲んだ。こんな馬鹿な話があるか? 俺はディーラーに詰め寄る!!
「何も交換しないでフルハウスだなんてイカサマだ!!!」
取り乱した俺を店員は逃げられないようにしっかりと押さえつける。
「あん?」
ゲトリは下卑た笑いが止まらない。口に葉巻をくわえると、女の子に火をつけさせて煙を吸い込んだ。
「イカサマだなんて人聞きの悪い。相手が気付かないなら、それもアリなんだよ」
ふうっと俺の顔に煙を吐き出したがった……。俺はゴホゴホと咳き込みながら、笑いが込み上げてくるのを感じた。
「……それを聞いて安心した。ローナ! めくれ!」
ローナはビクっとした後、ゆっくりと俺のカードをめくっていく。3枚、4枚とめくっていくうちにゲトリの顔が青ざめていく。
5枚目をめくる。スペードのエースがカードの一番上に重ねられる。ゲトリの口から、ぽとりと葉巻が落ちた。
「ロイヤルストレートフラッシュだ。……確か10倍だったよな。楽しませてもらったお礼に金貨500枚はまけてやるよ。7000枚(70億)を支払ってもらおうか」
「ば、馬鹿な!!」
「汚い手を手を放せや!!」
俺は店員たちの手を振り払い、その場にゆらりと立ち上がる。
ゲトリはディーラーを睨み付けるが、ディーラーは分からないとばかりに頭を振っている。
「ペルケレ族のイカサマに決まってる!」
「おいおい。相手が気付いてないならアリだって言ったじゃねえか!」
不敵に笑う俺を睨み付け、テーブルの前に置かれたビールジョッキを壁にぶつけた。ガラスの壊れる音とともに、破片が店内に散らばっていく。
「お前たち、こいつを冥府に送ってしまえ!!」
ゲトリは俺を指差して怒り狂った。その言葉に弾かれたように迫ってくる手下に向かって、俺は机を思いっきり蹴りつけた。机は派手な音を立てて手下たちにぶち当たる。腰に当たれば痛かろう!
そのまま観客席に飛び込んだ俺は、一番綺麗なお姉ちゃんの隣にいた恰幅のいい仮面の紳士にナイフを突きつける。
「な、何の真似だ!?」
目から炎を吹き出しそうな勢いでゲトリは俺を非難する。いやいや、お前に言われたくねえよ。
「全員、武器を捨てろ!!!」
一番近い客しか脅せなかったぜ。まあ、綺麗なお姉ちゃんをはべらせてんだ。太い客だろう。
あ、あれ?
みんな武器を地面に捨ててるぞ。しゃべった俺が一番、驚いた。
「き、貴様! ……どうして、そいつが市長だと分かった?」
ゲトリの悲鳴にも似た叫び声が娼館中に響き渡った。




