第16話 ダーク、調子に乗る
「では、場代として金貨1枚をどうぞ」
金貨1枚を置き、5枚のカードを手で隠しながらそっと役を確かめる。絵柄が1枚もなく5のワンペアができてる。
「掛け金を上げますか?」
俺は無言で金貨2枚を置きカードを3枚を交換すると、5のスリーカードができた。まあ、いいんじゃね。でも、こんないろんなものが賭けられたゲームは、さすがにドキドキするぜ。ギャンブルに夢中になっちまう理由がわかるな。
ディーラーは降りなかった。
「さあ2回目です。レイズ(掛け金を上げること)しますか?」
無言で金貨を2枚置く。こっちの貨幣になれていないのがいいんだろうな。金貨5枚は500万だから日本なら車が買えちゃうぜ。
「受けましょう」
自信満々に俺はカードをひっくり返す。5が3つ並んでいる。
「ああ、スリーカードですね」
と言いながらディーラーが手札を表にすると8のスリーカードが現れた。
「ラッキーでした」
あっという間に金貨10枚(1000万)を失った。異世界えぐいぜ。
その後3回連続で負け、持ち金は金貨30枚まで減ってしまった。明らかにこのディーラー、イカサマしてやがる。視線からすると後ろの店員が俺の手札を見て教えてる気がする。最初っから、やる気満々って訳か。
じゃあ、こっちも容赦はしねえ。
後ろに立ってるローナに合図を出すと、背中に了解の合図がトンと返される。
俺は手札を全て裏返したまま交換せず、手をカードに振りかざしただけだった。ディーラーは戸惑い、掛け金を上げなかった。
2回目の手札交換が終わると、俺はカッと目を開く!
「金貨20枚をかける」
と金貨をザラザラと押し出した。あきらかにディーラーはびびって迷ってる。娼館主ゲトリを見たディーラーは「行け!」という指示を確認して勝負を受ける。ディーラーはビビって、震えながらカードをひっくり返す。
「6と7のツーペアです」
俺は黙ったままカードをひっくり返す。俺も含めて、全員がその札に注目している。最後の1枚をひっくり返した瞬間、ローナの声が店内に響き渡った。
「クイーンとキングのツーペア! ご主人さまの勝ちですね!!」
俺の前に金貨40枚が返ってくる。占いの1回目は成功! さあ、ここからが難しいぜ。うまく負けないといけないからな。
次に金貨10枚をかけるとディーラーは降りてしまった。受けない場合、半分の支払いだったよな。手持ちが金貨64枚になり、スキルは残り4回だ。
もう一度金貨10枚をかけると、またもやディーラーは降りた。金貨は79枚に増えたけど実はスキルは使ってねえ。相手のビビリを、とことん利用させてもらうぞ。
次の勝負で金貨は94枚になる。スキルは残り4回のままで、いい流れだ。
ディーラーからカードを渡されても、俺は足を組んだまま目を閉じたままだ。動きは時々カードに手をかざすくらいだ。たカードを俺は見もしない。店内からは、しわぶき1つ聞こえない。館の主であるゲトリが顔を赤くしているのが分かる。近くにいる5人の店員たちは、俺とローナのイカサマを見破ろうと見つめているが何も分かってない。
「50枚、かける!」
ディーラーは真っ青になり、おろおろとゲトリの指示を確認している。負けが多くなってきたせいか、ゲトリは苛立ちを隠そうともしない。
「受けろ!」
カードをひっくり返すと、当然俺の勝ちだ!!!
ゲトリは思わず、掴んでいたワイングラスを壁に投げつけていた。ガラスの割れる音が店内に響くが、俺は意にも介さない。
「……これが取り分です」
ほっほう。金貨100枚ですか。合計金貨193枚になる。俺ってギャンブルの才能があんのかな? すでに持ち金が2倍になってるぜ!
スキルは残り3回になり、ゲームは9回目が終了した。
俺の目の前に金貨が無造作に積まれている。このままいけば負けないでローナを連れ帰ることができるな。流れに乗るしかない、このビックウェーブに!
ディーラーがイカサマを見破ろうにも、ローナが手をずっとカードの上に置いて情報を与えない。さらに勝って金貨を15枚もらい、合計金貨が208枚になった。スキルは2回残っていてゲーム回数はついに10回に到達した。
「やったあ。ご主人さまの勝ちですね!」
俺の首に抱きついてくるローナを、ゲトリが苦り切った瞳で眺めている。あまりに上手くいきすぎて、楽に大金が手に入ったことに俺は興奮を隠せない。まだまだ、もっといける!!
「ご主人さま、終わりましょう?」
「バカ言うな! さあ、次のゲームだ!!」
「ほう、終わらないのか」
ゲトリは俺の様子を冷静に見ている。
「10回を越えたら、いつ止めてもいいんだろ」
「それは自由だ」
ディーラーにカードを配れと俺は指を鳴らす。
「さあ、もっと稼ぐぜ!」
周りで見ていた観客は俺を応援し始めた。
「いやあ男だねえ。気持ちがいい賭けっぷりだ!」
「女の子を一人買っていきなよ。ゲトリさんは売ってくれるからさ」
やっぱり娼館だけじゃないんだな。
「ここじゃ、お姉さんも買えるのか? あの一番可愛い子を持ち帰ってもいいか?」
ゲトリは少し黙っていたが口を開かないままうなずく。ゲトリの隣にいた店員Aが代わりに答えてくれる。
「売ってるよ。あの子は金貨30枚だ」
「へえ安いねえ。全員買っていくかな」
俺は完全に調子に乗っていた。ノリノリだ!
「100枚かける!」
店内に大きな歓声がわきあがった。
「ディーラー! 受けろ!」
「逃げんじゃねえ!!」
ローナのおかげで、またしても俺の勝ちになる。ついに407枚の金貨(約4億)が俺のカードの両サイドに積み上がった。スキルは残り1回。いやあ、勝ちが確定してるって、いいわあ。




