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「外道」スキルって何? 可愛い彼女とキャッキャ、ウフフしたいだけなのに、世界征服するんですよねと言われて困惑してます  作者: ちくわ天。


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第13話 ダーク、街中で外道!

「ご主人さま。この町、けっこう賑わってますね!」


 珍しそうに町の喧騒を眺めていたローナが弾んだ声を出す。実は俺もテンションは高めだ! ここキティラの町は本当に異世界って感じだからな。


 コンクリートに見慣れた俺にとって、家の造り、石畳の道、人々の服装など、全てが新鮮だ。コラリ村は何となく日本の田舎って感じがしたんだけど、ここはまさに中世ヨーロッパ。本で見た世界が広がってる。


 でも、俺の目はさっき出会ったシスターの姿を無意識に探してしまう。あんな素敵な人が俺の彼女だったらなあ。もしラノベだったら、そこで物語は終了だったのに。


 ん?


 ローナが俺の顔をじっと見つめている。不審の目つきが怖い。お前はいったい俺の何が不満なんだよ。


 町を見学するには馬車が邪魔なので宿に預けておきたいのだが、案の定どこに行っても泊めてもらえない。


「いやあ、今日は空いておりませんで」


 どう見てもガラガラだし。


「うちはフォモール教会の信徒ですから」


 どの宿でもお断りだ。正直、まいった。こんなことがあるんだな。


 かなり町の奥まで来てしまい、正直、ヤバイ雰囲気をビンビンと感じる。こりゃ、戻らないといけないとローナと相談していた時、


「……お花、いかがですか?」


 6才くらいの女の子が俺に声を掛けてきた。何という花か分からないけど、青い花びらがツヤツヤとした綺麗な花がカゴにいっぱいだ。でもペルケレ族の特徴をもつ俺に声をかけるなんて。


「お前、俺が怖くないのか?」


 すると、女の子は、はにかんだ様子で花かごを目の前に上げた。


「だってお兄ちゃん。花が好きそうなんだもの」


 そうか、そうか。俺は服の中をまさぐって金を探す。とりあえず銅貨でいいか。女の子の右手に10枚の銅貨をこぼれないように置く。


「いくつ買える?」


 女の子がびっくりしたように自分の手に置かれた銅貨を見つめている。


「全部、買えるよ」


 俺はそうかと言いながら、女の子が差し出した花の茎をひもでくるくると結んで花束を作る。ふふん、ダテに園芸部じゃないぜ。女の子は目を丸くして、そうして邪気のない目で笑ったんだ。いい、笑顔だ。


 そのまま花束を抱えて立ち去ろうとすると、その女の子が俺の服の袖を引っ張った。


「どうした?」


 俺はしゃがみ込んで女の子の頭を撫でた。自然にこんなことができるなんて異世界にくると性格まで変わんのかな。でも、そうしたかったんだ。


「あ、あのね。うち、前は宿屋をしてたの。だからね、泊まるところがなかったら……」

「おう、行くぞ!」


 渡りに船だ。ローナもほっとしたように俺たちを眺めて笑顔になる。


 女の子は喜び勇んで俺たちを先導する。俺たちは馬を引きながら、ゆっくりと町の奥へ奥へと入っていった。


「ただいまあ」


 女の子が入ったのは、確かに昔は宿屋かもしれないあばら屋だった。壁に崩れた部分がある二階建ての木組みの家。それでも馬車を停められるスペースはある。俺たちが馬と荷台を紐で繋いでいると、後ろからおずおずとした声が聞こえてきた。


「あ、あの。リサから聞いたんですけど、本当に宿泊なさいますか?」


 年の頃は40歳前後か? 顔に疲れた様子を浮かべた女性が花を売っていたリサちゃんを連れながらやってきた。この人はお母さんか。


「泊まる」


 俺を見てぎょっとしたお母さんだったが、右手に持っていた花束を見て、ふふっと小さく笑う。おう、リサちゃんとそっくりの笑い方だな。


「分かりました。お二人で一泊銅貨20枚になります」


 俺はイマイチ銅貨の価値が分からない。


「これで足りるか?」


 銀貨を1枚出すと、お母さんはまた、ふわりと笑う。


「それだと5泊できますよ。いいんですか?」

「ああ。頼む」


 お母さんからは部屋の準備に時間がかかるため、しばらく町を見学するようすすめられる。俺は黙ってうなずくとローナを伴って町の中心部へ戻ったのだった。


 §


「さあ、ボールが入ってるカップを当てたら、かけた金額の3倍を払うよ」


 ほほう。こんな異世界でも「スリーシェルゲーム」(カップとボールのマジックのこと)があるのか。当然、イカサマ上等なんだろうけど。


 椅子に座っている中年のイカサマ師と客引きの若者、そして一般客のふりをして遊んでいる男がグルだ。サクラは派手に勝ったり負けたりして、人目を引きつけるんだな。


 このゲームを見た俺は、一つ試したいことがあった。イカサマは通常、すぐバレる。でもスキルを使ったとしたら……。


「ローナ。お前の「占い」で、どこに玉が入っているか分かるか?」

「やったことがないですから……。まず、やってみますね」


 さりげなく俺ら二人はゲームの様子を遠くから眺め始めた。ゆっくりとカップを動かしているが、それにあまり意味はない。要はコップを上げる瞬間にイカサマをしするからだ。


「さあ、かけてくれ!」


 3人の見物人が真ん中に銅貨や銀貨を置いている。そりゃそうだ。どう見ても、そこにあるように見える。それが罠なんだ。サクラの男もそこにかけて、他には何も置かれてない。小さな声でローナに確認する。


「ローナ、どうだ?」

「ご主人さま。右にいいことがありそうです」

「お前、そこに銀貨1枚かけろ!」


 ローナはおずおずと右のコップの前に銀貨を1枚置いた。俺は左側のコップの前に銀貨1枚をかける。これなら誰かが必ず当たる。中年のイカサマ師はニヤリと笑い、コップを開いていく。玉が入っていたのはローナのカップだった。


「嬢ちゃん、おめでとう。でも次はそのペルケレ族の旦那と一緒にかけてくれよな」


 銀貨3枚をローナに渡しながら、イカサマ師はニヤリと笑う。ばれてたか。


「仲間でかけるのは「なし」だ。俺たちが干上がっちまうぜ!」


 よく言うぜ。お前らもグルになってるだろうが。それでも、いける気がする。俺の手持ちは銀貨7枚。増やしまくるぜ!


 無言でテーブルの前のスツールにドカリと座った俺は、1対1でやろうと提案する。


「おお、いいぜ。他に何か要望はあるか?」

「俺がカップを空ける」


 イカサマ師は一瞬厳しい顔つきになる……が、


「いいぜ。それでいこう」


 とのってきた。自信があるんだな。でも、こっちにはイカサマ以上のイカサマがあるんだぜ! 俺はローナの耳元で、いいことがありそうなカップを教えるように伝える。


「はい。ちゃんと叩いて伝えます」


 よし、じゃあ。始めようか。


 イカサマ師がカップをシャッフルして、俺に掛けるように促してくる。ローナの答えは「真ん中」。俺は真ん中に銀貨3枚をかける。


「ほう。ためらいがないな」


 イカサマ師の前でカップを開くと、そこには黒々とした玉が入っていた。よし、いけるぜ!


 2回戦では、銀貨9枚をかけて27枚に、3回戦では81枚に増える。よっしゃあ!! もうすぐ銀貨100枚すなわち金貨1枚になるぜ!


 3回戦ではローナが俺に何も教えてくれなかった。


 そうか、こいつらやったな。


 俺は全部のコップを同時に腕で薙ぎ払う。玉はどこにも入っていなかった。


「次やったら10倍払え」


 イカサマ師は肩をすくめて分かったと吐き捨てる。近くの仲間が焦っているのが分かるぜ。


「でも、次を最後にしてくれよ。俺たちにはもう金がないからな。あと負けを減らしたいから、俺の仲間も賭けていいか?」

「分かった」


 仲間だろうが誰だろうが、どんとこいだ。さっきより早くカップが振られ、玉がその中に吸い込まれていく。


「さあ、かけてくれ!」


 おいおい美味しすぎるぞ! 次で銀貨243枚だ。この調子でやっていけば、億万長者も夢じゃないぜ! 金も女も手に入れ放題だあ(ゲス)。


 俺は後ろを振り返ってローナを見ると、なぜか慌てたように頭を振っている。ははあ、またイカサマか? けれども、ローナはこっそりと耳打ちしてくる。


「ご主人さま。ごめんなさい。分かりません」


 お、おお、おいおいい! 分からないって何だよ!

 ローナは泣きそうな顔で口をつぐんでいる。


 マジか?


 さ、さささ、3分の1だ、だよね。


 俺は左のカップに手をかける。


「じゃあ俺たちも賭けるぞ。右だ」


 ダメとは言えない状況だ。頼む、三分の一の確率よ! カップを上げた瞬間、そこには何も入っていなかった。


「残念だったな。右だ」


 イカサマ師が右のコップを倒すと、そこには黒々とした玉が光っていた。偽物じゃないかと、こわごわと玉に触ってみた。


「どうした。偽物じゃないぜ」


 ま、負けた? しかも、こんな間抜けな理由で?


「ということで銀貨243枚もらおうか。ペルケレ族の旦那」


 呼び込みと若者が俺のサイドに移動してきた。逃げられないようにってか。こいつら、やりなれてやがる。


「金は……ない」


「じゃあ、その奴隷を売ってでも支払ってもらうぜ。明日の夜7時、街の娼館「赤い華」にやってきな。おっと、逃げようたってそうはいかねえ。お前の宿まで、このお兄さんが送っていって、そのまま監視すっからよ」


 本性を現しやがった。こいつらは娼館の三下だったんだな。


 でも、本当にどうしたらいい?


 有り金どころか借金まで増やし、挙げ句の果てにローナまで奪われようとしてる。


「ご主人さま……」


 不安そうなローナの声を聞きながら、俺は暗澹たる気持ちで宿屋に向かうのだった。

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