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「外道」スキルって何? 可愛い彼女とキャッキャ、ウフフしたいだけなのに、世界征服するんですよねと言われて困惑してます  作者: ちくわ天。


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第11話 ダーク、ギルドを詰める

「いらっしゃ……」


 俺たちが入口のドアを開けた瞬間、歓迎の言葉が途中で途切れてしまう。酒場も併設して賑やかなはずのギルドハウスが静寂に包まれてしまった。


 コツリコツリと俺の革靴(奪ったやつ)だけが、その場に響く。受付に来ると力を振り絞って声を出した。


「冒険者登録を」


 気持ちとは裏腹に小さな声しか出なかった。でも、受付のお姉さんは恐怖で顔が引きつっていた。異世界でも女性には好かれそうもないな(泣)。


「あ、あの……」


 戸惑う受付のお姉さんの後ろから、いかつい冒険者風の中年男性がずいっと前に出てくる。


「ギルドマスターのモーガンだ。登録は難しいな」


 ギルドマスターの登場にギルドハウス内に安堵の雰囲気が広がっていくのが分かる。酒のお代わりの声が、そこかしこから聞こえてくる。


「なぜ、できない?」


 俺が尋ねると再びハウス内に緊張が走る。その雰囲気を打ち消すようにモーガンは机にミシリと手をつきながら身体を乗り出してきた。


「ペルケレ族を登録したことがない。というより、できないはずだ。悪魔の眷属だからな」


 その声を聞いて店にいる冒険者たちが口々に抗議の声を上げる。


「悪魔が冒険者って、何をするつもりだよ!」

「討伐される方が討伐したいって、ジョークのセンスは抜群だな」


 何だか騒然としてきたな。これは、もう諦めて別の村に行くしかない。そう思って、くるりときびすを返そうとするとハウス内に叩きつけるような声が響く。


「黙りなさい愚民ども! ダークさまの前ですよ。その汚い口を、今すぐ閉じなさい!!」


 あ!! あの! ローナさん? 何を話すつもりなの? もう出て行こう。ローナの肩に手を掛けた瞬間、


「愚民ども、とはご挨拶だな。この奴隷が!」

「俺、ダークさま、何て知らねえし」


 大きな笑い声が店内に広がっていく。ギルドマスターも侮蔑の表情を崩さない。な、ローナ。もう行こうぜ。ローナの袖を引くも全く動こうとしない。ローナの瞳に怒りの炎が燃え盛る。


「ダークさま。これ以上、愚民の言葉を我慢する必要はありません。ダークさまの恐ろしさを広めるためにも、無礼者たちに今すぐ罰をお与えください」


 ええ? 俺、我慢してないし、罰なんてどうやって与えたらいいの? 俺は何もできないんだよ。


 その時、入口に初老のじいさんが供を連れて入ってきた。その後ろにいるのは!


 思わず走り出した俺はナイフを抜いていた。


 驚いて動けないじいさんにナイフを振るう。じいさんに噛みつこうとしていたコウモリの腹にナイフを突き刺すと、赤い鮮血が一気に吹き出した。危なかったぜ! でもこのモンスター、血が多すぎる。気持ち悪い……。


 じいさんはもちろん、俺も返り血を浴びてしまった。


「あ、あれって警告だよな」

「次はお前らだって意味だろう」

「血だらけの姿……まさに、悪魔!」


 ん? 人助けをしたっていうのに妙な雰囲気だぞ。


「そ、村長! 無事ですか?」


 後ろにいた3人が村長を抱き抱える。このじいさん、コラリ村の村長だったのか。


「えげつねえ。冒険者になれないからって村長に脅しをかけるなんて。外道の振る舞いだよ」


 周囲からひそひそ声が、たくさん聞こえてくる。そんなことしてないよ! 俺が誤解を解こうとした瞬間、


「ダークさま!!! どうしてここへ?」

「ま、まさか? 俺たちを追って?」


 村長を支えていた3人がひざまづいて、頭を床に擦りつけていた。ありゃあ、昨日の盗賊3人組か。何で村長の後ろにいるんだ?


「お、お前ら……」


 そう話そうとした瞬間、三人が恐ろしそうな声を上げていた。


「お、俺たち! 何も話してませんんん!!!」

「そうです。「暗黒の支配者」さまのことは、絶対に話さないって約束。きっちり守ってます」


 今、大声で話してるじゃん。


 でも、そんな約束したか? 勝手に物語をつくってやがる。

 

「ど、どうか、心臓をえぐるのだけは勘弁してくださいいいいい!」


 その瞬間、周囲に緊張が走る。


「お、おい! まさか、本当に?」

「コラリ村で一番腕の立つ3人があの態度。間違いないわ……悪魔の来訪よ」

「もう、この村もお終いか……」


 その様子を見て、ローナは勝ち誇ったような声になる。


「ようやく「暗黒の支配者」たるダークさまの恐ろしさが分かったようね。でも、もう遅いです!」


 その瞬間、ローナは詠唱を始めていた。随分長いこと唱えてるなって、えええええ?


 周囲にいる人間たちが両手両足を床につき始める。机からはミシミシという音が響き、バリバリという音と共に床に砕け散っていく。見えない重しのようなものが、この空間全体を押しつぶしている。


「さあダークさま。愚民どもは押さえつけました。その手に持つ「断罪のナイフ」

の切れ味を試しましょう!!」


 おいおい、このナイフに変な異名をつけてんじゃねえ! これは普通の果物ナイフみたいなもんだろ! 昨日、お前だってリンゴをむいてたじゃん!


 近くにいた盗賊三人組は、両手を合わせて必死に許しを願っている。


「ダ! ダークさま、俺たちは別に無礼を働いてはおりません! どうか、どうか、心臓をえぐるのだけはお許しください!!!」

「そうです。俺たちはもうダークさまのしもべです! 裏切ってなどおりません!!」


 何だか、勝手に想像を広げてるな。可哀想になってきたよ。


「ローナ! もう止めろ!」

「しかし……」

「止めるんだ!」


 その瞬間、見えない重しが取り除かれる。


「ダークさま、どうして? 無礼者たちの首を全て斬り落とし、「暗黒伝説」の始まりを知らせるべく、人間の首飾りのオブジェを作るのではなかったのですか?」


 おい、勝手に恐ろしいストーリーを練り上げてるんじゃねえよ!!! 周囲にいる全員が青ざめた顔で俺たちを見つめている。


 すると、後ろから声が聞こえてきた。


「ダークさま。村民の無礼、どうかお許しください」


 村長が深々と頭を下げている。


「どうか、村人の命だけはお許しください。モーガン! ギルドの金庫から金貨100枚を持ってくるんだ」

「まさか……。村の支払い金を?」

「いいから持って来い!」

「はい!」


 奥に引っ込んだギルドマスターは、重そうな麻袋を1つ運んでくる。それを受け取った村長は、俺に向かって深々と頭を下げながら差し出した。


「その金貨100枚をお受け取りください。どうか怒りを鎮めてください」


 おお! 金貨100枚かあ。引きニート生活も可能だな。


 上機嫌で受け取ろうとした瞬間、周囲からの声が耳に入る。


「おい、あの金貨。王国への支払金だろ。あれがなきゃ、また村から女たちが連れていかれるな……」

「ああ、王国の横暴は許せねえよな」


 受、受け取りづらい。そうか、こんな小さな村にも重税が課せられてんだな。まあ、それでも俺も生きていかないといけないし……。そう思いながら金貨の袋を手に取った。ずっしりと重い。


「村長、1週間分の食料と周辺の地図。準備してくれ」

「はっ!」


 盗賊3人組がすぐに走り出ていき、馬1頭と幌をつけた馬車を引きながら帰ってきた。


「ダークさま。こちらをお使いください」

「おお、気が利くな!」


 すると3人組は俺の側に顔を寄せてきて、


「どうか俺たちが盗賊をしていたことは黙っててください」


 と、ちゃっかりと頼み込んできた。まあ、いいか。


「分かった。真っ当な人間になるなら話さない」

「あ、ありがとうございます」

「ぜ、絶対にきっちりと働きますから」


 俺は村長に近づくと金貨の袋をどさりと投げつける。


「村長、馬車の礼だ」

「ダークさま……」


 周囲にいた村人たちが全員、頭を下げる。いや、そんな、いいことしたわけでもないんで……。


 御者台に乗ったローナは手綱を握ると、最後に村人たちへと呼びかけていた。


「あなたたち。ダークさまのことは秘密にしておくのです。王国に話したらどうなるか分かりますね」


 全員、青い顔で頷いている。言わなくていいことを。


「困ったことがあったら、黒い旗を掲げダークさまに願うのです。必ずやダークさまが助けに来てくださるでしょう」


 おい、そんな設定は止めろって! 口を塞ごうとした瞬間、3人組が大声を出す。


「おい、みんな。ダークさまは、これから世界を征服し、王国を倒してくださるんだ!」

「おお! ダークさま万歳!!」


 盛んに万歳の声が聞こえてきた。ええええ、そんなこと1秒たりとも思ったことがないのに!!


 輝かんばかりに得意げなローナと村人の顔を眺めつつ、俺は暗澹たる思いでそのコラリ村を出て行くのだった。


「ダークさま。万歳!!!」

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