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22バッハ バハムートちゃんお引っ越しとベッド

 今日は引越しの日である。バハムートちゃん達は一軒の家の前に立っている。2階建ての少し古めのこじんまりした家だが、趣があってなかなかいい感じである。

……ここが我居城になるのか……ふむ、元の我からしたら鳥籠程度の大きさだがまぁよいわ。

 バハムートちゃんは腕を組んで満足そうに頷く。

「よし、麒麟!さっそく中を見に行くぞ!」

「うん!」

 2人はわーいと扉を開けて中に入っていった。

「魔道士パイセン、ここって賃貸っすか?」

「いや、買った。頑張って稼げよ」

 それだけ言うと、ゲーとしてるイフリートの横を通り過ぎて部屋の中に入っていく。そんな2人をフェンリルは物言いたげな顔でジッと見ていたが、イフリートには見当がついていた。 この間の夜の事が気になっているのだろうけど、ぶっちゃけ何も聞き出せなかった上に、何も聞くなと釘を刺された様なモノである。 魔道士の安全性が未だ不透明である以上、憶測だけで巻き込むわけにはいかなかった。 それも惚れた女子なら尚更である。

「あれれ〜〜?そんなに見つめちゃって、やっとオレに惚れた?」

「は?」

「ほらほら、旦那達が待ってるっすよ」

 フェンリルの顔が鬼の形相になる前にイフリートは誤魔化すかの様に彼女の背中を押して家の中へ入っていった。

 中は1LDKである。家具もまだ最低限なモノしか置いてない。

……むぅ、思った以上に質素だな……、元我の巣の宝物庫にある絢爛豪華な品々持ってくるかのう……。 それらはバハムート教の者達から贈呈された供物が殆どである。

 ムゥとなっているバハムートちゃんの横で麒麟ちゃんは目をキラキラさせている。

「……ここ、おうち……」

 そんな麒麟ちゃんを見て、まぁいいかという気持ちになった。

「よし麒麟!次は上に行ってみるぞ!」

「うん!!」

 ちびっ子達は元気に2階に駆け上っていく。 2階も一間でそれぞれ左右の壁を頭にベッドが2つと3つ、計5つ並べられていた。

……これまた何も無いな───とちょっぴり落胆してるバハムートちゃんの横で麒麟ちゃんはジッとベッドをみつめていた。

「……5つ、ある……」

「うむ?」

「5つ……、ひとつは、ボクの……?」 恐る恐るバハムートちゃんに聞く。

「そうだぞ、お主のベッドだ。 お主も今や我軍団の一員だからな」 

 バハムートちゃんは笑顔で麒麟ちゃんの頭を撫でながら言う。

「ボクの……」

 麒麟ちゃんは嬉しそうにほっぺをぽんぽんにした。

「……ねぇ、ボクの方が偉い?」

「はぁ? なんでだよ?!」

 隣で怒っているバハムートちゃんを見てふふっと笑う、しかし、その笑顔はすぐに曇った。

「……いいの、かな……?」

「?」

「ボク、こんなに幸せで……、あんなに酷い事、したのに……」

 “あんなに酷い事”がどれを指しているか、バハムートちゃんも他のみんなもわかっていた。 優しさ故の悩み。普段は明るくなってきたけど、人々を襲ったという麒麟ちゃんの心の傷は、今でも蝕まれたままの呪術と同じで、見えていないだけで決して癒えたわけではなかった。 隣で俯く麒麟ちゃんになんと言葉をかけたらいいものか迷っていた。

「毎日花を摘んでこい」

 魔道士だった。バハムートちゃんと麒麟ちゃんは顔を上げてそっちを見つめる。

「それを手向け、そしてその者達の為に祈るんだ。 毎日、1日もかかさず……な」

 麒麟ちゃんはしばし魔道士を見た後に力強く頷く。

「……わかった!」

 その顔は先程と違って前向きに見えた。そんなやりとりを後ろで見ていたイフリートとフェンリルはホッと胸を撫で下ろす。 一方その横でバハムートちゃんはポーっとほっぺを染めて魔道士を見ている。

……うむぅ……、この様な姿見せられたら、また我の中のメスが……

 そんなモニョモニョしているバハムートちゃんを見てフェンリルがトゲっとしたけど、イフリートは気づかないフリをした。 くわばらくわばらである。


 その日の夜、ベッドでみんなが寝静まった後に麒麟ちゃんはベッドの上に身体を起こし一通り見回しみんながいるのを確認して「いる」とうれしそうに言うとまた横になるのを、寝付くまでずっと繰り返していた。 そしてそれをみんなが知っていた。


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