13バッハ バハムートちゃん続・御一行のバイト探しからの序
さて、今日も今日とてバイト探しである。 働かざる物ベッドを得ず、とバハムートちゃん御一行の3人は街に出向く。
「何かいいバイト……か───バッハちゃんもやるとなると範囲かなり狭くなるね〜」
串焼き屋のおっちゃんがう〜〜むとアゴの髭を触りながら考える。 横ではバハムートちゃんがホフホフ串焼きをを食べている。それをフェンリルが嬉しそうに見ていた。
「何か割りのいいヤツとか知らないっすかね?」
「無くはないが、結構危険なモノも多いからな〜〜子連れではお勧めはできないけど、兄ちゃんが腕に自信があるなら中央広場の掲示板にその手の依頼が貼り出されてるから、見てくるといいよ」
おっちゃんに礼を言いながら掲示板に向かうと、たくさんの依頼が貼り出されていた。
「お〜〜〜〜あるある。何々?荷物運びから、護衛や獣魔退治、お尋ね者の指名手配とかもあるっすね」
以前カフェでボコった連中にもそこそこな額の懸賞金がかかっていたのでもらったはいいが、魔道士にうむを言わさず徴収された。
「まぁ、これ辺り行っとくっすかね……」
そういうと貼ってあったビラを1枚外して、それを管理してる場所に持って行き受理してもらった。
───隣街との流通の道すがらに獣魔が出没するので荷が襲われて困っています・商店街有志より・50,000kn───
……という内容であった。 どこぞの世界でいうところの金銭価値で50,000円位である。 そんなにお高くはないが、普段からお世話になってる人達の依頼だったので最初に決めたのであろう。
さて、ここで新たなワードが出てきたので、この世界の事を少し説明しよう。 この世界には人類と精獣以外にも獣魔がいる。 違いはというと、精獣には知能があるが獣魔にはほぼないと言っていい。 高位の精獣には自分より下位の精獣が付き従うが、下位の精獣は獣魔を使役する事が多い──まぁ精獣にとっては雑魚モブである。 人類にとっては多少やっかいな相手ではあるけれど、精獣程の脅威ではなかったりする。 どこぞの世界でいうならば、野生の獣に近い立ち位置であろう。 ゆえに、この世界ではそこまで重要視されるポジションではなかった。
かと言って、人類にとってやっかいな相手なら御一行は大丈夫なのであろうか? 元精獣とはいえ今やただの人である。 人間相手には圧倒できたけど、獣魔相手にもそれが通じるのだろうか?───それでは続きを見てみるとしよう。
お弁当タイムも終わり、バハムートちゃんはフェンリルの膝枕ですやぁお昼寝中である。 それを横目に羨ましそうにイフリートは見ている。
「あ───つまんねぇな〜〜〜。獣魔でてこないかな──どスケベなヤツ。 服溶かすスライムとか触手で縛りプレイする植物系のヤツとかこないっすかね〜〜〜」
「頭かち割るぞこの野郎」
冗談っすよ───と苦笑するイフリートに対してフェンリルは1つも冗談はなかった。
「それにしても、なんでフェンリルはこの姿でも旦那の方がいいんだよ? オレの方がいい男じゃん」
「バカめ、あのバハムート様がこの様なお姿になったのだぞ。 以前なら遠くから見るだけで触れる事等とても叶わぬ尊きお方───それを今ではこの様に触れる事ができる……これ以上至福な事はない。 ……しかもプニプニで柔らかくて、ほっぺたなんてプリップリで、ほんのりミルクの様ないい匂いがするのだぞ! ああ〜〜〜尊すぎて死ぬ、マジ死!!」
真面目な顔で話していたのに最後の方はデレデレである。 イフリートはこりゃダメだ──と肩を竦めた。
「ところで、どう思う旦那の事?」
イフリートの声色が変わり、バハムートちゃんを見やる。
「オレらはこの姿でも、まぁ戦い方が染み付いてるっていうか、かなり強いけど……その辺はどうなんだろうな?」
「───わからない……」
「……そっか」
そういうとイフリートはすっくと立ち上がる。 いつの間にか周囲は獣魔に囲まれていた。
「お前1人で大丈夫か?」
フッと煽る様にフェンリルが言う。
「まぁ見てろって……!」
そう言って両手をガキンと合わせると手首のバングルが一瞬にして炎を纏う紅蓮のグローブに顕現した。 これも当然魔道士に渡されたモノである。 本来の精獣の時の能力を多少なり使う事ができる───が、人に対してや悪事に使った場合己を焼き尽くすという恐ろしい縛りがある。 獣魔や下位精獣辺りに対してならば決して遅れをとることはない。
炎を纏ったイフリートを見て獣魔が一斉に怯んだ───アイツの勝ちだな……とフェンリルは悟り、膝の上ですやぁ寝るバハムートちゃんに眼差しを向ける。
「……もし───、もしバハムート様がこの姿に以前のようなお力を何一つもっていなかったとしたら……、わたくしは………」
空を仰ぐ……
「わたくしは生涯……身命を賭して、このお方をお護りしなくてはならないな────」
優しく頭を撫でるフェンリルの髪を巻き上げ、決意の様な1つの風が吹き抜けていった。
時刻はもうすぐ夕方である。御一行は中心地であろう場所の大きな岩壁の前に立っていた────そこには1つの紋章が刻まれていた。
「ほぅ、これはお主のかイフリート」
「あぁ、ここにコレがあればオレの縄張りって事で、勝手に悪さする獣魔も減るっしょ」
「うむ、よく考えたな───ところでコレ、どうやって刻んだのだ?」
まさか寝てる間に魔法のグローブで刻んだとも言えず、串焼き屋のおっちゃん達の話題をして逸らした。 今日の夜は報奨金使ってみんな呼んでパーティである。バハムートちゃんは昼寝もバッチリなので張り切って市街に帰って行った。
───賑やかな夜も更けて、その深夜は雨が降っていた……
イフリートがマーキングした所に漆黒の何かが近づいた……ドス黒い、何かが喋った。
「……コレ、知ってる。 イフリートのだ……」
その時、一瞬光ったと思ったら岩場は粉々に砕け散って、山は割れていた。
「……イフリートは確か、……バハムートが懇意にしていたな………」
漆黒の闇の中、眼光だけが妖しく光る……
「バハムート……殺してやるよ……」
既に“ソレ”はそこにはいなかった────




