episode8 探し人
「…これは…!」
ビラは、お尋ね者のビラだった。イエローが読み上げる。
「“ある事件の重要参考人の女性。金髪、金の瞳、白い肌。背は158センチ前後…。捕らえたものはすぐに帝国の施設まで。報酬を与える。”だと…?セイラの事じゃないか…。帝国が探してるのか…?重要参考人…?」
「昨日最後にフィークで姿を消したって、帝国兵達が探してるんすよ!家宅捜索が入るかも!」
「そりゃまずいな…。今、店番誰だ?」
「ダイです!」
「ユイカに変えろ。ヒナが戻ったらヒナにする。女のほうがいいだろう。」
「はい!」
しかし妙だ…。何で名前を出さないのだろう?マテリアルから逃げ出したのなら、わざわざ昨日の今日でビラを出した位なら、一刻も早く見つけたいのだろう。いっそ殺してしまったほうがマテリアルの秘密が漏れるのを防げる。だったら、凶悪犯にでも仕立て上げて生死不問にしたほうが効率はいいはず…。どういうことだ?
ピックが不安そうに言う。
「ウィン…。」
「俺が…責任は取る。放り出すわけには行かない。」
「だよな・・・うん。」
「イエローさん、何かあったんですか?」
店番をしていたダイが地下に降りてくた。
「緊急事態だ。家宅捜索が入るかもしれない!武器防具、火薬を隠せ。」
「マジっすか?!はい!すぐ取り掛かります!」
「もしも地下が見つかったときの対策も立てなきゃな…。くそ…。」
「計画はどうなる?」
「計画は実行する。ここまで練り上げた計画を無駄にしたくないからな。」
武器などを隠すのを手伝おうと動こうとしたとき、セイラが腕を掴んでいた。少し震えている。
「…私…ここにいないほうがいいのかな…?私を探してるって…私のこと、知っているのかな…?」
「…大丈夫だ。俺が責任を持って帝国の奴から君を守る。」
「守る?」
「そうだ。だから、安心していい。」
「…うん。ありがとう。私も手伝う!何かしたい!」
「じゃあ、武器防具を隠すから、こっちに。」
「はい!」
ピックがつーっと近寄ってくる。
「どうしたのぉ〜ウィンらしくもない…とうとう女に興味持ち出した?」
「そんなんじゃない。お前も手伝えよ。」
「任せとけーぃ!」
「おい、ウィン、ピック、ダイ、それが終わったら会議するぞ。」
イエローが声を上げた。俺達は作業に取り掛かる。武器庫から武器を持てるだけ持って…。
「…で、どこに隠すんだ?」
「あ、ウィン知らないんだっけ。ここ、下水道と繋がってるんだよ。上の道具やが通れないときの非常口ってわけ。でも使ったことないけどね。」
「そうなのか?下水道に隠すのか…どこから行くんだ?」
ダイはドアを開けて言う…。
「ここだよ。」
「ここって…トイレ…?」
「うん。トイレの床がさ…よいしょ」
俺達のアジトは、洞窟みたいで殆どが土と石の簡単な作りだ。トイレの床は土になっているがその土を掘り起こすと、鉄の扉が現れた。
「驚いたな。この辺りどうも臭うと思ってはいたんだ…」
「あははー。少しどぶくさいけど、仕方ないよね。俺もはじめ驚いたよ。でも始めて入るなぁ。セイラ気をつけて。」
ピックがへらへら笑う。俺達ははしごを伝って、下水道に降りていく…。確かにここなら見つからないだろう。その時…。なにやら嫌な気配が…。
「ダイ!!あぶない!」
「え?!」
俺は思わずダイの手を引っ張る…が、
「ぐわぁっ!!」
間に合わなかった。ダイの手には何かが噛み付いている…!
「ち、チルドレンだ!!」
「下水道に住み着いてるのか!!」
「ぐあああぁぁぁ!!と、取ってくれ!食い千切られる!!」
魚のようなチルドレンだが…8つの目、その口には鋭い牙がある。体には無数のトゲ。下水道から飛び跳ねてきた。俺はそいつのからだをつかむ。とげが手に刺さって、うまく掴めない…!!
「くそお!!」
「ウィン!こっちからも!!」
クソ…!!!!やられるか?!食いつかれるのを覚悟したとき、そいつを真っ二つに切り裂いたのは…セイラだった。ピックが目を丸くしている…
「ウッそん・・・。」
セイラの目つきが違う。俺も正直驚きながら持ってきた武器でダイの腕に食いついていたチルドレンをはがした。
「ク…。サンキュ…腕なくすところだ。」
「いや、重症だ。止血するから…おとなしくしてろ!ピック!油断するな!魚だけじゃない!!武器を取れ!」
「お、おう!」
俺はダイの腕を縛りながら、セイラの動きに驚いていた。セイラが持っているのは武器庫に偶然会った誰かの剣だ。それを軽々使いこなし、一撃でチルドレンの急所を切り裂いていく。凶悪な姿の魚が次々と飛び跳ねてくる。その傍から巨大化した鼠のチルドレン…。ピックは自分の武器を腕につける。ピックの武器は装着式のダガーソードだ。
「変な病原菌とか…持ってないことを祈るぜ!!」
しかし動きがすばやく、なかなか当たらない…そこをセイラが上から一刺しする。終わった…。セイラは鼠から剣を引き抜く…。ピックが驚きながらも息をつく。
「片付いたな…いや、セイラ、助かったよ。」
「ピック、ウィン、ダイ、大丈夫?」
目つきはいつものセイラの目だ。だが、チルドレンの返り血を浴びて、手が赤く染まっている。顔にも血がついている。ピックがセイラに少し脅えてるのが分かった。セイラはそんなピックに不思議な顔をしているが…。
「ああ…俺は大丈夫だ。でもダイが重症だ。上に連れて行こう。」
「つつ…」
「うわ、酷いなこりゃ。地下水路にチルドレンか…。非常口だってのに通るだけで命がけだな。ヒナが買出しまで戻ってくるからダイ、俺の荒い手当てで我慢してくれ。」
上に戻るとイエローがダイの手当てをする。ピックが傍で言う。
「鎖のネットでもないと、武器防具滅茶苦茶にされちまうぜ。」
「そうだよなぁ。しかもダイがこんな怪我しちまうとは…。お前らは大丈夫か?」
「俺達は無傷だよ。セイラが助けてくれたんだぜ。」
「セイラが?」
イエローがセイラを見る。そしてそのあと、俺を見る。
「本当だ。的確な動きで…。かなり訓練されてたんじゃないかな。」
やはりレッドアイのように、マテリアルで何かをされたのか…そうでなければあの反射神経や、出会ったとき見せたあの運動能力は…。
「そっか…やはり、ウィンの予想が当たってたてことか?」
「え、なにが?」
ピックは話についていけないでいる。
「分かった。ダイ。今回の計画はおとなしくしてろ。セイラを連れて行く。」
俺はつい大きな声を出した。
「何言ってる!今帝国に探されている張本人だぞ?!」
「戦力が足りない。一番適役じゃないか。俺達の存在を帝国の奴らにアピールできる機会でもある。」
「でも…」
「奴らが捜している女が、反対組織にいるんだぞ?これはチャンスかもしれないんだ。危険は元より承知の上だろ?しかも家宅捜索が入ったときに、セイラはいないほうがいい。やってくれるか?セイラ?」
「私…」
「ん?」
「それは…ウィンの為?」
「ん・・・。まあ。ウィンの為でもあるし、俺達のためでもあるな。」
「ウィンは私を助けてくれた。だから、私がウィンの役に立てるなら。」
「だ、そうだ。どうだい保護者さん。」
だれが保護者だ…。責任者じゃないのか…。
「セイラ、すまない。お願いしてもいいか?」
「はい!」
セイラはにっこりと答えた。
第6刑務所襲撃計画…殺されても仕方がないしテロを起こした俺達は掴まったらただじゃすまない。それでも俺達は何もせずにはいられなかった。セイラを帝国の施設に連れて行くことで、セイラの事が何か分かるかも知れないと思ったし、記憶が戻るかもしれないと思った。
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