episode7 セイラムの花
―レッドアイに選ばれたんだ・・・―
―待ち望んでいた時だぜ!・・・―
―また、先輩に会えるかな?・・・―
―いこうぜ、ウィン。・・・
・・・ここはどこだ?
もやが掛かったような、草原・・・。
レオが呼んでいる。先輩がいる。
「レオ!先輩!」
俺は追いかける。でも追いつかない・・・・。
「おい!待ってくれ!]
濃い霧の向こうに、白い建物が見えてきた。
あれは・・・マテリアル・・・!!!
レオ達が門の前で立ち止まった。
―ウィン、来いよ。
「レオ、先輩!だめだ、そこは!!」
きこえてないのか・・・?
「だめなんだ!!そこだけは・・・行くな!!そこはだめだってば!!」
届かない。
止められない。
白い建物の門の中に消えていく・・・。
「行くなーーー!!」
はぁ
はぁ
はぁ・・・ 夢・・・夢か・・・。
気がつくとそこは寝室だった。汗だくだ。くそ・・・何なんだ・・・昨日あんなことを思い出したら夢にまで現れた・・・。 ようやく寝付けたと思ったらこれか・・・。
隣にはすでに片付けられたベッドがある。ピックだけがその隣のベッドでぐーぐー寝ている。もう皆起きているのか。外出禁止とはいえ、俺だけ寝てるわけには行かないな。重い頭を抱えてベッドから降りた。
「随分遅いな、ウィン。」
食堂までいくと、偵察に出ていたリーダーのイエローが帰ってきていた。
「イエロー・・・。戻ってたのか。」
「おう。今日の朝飯は俺だぜ。早く食わないとなくなるぜー。」
「ああ・・・。」
自分の分を皿に盛り付けて椅子に掛ける。
「もうヒナから聞いているかもしれないが・・・」
「あの娘のことか?ああ、ヒナにさっき聞いたよ。で、帝国兵とバトったでお前は外出禁止。」
「・・・本当にすまなかった・・・。でも・・・」
「マテリアルの関係者かも・・・だろ?」
「・・・ああ。だから放って置けなくて・・・。」
「まあヒナが本当に記憶が無いといってるがな・・・。でも責任は拾い主にあるからな。一人分増えた生活費を狩りに勤しんで養ってくれ。」
「ああ・・・。」
「おはよう。遅いわね。今起きたの?」
ヒナが彼女を連れて朝食を持ってきた。イエローの前の椅子に掛ける。彼女はその隣に座る・・・。ちなみにヒナとイエローは恋人同士だ。今回の偵察の状況の話をしながら、俺は彼女の様子を伺っていた。きょろきょろ周りを気にしながら朝食を口に運んでいる。
「悪い、きのう寝付けなくて。」
「だめよちゃんと寝ないと。あ、イエロー。この子がそうよ。」
「初めましてー。えーと・・・」
「あ、そうね・・・名前が分からないのよね。不便だから・・・なんて呼ぼうか?」
「しっかし、話どおり変わっってるな〜。白いからシロちゃん?なんてな。金髪の金ちゃんじゃ何だし。」
おいおい、犬じゃあるまいし・・・。
「そんな決め方嫌よ。犬じゃないんだから。んーーーと・・・」
ヒナがしばらく黙って言った。
「セイラ」
「え?」
「セイラ。セイラがいいわ!」
「セイラ?何でまた。」
「あれ、セイラムでしょ?」
食堂の棚の上に花が飾られている。セイラムの花だ。メンバーの誰かが置いたのだろう。
「セイラか・・・いいんじゃないか?きれいな名前で。」
イエローが賛同する。そりゃシロや金よりはいいだろう。賛成しておこう。
「俺も、いいと思うよ。」
「じゃあ、決まりね。朝礼で皆に伝えるわ。ねえ、あなたはセイラよ。」
「セイラ?」
「そうよ、あなたの名前!」
「名前・・・。」
セイラはきょとんとしている。
「決まりだな。ここにいるからには何もさせないわけにはいけないから。落ち着いたらそのうち班を決めて働いていただくが。改めて、俺はウィッシュテールのリーダーのイエロー。俺の仕事は偵察、実行が主だからあまりいないかもしれないが、宜しくなセイラ。」
「そういうこと。改めて、ヒナよ。私は管理が主な仕事だけど、一応医療の心得があるから、具合が悪くなったら私のところに来てね。あと洋服は私のを貸してあげる。よろしく・・・。」
「・・・改めて、俺はウィン。実行と資金稼ぎが主だ。一応君の責任者になるから・・・。よろしく。」
セイラは少し恥ずかしそうに俺達を見てうなずいた。
食事の後の朝礼では今日のメンバーの行動を確認したりする。イエローが指揮をとる。
「今朝偵察から戻ってきた。例の件だが、帝国デッドパーク・・・。ここは帝国に反対運動を起こした同志が管理されている刑務所の一つ、第6刑務所がある。といっても、第6刑務所は軽犯罪者が入れられていて警備も新人の兵士が多く、帝国の施設の中でも手薄だ。初めの計画では、ここを襲撃して入れられた同志を解放しようと思っている。」
・・・確かに、新人の兵士は重要な任務には就かない。戦闘にも慣れてない・・・やりやすいだろう。俺はメモを話をまとめて取る。
「だからもう少し上を狙うことにした。第6刑務所を襲撃した後、帝国側が体制を整える前に一晩置いて連続で帝国イリュークの第4刑務所も襲撃する。結局は様子を見て判断することになるが、今回の計画はかなり危険を伴う。皆・・・。ついてきてくれるか?」
「当然っすよ!」
「何かしないと何もはじまらないんだ!」
「やってやろうぜ!」、
「ありがとう。それに向けて準備は万端にしておきたい。誰もが無事に戻ってこられるように。では早速、準備に取り掛かってくれ。火薬、武器防具ははなるべく質のいいものを頼む。俺とウィンとピック、ダイ、シースは実行班だから、ピックが昼、起きたら会議をする。あと、ウィンから話がある。」
「えーー、昨日いたメンバあしそうでーはすでに知ってると思うが、この・・・彼女が今日からメンバーに加わったセイラだ。といっても記憶がない。それはヒナが確認している。何も分からないと思うから、色々教えてやってほしい。」
少し皆がざわめく。かわいー、とか大丈夫なのか?とか・・・。
「じゃあ、みな各自動いてくれ!」
皆、それぞれの仕事に分かれて活動しだす。本当なら俺はチルドレンを狩りに行くのだが・・・今は外出禁止令でうごけない。しょうがない。何かすることは・・・。イエローに聞くか。
「それまで俺は何すればいい?」
「ん。ウィンは俺と一緒に武器防具の点検してくれ。」
「了解。」
・・・ん?何か突っかかるな・・・。と思ったら、セイラが俺の服の裾を掴んでじっと俺を見ていた。
「あ・・・まぁ・・・え〜と・・・。」
参ったな・・・責任者は俺か・・・。ヒナも買出しでいないし。教えてやってくれっていっても皆忙しそうだもんな。
「じゃあ・・・一緒に来て。」
セイラはこくんとうなづいて、後ろをついてくる。イエローが何だかニヤニヤ見てくる・・・。
「いいですなあ。お兄さん。」
何だよ・・・。
武器庫・・・そんなに豊富なわけではないが、コツコツ資金をやりくりして貯めてある。今度の計画のために、点検しておかなければならない。武器はそれぞれに合った使いやすいものを使う。あとは襲撃に使う火薬。これが高価な上に、まとめて買ったり、爆弾などを買うと目を付けられやすい。これは、買出しのメンバー・・・ヒナ達が遠くの街で燃料や業務用として細かく買ってくる。それを改良して爆薬に作り直す。こういう火薬の処理はピックが得意なんだよな。ああ見えて。
「刑務所は下っ端の兵士ばかりだが、油断は禁物だ。動きやすい鎖の羽織物を身につけたほうがいいな。」
「それにやっぱり火薬が足りてないな。」
「武器も今のうちに手入れしておかないと。出来るだけ磨いておこうか。」
「ん。じゃあ、セイラも。これで手伝ってくれるか?」
イエローが油の染みた布を手渡す。セイラが受け取る。
「これを磨くの?」
「ウィン、教えてやれよ」
「ああ。こうやって・・・。あ、そんなに油つけないで。そうそう。刃物系は俺達が研ぐから、そしたら磨いて。」
「はい。」
返事をしてくれるようになった。すこしは慣れてきてくれたか?
イエローと俺はせっせと剣を研ぎだした。チルドレンの体液でベタベタだ。酸性の強い奴もいて、手入れを怠ると溶けることもある。
「ウィンの剣か?これ。お前のは綺麗だな。」
「ああ・・・。剣だけは手入れをする習慣が抜けないんだ。そろそろもういいか・・・。セイラ、これ頼む。」
刃を研ぎ終わった剣を渡す・・・。セイラは剣を受け取ると、それをじっと見つめていた。
「セイラ?」
「・・・。」
何も答えずに磨きだす。何だ?しかし、ひやっとした。また逃げ出すと思った・・・。その時、武器庫の扉が勢いよく開く。
「おはよう!!良く寝て元気なピック様登場〜!」
寝起きなのにどんなテンションだ・・・。
「イエローお帰り!昨日夜番でさー。どうだった?」
「久々なのに相変わらずだなぁ〜お前。寝癖ひどいぞ。」
「あり?いいのいいの、寝癖さえかっこいいでしょ?俺ってば・・・って・・・おお!!おはようございまっす!」
ピックがセイラの顔を見て目を輝かせている。
「あ。ピック、セイラって呼ぶことにしたんだ。」
「セイラちゃーーん!!さすがに綺麗な名前だね!すごく合ってるよ!!うん!何なに?仕事手伝ってくれてるんだ!えらいね!さすがだね!んもう最高!何しててもチョー綺麗!!」
セイラの両手を握ってピックは盛り上がっている。セイラも困ってるし・・・。イエローが困ってるセイラの頭をぽん、と撫でた。
「ありがとう、って言えばいいんだよ。」
セイラは少し黙って言った。
「・・・?ピック・・・。ありがとう」
「どういたしまして〜!」
「そうそう。」
「ピック、まだ寝てていい時間じゃないのか?」
「こんな美女がいるのに寝てられるかー!さあ仕事しようぜ!!」
ピックが火薬の処理をし始め、仕事に戻る。
「ウィン・・・あれから少しは眠れたか?昨日は・・・その、ごめん。」
「いいよ。、気にするな。」
「ん。ありがと。」
「何だ?ウィン、ピックを振ったのか?男同士はさすがにな〜うん。残念だなピック」
イエローが茶化す。
「違〜う!!俺はストレートだ〜!!」
ピック、あれからそんなこと気にしてたのか・・・。こいつのほうこそあんまり寝てないんじゃないか?しかし、拾ってきたのは俺だっていうのに何も出来ないな。セイラに何か教えてやるのも面倒を見るのも年の功じゃないけどイエローやヒナは流石だ。俺は・・・俺が出来ることはどこにいてもあまり変わらないのかもしれない。戦うことだけだ。今も昔も・・・。
「ある程度終わったな。」
「ああ。さてと、ダイとシースを呼んで、一応計画を煮詰めるぞ。」
「じゃあ俺呼んでくるよー。」
ピックがドアを開けた瞬間、だれかの大きい声がした。
「い、イエロー!イエローさん!!」
何だ?!
「どうした?!何だ?!」
息を切らせたメンバーが戻ってきた!
「イエローさん・・・あの、やばいっす!!セイラさんが、あの、外、町の外!!」
「落ち着け!!!どうしたんだ!」
「す・・・すいません。外に帝国兵がいっぱいうろついていて・・・。」
「帝国兵が?何かあったのか?」
「それで、このビラが配られてて・・・。」
「ビラ?」
俺達はビラを覗き込んだ。
「・・・どういうことだ、これは・・・。」
ご覧いただいてありがとうございました!
ご意見・ご感想いただけましたら幸いです!
ブログもございますのでぜひご覧ください!
http://motherproject.blog.shinobi.jp/
応援よろしくお願い致します




