episode6 左目の痛み
その日の夜は、どうしても寝付けなかった。
ベッドで何時間も不毛な時間を過ごした後、水でも飲もうと思って、ベッドを立った。
食堂は静まり返っている。そりゃ皆寝てるよな・・・。
コップに水を汲んで、食堂の椅子に腰掛けた。ふう・・・。
彼女と会ったことで、色々なことを思い出す。
忘れてしまいたいこと・・・きっと多すぎるんだ・・・。
と、その時!誰かが後ろから手を回し、俺の目を塞ぐ。
「だ〜れ〜だ〜?」
この声・・・生暖かくてごつごつした手・・・。
「・・・ピックだろ」
「あれ?ばれちゃった?へっへー。」
ピックが手を離して笑った。
「そうか、お前が今日の当番か・・・。」
ウィッシュテールでは、夜中何があってもいいように最低一人は朝まで起きて見張りをする決まりだ。
「そうでーす。寂しくてよぉ〜ウィンが起きてるなんてラッキー♪」
「・・・そうかよ。」
「んー。・・・ウィン、寝付けないのか?」
「・・・ああ。何だか色々もやもやして・・・」
「まぁ、彼女のこととか色々今日はあったもんな。」
「そうだな。さっき寝室のカーテンから覗いたら、何にもなかったような顔して寝てたよ。」
「そっか・・・。」
「ああ・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
しばらく沈黙が続いた。?ピックが黙るなんて珍しい・・・。
「なぁ・・・。ウィン・・・聞いてもいいかな?」
「何だよ」
「い、いや、言いたくないことならいいんだけど、さ。」
「何だよ気持ち悪い。」
「あの・・・さ、今日、国立研究所・・・マテリアルがどうとか言ってたけど・・・。」
「・・・。」
「ウィンの左目って・・・。やっぱり“レッドアイ”なのか?」
「・・・一応・・・な。」
「まじで?!やっぱりそうだよな!すげえな!元“レッドアイ”って本当だったのか!」
「・・・すごい・・・?これが・・・?」
そう、でも確かに俺は帝国の兵士だった・・・。
この目は・・・俺が忘れてはならないこと。
俺に与えられた・・・。烙印のようなものだ・・・。
俺は昔から国を守って戦う兵士に憧れていた。傭兵学校を卒業した俺は、迷わず帝国の兵士になった。戦、戦の日々だったけど、ただ俺は誰かのためになっていると思っていたし、誰よりも強くなりたいと思っていた。
帝国の兵士の中でも憧れの的は、最強戦闘部隊「レッドアイ軍」。彼らは多くの帝国の兵士の中から、戦闘能力を認められた、選ばれたものだけがなれる部隊。数ある部隊の中でも最強と呼ばれ、高い地位と名誉が与えられる。選ばれた兵士は国際研究所マテリアルで、最強の戦士となるべく手術を受ける。そこで手術をうけた兵士はその証に瞳が真紅となり、レッドアイ軍で活躍する・・・。
それはそう8年前、俺は帝国の兵士だった・・・。
「お疲れさまー。」
「お疲れー。」
「ウィン、お疲れ!!」
「よおレオ。お疲れだな。」
「でもここの所見回りと警備ばかりだからな。体がなまるぜ。」
「まったくだな。まぁ、戦がないってことは平和だって事だ。」
「戦がないってことは俺達が活躍する場所がないって事だろ!まあいいや・・・。なぁなぁ、それよりこれ見てくれよ!」
「お、今日の新聞・・・。あ、“レッドアイ”の特集か!なになに・・・。“レッドアイ軍、サリー軍に完全勝利!サリー国帝国の領地に”」
「まぁ見ろよ、ウィン、ここ、ここ!」
「あ、バリー先輩!!すっごい大きく載ってるじゃん!やっぱり目赤くなってるよ。かっこいいなー。そっか、もう前線で戦われているんだな・・・。」
「すごいよな。こんなに大きく載って。“最強部隊レッドアイ軍の戦士達の戦場”だってさ。」
「すごいな・・・。そういえば、バリウス先輩もレッドアイ部隊に選抜されていたよな。」
「確か・・・そうだったな。でも載ってないぞ。」
「やっぱり成績によって新聞に載るとか載らないとか決まるのかもな」
「そうなのかもな・・・。」
「もう一度飲みに行きたいな・・・先輩と。」
「ウィン仲良かったもんな。忙しいんだろうよ。だってレッドアイになったら家族さえ連絡取れないって言うぜ。」
「ああ・・・。でも絶対俺はレッドアイになってやるぜ!!」
「俺もだ!!よし、ウィンこれから非番だろ?!」
「おう!やるか!!」
「日ごろの鍛錬がモノを言うんだぜ!!!」
「じゃあ腹筋300回な、とりあえず!」
「きっついなー!よっしゃーー!!」
・・・俺達は、毎日訓練を欠かさなかった。
ひたすら英雄になりたくて、レッドアイになりたくて・・・。
―その4年後・・・
「ではレッドアイ軍選抜者の名前を発表する!」
「はい!!」
「セントシティ部隊、イグ! ―はい!
アリアス部隊、ティマ! ―はい!
ランドマーク部隊、ウィン! ―はい!
同じくランドマーク部隊、レオ! ―はい!
以上四名のものは、本日を以て各部隊を利隊し、明日の7時、国立研究所マテリアルに向かう!
彼らに敬意と名誉を!」
―ドクン ドクン ドクン―
選ばれた、喜びは束の間だった。
―ドクン ドクン ドクン―
『うわあああああああああああーーーーーーーーー!!!!!!!!』
俺は激痛が走る体で転げ回った。
ただ痛みに耐え切れず叫んでいた
全身が焼けるように熱かった。
左目が取れて落ちるかと思った。
『あああああああ・・・・・!!
れ、レオ!!レオ・・・・・』
そこに、レオはいなかった。そこにいたのは・・・レオじゃなかった。
「―おい、ウィン!ウィン!大丈夫か?!」
ピックの声で俺ははっと我に帰った。
「あ、わ、悪い。ボーっとしちまって。」
「すごい汗だぞ・・・。顔色も悪いし。」
「・・・すまない。大丈夫だ。」
動機が治まらない。左目が酷く熱く、痛んだ。
「ごめん。俺がへんなこと聞いたからかな・・・?」
「・・・お前のせいじゃない。気にするな。嫌なことを・・・思い出しただけだ。今日は・・・悪いな。」
「・・・。ごめん・・・。」
ピックが申し訳なさそうに席を立った。
「いつか・・・話すよ。俺もお前がここに来た理由とか・・・聞いてなかったし。」
ピックが振り向いて言う。
「ありがと・・・。」
ピックは少し、レオに似ている。顔とかじゃなくて・・・雰囲気が。
動機と震えが止まらない・・・。
そう・・・きっと忘れたいことは多すぎる・・・。
忘れてしまえたなら楽になるんだろうか・・・彼女のように。
それでも忘れてはいけないんだ・・・あの全てを、この目に焼き付けておかないといけない。
そうじゃなきゃきっと生きていけない。こんなガラクタみたいな体を抱えて・・・。
だから、忘れるわけにはいかないんだ。
俺はコップの中の水を一気に飲みこんだ。
ドクン、ドクン、ドクン・・・。
忘れたい記憶から逃げるわけには、いかない・・・。
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