episode14 カームウォンツ
黄色い少し肩にかかるくらいの髪。見慣れた横顔。その男は荷物を片手にメンバーと何やら話していた・・・。近寄ると、それはやはりイエローだった。
「イエロー?!」
「!!ウィン!セイラも!無事だったのか!」
プラインがニッと笑った。
「やっぱりイエローの知り合い?ウィッシュテールって言ってたからさ。」
「おお、ありがとうな。プライン。」
イエローの知り合いだったのか。
「あなた達も会えて良かったわね。じゃあ何かあったら言って。」
「ありがとう。」
俺はプラインにお礼を言った。
「ふふ、どーも。じゃあね。」
プラインはそう笑って、奥のほうに歩いて行った。
「イエロー・・・良かった。もうだめかと・・・」
そんな場合でもないが、俺は少し気が抜けた気がした。
「俺のほうこそだ。俺以外全員だめかと思ってたぜ。お前ら、どうやって助かったんだ?」
「俺達は、帝国の飛行機に乗って・・・途中で海に落ちてしまったが。人に拾われたんだ。」
「運が良かったな。海に落ちたのも。地上なら命が無かったぜ。セイラも、な。」
「イエローは?探してたんだ。」
「俺は、帝国兵に塔の上で囲まれちまってな。」
「って・・・大丈夫だったのか?大丈夫そうだけど。」
「まぁな。捕まったんだけど、鍵を壊したところの囚人が助けてくれたんだ。」
「囚人が・・・?イエローも運が良かったな。」
「お互い様だ。それで、その時助けてくれたのが・・・おい、ジョイン。」
さっきイエローと話していたメンバーだ。40歳くらい・・・だろうか。髭を生やしっぱなしで、服もボロボロ。何だかその辺にいそうなおっさんだよな・・・。
「この、ジョインがそうだ。もともとジョインは捕まる前は、ここのメンバーだったんだ。俺の顔を知っていたらしく助けてくれたんだ。ジョイン、これがうちのウィッシュテールのメンバーのウィンとセイラだ。」
「よろしくな。ありがとよ。助かったぜ。」
ジョインは手を伸ばす。俺も合わせて手を出した。セイラも習って手を出す。ジョインが俺を見て言った。
「あれ?あんた、その目レッドアイか?」
「・・・まあな。」
「こっちの姉ちゃんは金の目か。変わってるなあ、あんたら」。」
複雑な気持ちで握手した手に、ジョインからのギュッと力がこめられた。セイラはどうしていいか分からないみたいだったが、ジョインが勝手に手を握っていた。握手が初めてなのか?そう言えば、アジトではしなかったっけな・・・。
「握手だよ」
「・・・あくしゅ?」
セイラが俺の顔を見た。
「ああ、よろしくってことだな。」
「・・・。」
握手した手をセイラが不思議そうに、じっと見直していた。
そこで、イエローが話を戻す。
「俺はジョインのおかげで、カームウォンツのメンバーに連絡を取ってIDを手に入れられたが・・・お前らはわざわざリフース山を登ってきたんだろ?お疲れ様だったな。」
「そういえば、途中で変な奴がいて・・・。一応帝国の奴らみたいだったが・・・」
そういえば、あいつらチルドレンを調べていた・・・。フィリークで会ったテディって奴の腕についていたチルドレン・・・。帝国は・・・マテリアルはチルドレンを兵器として使うつもりなのだろうか・・・?それとももう前線では使われているのだろうか?
「帝国兵ぃ?!何で山にいたんだ?とにかく災難だったな。大丈夫だったか?」
チルドレンの事は・・・言わないでおこう。まだそうだと決まったわけではないしな・・・。
「兵ではないみたいだったから大丈夫だ。ところでイエロー、フィークの話は聞いてる・・・よな?」
「そう、今話そうとしてたんだ。知ってるなら話が早いな。」
「ああ。新聞で見て知った。ちょっと、やばいな・・・。」
「かなり本格的に調べているようだ。」
「早くフィークに行ってみんなを助けないと。」
「ったく・・・完全封鎖だもんな。・・ここまでやるか?帝国のクソ野郎が!!」
イエローがちっと舌打ちする。
「よお!戻ったぜ!」
その時入り口からスキンヘッドの男が降りてきた。30半ばくらいだろうか?随分背が高くて、ゴツイ体をしている。真っ赤なタンクトップなんか着てるから何だかチンピラみたいだな。こいつもメンバーか・・・?
「ブレイブ!!」
イエローがその男に話しかけた。またイエローの知り合いか。さすがリーダー、顔が広いな・・・。
「よおイエロー、久しぶりだなぁ〜〜!!お前が着てるって聞いてよ。急いで戻ったぜ。」
「ああ。悪いな。今回の件は・・・済まなかった。」
「・・・大変だったろう。」
そう言ってイエローの肩をポン、と叩く。もう事情が伝わっているらしい。
「ウィン、セイラ。カームウォンツのリーダーのブレイブだ。」
「お世話になってます。ウィンです。」
セイラも黙って頭を下げた。
「おお、よろしく。いや〜こんな場所には似合わない綺麗なオネーチャンだな。おっと、プラインに聞こえちまうかな?」
「・・・・・。」
「・・・あれ?ちょっと緊張しちゃったか?はっはっは。」
セイラが真顔でブレイブを見つめている。笑ってやれよ・・・。ブレイブも少し気まずそうじゃないか・・・。イエローが話を切り替えたから良かった。
「ブレイブ。フィークに帝国が入っている。アジトの仲間を助けたいんだ。迷惑を掛ける・・・」
「困った時はお互い様だってな。」
「・・・すまないな。」
「誰もお前を責めんさ。・・・そう言えば、あいつは一緒じゃないのか?何ていったか・・・?ほら、あの元気な。オレンジの髪のツンツン頭。」
「・・・オレンジって・・・。ピックか?」
「そうそう。あいつ。ピックだよ。」
「ピックは・・・。ウィン、ピックとシースとはどうなったんだ?」
「・・・。」
俺は黙って首を振った。イエローはブレイブに言う。
「そうか・・・。あいつらとはフィリークではぐれたままなんだ・・・。」
「無事だといいな。」
「ああ・・・。」
「まあ、俺達のできることなら何でもしてやるつもりだが・・・。とにかく、早くどうするか手順を決めるんだな。こっとへ。」
ブレイブは俺達をアジトの奥に案内した。ウィッシュテールよりもメンバーも多けりゃさすがに広いな。宿屋の地下深くを掘って使ってるのか・・・。ちゃんとした立派な木製の建物だ。俺達のアジトは壁も床も土か石だし、ここみたいにきちんとした建物ではないが・・・何となく、雰囲気が似ていた。キッチンや食堂、いくつか分けられた部屋・・・。ブレイブはその小部屋の一つのドアを開けた。小さな部屋だがベッドが四つ、テーブルと椅子が置いてあった。
「この部屋を使おう。少し狭いが。」
「十分だ。サンキュな。」
それぞれ椅子に腰を掛ける。ようやく落ち着いて座ることが出来た・・・。もうセイラもぐったりしている。そりゃそうだよな。ハリヤ村から休んだといえば山の中で湧き水を飲んだ時くらいか。足がじんじんする。
「そういえばウィン、お前ここの場所やパスワード、良く分かったな。」
「ああ・・・前、ヒナが言っていたんだ。合言葉“店長を出せ”だろ?笑ったよ。」
「ブレイブが考えたんだよな。」
「おう。いちおう店長は俺だからな。」
ブレイブが笑う。
「しかし・・・イエロー、ここは何となくウィッシュテールに似てるな。」
「俺も元カームウォンツにいたからな・・・。ブレイブには本当に世話になった。」
「お前が新しく組織を作るってときは驚いたけどな。」
「・・・お世話になりましたってば。まぁ、そういうこと。カームウォンツを手本にウィッシュテールを作ったんだ。作りは一緒だろ?」
なるほど。確かに似てると思った。フィークのアジトの雛形だってわけか。それにイエローがここに知り合いが多いわけだな・・・。
「さて、早速本題に入るか。」
「といっても、実際の情報が入ってこないからな。とにかくフィークに行って状況を見るしかないだろ。」
「ああ。港は今封鎖されてるんだぞ?どうすれば・・・。」
俺は地図を開く。ここは内陸だが・・・。
「ここからは近くに川があっただろ?あそこから出て海を越えなければならない。小さめの舟を手配できればな・・・。」
「ブレイブ・・・出来るか?」
イエローがブレイブに言う。ブレイブが顔をしかめ、顔を上に向けた。
「んーーーと、舟ねえ・・。出来ないことはないが、メンバーはどれくらいいるんだ?」
「そこまで多くない。俺達を合わせて全員で12人だ。」
「12人か。了解。」
ブレイブがメモを取る。
「それで向こうに渡れたとしても、どうやって町に入るんだ?」
「正面から奇襲・・・出来ればしたくないな。」
「地下水路からあいつらもう脱出してたりしてな」
確かに下水道からなら、直接外に出れるらしいが・・・。
「チルドレンが住み着いていた。あの状況では残りのメンバーだけじゃ危険だ。」
「でも、そこしかないな。やっぱり。」
「・・・ああ。それでいこう。」
ブレイブがメモを止める。
「それでまとまったのか?あんまり書くこともねえなあ。」
「・・・簡単な計画だが。下水道から責める。それがだめなら正面からいくしかない。」
「よし、じゃあ、とりあえずは決まりだな・・・。後は状況を見て・・・って感じか。大人数で行くわけに行かないが、俺とうちのメンバーも何人か連れて行く。舟の準備に少し時間をもらうぜ。」
「ありがとうございます。」
「悪いな。ブレイブ。」
ブレイブが立ち上がる。椅子から座って見上げるとかなり大きく見える。
「ああ。任せとけ!お前らは飯を食って風呂に入れ!そして寝ろ!」
・・・そういうわけにも行かないだろう。
「いや、俺も手伝います。何かすることはありますか?」
「山越えてきて疲れてるんだろ?いいから休んでおけ。」
「いや、でもそういうわけには。」
「年上の言うことは聞いておきな。兄ちゃん。」
何か申し訳ないが・・・甘えておくか。正直ありがたい。もう疲れて・・・。くたくただ・・・。
「・・・すいません。ではお言葉に甘えて・・・。」
ブレイブがにっこりと笑い、部屋のドアから大きな声を上げた。
「よし。おーい、プライン!飯余ってるだろ!イエロー達に出してやってくれ!」
「は〜〜い!!ちょっと待ってよね〜!!」
「じゃあ、ちょっと待ってな。」
そう言ってブレイブは部屋から出て行った。
こんなでかい声出して平気なのか・・・?宿屋だろう?泊まっている客もいるんじゃないのか?
「おい、イエロー・・声大丈夫なのか?」
俺はイエローにこっそり尋ねてみた。すると、イエローは自身ありげに
「入り口の階段、かなり長かっただろ?ここは予想以上に深く掘ってあるんだ。防音効果はかなりのもんだ。」
俺は天井を見上げて、へえ、と感心した。
部屋のドアが開くとプラインが食事を運んできてくれた。
「はい。お待たせー。余りもので悪いけど、いっぱい食べてよねー。あと、お風呂も沸いてるから。場所はイエローに聞いてね。」
プラインは少し気の抜けた話し方で、おしゃべりしながら料理を並べた。すると、テーブルがあっという間に食べ物でいっぱいになった。パンに肉にスープに果物・・・。余りものって・・・ブレイブの気遣いか。
「ありがたく頂戴しようぜ。プライン、サンキュ。」
「いただきます。」
セイラも真似て言った。
「・・・いただきます。」
俺達は腹ペコだったので、その食事をすごい勢いで、あっというまに平らげた。味も量も十分だった。その後、それぞれ風呂に入ってそのままベッドに入った。
「明り、消すぞ。」
「ああ。」
俺は酷く疲れていたけどしばらく寝付けなかった。
奇妙なチルドレン・・・。チルドレンの触手を素手で引きちぎった・・・俺の体。あんな力がどこから出たんだ?それにあんな激しい発作も初めてだ・・・。モリス医師に言われたボッシュのこと・・・セイラの記憶の事。そして、フィークのこれだけ大規模な閉鎖・・・。
何かが少しずつ変わり始めてるんじゃないだろうか・・・。そう、セイラと出会ってから・・・急に目まぐるしく・・・。
ふっと目を開ける。時計を見るともう朝だ。あのままいつの間にか、眠っていたらしい・・・。地下は光が入らないせいか寝起きが悪い。だるい体を起こして、首を回すと、ゴキゴキと鳴る。隣をふと見ると、イエローがもう目を覚ましていた。
「イエロー・・・起きてたのか。」
「ああ・・・。」
「まさか、寝てないのか?」
「寝付けなくて。起きようぜ。」
そう言うとイエローはベッドから降り、部屋を出て行った。イエローが・・・一番不安なんだ。俺もベッドを降りる。ふとセイラを見るとまだすやすや眠っていた。もう起こすか・・・。
「セイラ、起きろ。」
「ん・・・。」
こうして俺達は着替えて、食事を取っていた。すると、ブレイブのでかい声が響いた。
「おい!舟の準備が出来たぞ!町の外に来い!!」
いそいで食事を胃にかっ込む。
「いくぞ!!」
長い階段を登り、町を出る。近くを流れる川岸には小さな舟が2つ繋いであった。ブレイブが自信満々に言う。
「どうだ!どうみても釣り人の舟にしか見えないだろ!」
「そうだな。これなら沖に止めてあっても、見過ごされそうだ。」
「まぁ、本当に釣り用の舟だからな。改造してあるから実は結構早いんだぜ。」
本当に釣り用の船かよ・・・。どこから持ってきたんだか。
ん?船にもう誰か乗っている・・・。色黒でパーマの掛かったブラウンの髪。少し濃い目の化粧と露出の多い服・・・。それはプラインだった。
「どーも。よろしくねー。」
おいおい、大丈夫かよ・・・。という顔をしていたら、イエローが後ろから肩をたたいた。
「心配するなよ、プラインはやり手だぜ。」
プラインが不満そうに口を尖らせて言った。
「なによー?あたしじゃ不安だってのー?」
「い、いや。ありがとう。助かるよ。」
イエローがそう言うんなら、な。もうひとつの船にはジョインが乗っていた。
「助けてもらったからな。俺も手伝うぜ。」
ブレイブが声を張り上げる。
「さあ乗った乗った!フィークまで飛ばすぜ!!!」
俺達が舟に乗り込むと、ブレイブはすぐに舟を動かす。改造してるのは本当らしい。見た目の割りにかなりのスピードで、舟は川を下っていった。




