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episode13 歩き続けて

俺は、話し終わったときモリスの顔を見ないようにしていた。レッドアイへの「改造」。あれは奴らの話も合わせて成功率は50パーセントだ・・・。それに、もし成功したとしても・・・。


 「・・・息子は・・・それじゃやはり・・・」 

 「・・・もう・・・。」

 ―戻ることはないだろう。

 「・・・・。分かっていたんじゃ・・・。もう、息子は戻らないと・・・。親思いの・・・いい子じゃった。」

 「モリスさん・・・。」

 セイラは涙目になって顔を伏せた。俺はなんて言っていいか分からなくて、黙っていた。 

 「すいませんでした・・・。知らないほうが・・・」

 すると、モリスが顔を上げる。

 「・・・いや、教えて欲しいと頼んだのはわしじゃ。それに本当の事が分かってよかった。そう。よかったんじゃ。」

  「しかし、お主は大変じゃな・・・」

 「・・・治すことは、出来るんでしょうか?」

 「何とも言えんな・・・。」

 「やはりそうですか・・・。」

 モリスが立ち上がって、棚をがさがさとして何かを取り出す。それを俺の手に乗せた。それは紙に包まれた薬だった。

 「一応お主が持っていた薬を処方しよう。」

 「ありがとうございます・・・これは?」

 渡された薬は2種類で、俺が持っていたのとはまた色の違う薬だ。


 「それとまた違う種類の・・・。薬は一種類だけではない。一番体に合うものが見つかればいいんじゃが。機会があったら、ボッシュに行って見なさい。」

 「・・ありがとうございます。ボッシュ・・・一度行こうとは思っているのですが・・・。」

 「あそこなら医療が発達している。」

 「分かりました。」

 「それと、そう簡単には入れないが・・・。マテリアルで打たれたその薬の正体が分かれば・・・。」

 「・・・治るんですか?」

 「確かなことは言えないが・・・。」 

 やはり、マテリアルに行く必要があるのか・・・。俺はもらった薬をしっかりとしまった。


 「完全に治りはしなくても今よりはいい治療はできるだろう。何だかんだ言っても、マテリアルは最先端の技術を持っている。・・・世間には公に出来ないような技術もな。お主や、私の息子もその犠牲者じゃ・・・。」

 「政府は今もその犠牲を出し続けている。俺は・・・それが許せない。」

 「昨日のイリュークで起きたテロというのは、おぬし達が・・・?」 

 「・・・通報しないんですか?」

 「・・・せんよ。帝国に皆従っているのは恐ろしいからじゃ。誰もが力で従わされている。」

 「ありがとう・・・ございます。」

 「礼を言うはわしの方じゃ。お主達のようなものがいなかったら、帝国の勢いは増すばかりであろう。わしは息子をそんな目に合わされた帝国が・・・憎くてたまらん。しかしこの老いぼれに何が出来るじゃろう。」

 そう言って、モリスは頭を下げた。 

 ―それでも俺は、人をたくさん殺してきた。

 

 「彼女もこの回復力は・・・マテリアルから?お主のような肉体的な障害は無いようだが。」

 「・・・彼女は記憶が無いんです。」

 モリスがセイラに尋ねる。

 「記憶が・・・?何もか?」

 「・・・覚えてない。」

 「何でもいい。何か・・・」

 「あ。・・・でも・・・」

 「でも?」

 「何だか・・この村は懐かしいような気がする。」

 「ふむ。記憶を失くす前に住んでいた場所と似てるのかもしれんな。頭痛はせんか?」

 モリスがセイラに色々と質問をしている。質問が落ち着いた後、俺はモリスに尋ねてみた。

 「結局・・・記憶喪失というのは、治るんでしょうか?」 

 「治ることもあるが、治らないこともある・・・。精神的なものもあるのかもしれんな。」

 セイラが少し間を置いて、言った。

 「・・・それでも、私は私を知りたい。」

 セイラは俺の目をしっかりと言った。

 「・・・大丈夫。戻るさ。一緒に探そう。」 


 何にも考えていないかと思っていたが、セイラは、不安なのかもしれない。そうだよな。いきなり知らない奴に拾われて、知らない奴らに狙われて。

 ―それに本当の事が分かってよかった。そう。よかったんじゃ―モリスはそう言った。

 それがどんなに辛いことでも、知らないよりは知ったほううがいいのか?

  忘れてしまいたいことは多すぎる。それは、きっと俺だけじゃない・・・誰もがそうなんだろう。でも全てを忘れてしまうということは酷く恐ろしいことなのかもしれない。例え思い出すことで酷く傷ついても、何かを失ってしまっても、記憶は必要なものなのかもしれない・・・。



 診療所を後にし、俺達はモリスから道を聞いて村の郵便屋まで歩いてきた。村には若者の姿は殆どなく、かなりの田舎だ。海沿いだからか、そこだけはフィークと一緒で少し潮のにおいがする。

 俺は荷物を見た。といっても大したものは持ってきていなかった。海に落ちた時にだめになった爆弾の残骸。ボロボロになった服。剣が無事だっただけましか・・・。セイラが診療所を振り返りながら言う。

 「・・・いい人だったね。モリスさん。」

 「そうだな。アジトに連絡を取らないと。」


 ハリヤ村・・・。俺は場所も分からなかったが地図を見る。フィークに戻るには海を越えなければならない。まぁ、幸いフィークは港町だ。船賃さえ手に入れられれば、時間は掛かるが戻れるだろう。、まずは、ウィッシュテールの皆に無事を伝えないと。・・・多分あの状況で俺達が生きてるとは思わないだろうな。俺はそんなことを考えながら郵便屋に入った。 

 入ると、受付の若い男がすぐに話しかけてきた。この村で初めて見る。

 「ご用件は?」

 「電報を頼む。」

 「はい。どちらに?」

 「フィークまで。」

 「あ〜お客さん、すいませんね。今フィークの方には電報打てないんですよ。」

 「・・・?どういうことだ?」

 「テロが起こったのご存知でしょう?デットパークとイリュークで。そのテロリストがフィークに潜伏しているらしくてね。今はフィークを中心にあっちのほうには電報、配達、連絡が一切出来ないんだよ。」

 「・・・!!」

 「不便だよねぇ。私も両親があっちにいるから心配でね。」

 「・・・。新聞はあるか?」

 俺は新聞を買って黙って郵便屋を出た。俺はそれを見て愕然とした。

 「・・冗談じゃないぜ・・・。」

 完全にフィークは閉鎖されている。港も今は出入り禁止・・・。それどころかフィーク周辺の町も出入り禁止か・・・。どこからばれたんだ?それにここまで政府がやるとは。最悪だ・・・。

 

 「ウィン、どういうこと?ヒナ達は・・・・。」

 セイラも状況を読んでか、青ざめた顔で尋ねた。

 「今は、正規のルートではフィークには戻れない・・・。」

 「どうしよう・・・。」

 どうする?と言っても俺達が今出来ることは・・・。俺は地図を見直した。

 「ウィッシュテールだけが反政府組織ではない・・・。同盟を組んでいる組織に協力を求めるしかないな。」

 「西だ。リグレットの街には同盟組織、カームウォンツがある。」

 「そこに行くの?」

 「今はそれしかない。行こう。」

 

 俺は地図を握り締めて、そのまま村の出口に向かった。急がなければ・・・。イエロー、ピック、ヒナ・・・みんな無事でいてくれているだろうか?ハリヤ村を後にする。セイラが小さくなっていく村を振り返った。

 「・・?」

 セイラは記憶を失くす前にこんな村にいたのだろうか?ではマテリアルには・・・いなかったのだろうか?

 「行こう。」

 

  リグレットに行くには、ちょうど手前にあるリフース山を越える必要があった。本当は簡単に行ける道があるのだが、帝国の検問があるのだが・・・IDなんて持ってきているわけがないから通れない・・・と言っても、俺は4年前に死んだことになっているのでIDは偽造だった。

 リフース山・・・。昔は使われていたらしいが今使うような奴は滅多にいないということだ。セイラは剣を収容所に落としてきたらしく丸腰だ。何かあったら俺が全てカバーしなくてはならない。

 覚悟はしてきたが、チルドレンがあまりいなかったのは救いだな・・・。いないわけではないが獰猛なものは殆どいない。

 「ウィン、大丈夫?」

 「ああ。俺はいいから足元に気をつけろ。」

 リフース山は本当に綺麗な山だった。帝国の本部に近いところは殆ど自然なんてない。その分発達はしているが、どこか息苦しいのだ。湧き水も綺麗で、休憩するのには丁度いい。

 「少し休むか。」

 「うん!」

 湧き水を飲んで、大きな岩に腰を降ろす。さすがに疲れるな・・・。

 「セイラ、伏せろ!」

 セイラを岩陰に隠れさせた。人影が二人見えたのだ。今はあまり使われない山だと聞いたが・・・。こんなところで何してるんだ?隠れて様子を見る。何やら話し声が聞こえてきた。

 「・・・それで・・・・このあたりは凶悪なのは繁殖していないですね。」

 「ああ。小さなのはいくらかいるが、影響は薄い・・・と。こんなもんか。」

 「先輩、早く帰りましょうよ・・・。本当に平和な山じゃないですか。何にも出てきませんよ。」

 俺は少し身を乗り出した。奴らの手に持っている資料を覗く。・・・チルドレン・・・生息・・・種類・・・?こいつらチルドレンの事を調べているのか・・・? 

 「ん?おい、ちょっとお前!」

 気づかれた・・・。前に出すぎたか・・・。

 「っと・・・何だ?」

 「何だ貴様は?こんなところで何をしているんだ?」

 「ピクニック・・・かな。」

 「・・・。ピクニック・・。一人でか?」

 「・・・ああ。」

 ・・・何か言おうと思って言ったが・・ちょっと苦しい言い訳だっな・・・。

 「検問を逃れて山を越えようとする奴がいるからな。貴様リグレットに行くのか?」

 「まさか。ただのピクニックさ。」

 「ほう。ではIDを見せてもらおうか。」

 「ピクニックに来るのにIDなんて持って来ないだろ?」

 「では、名前と市民番号を言ってもらおうか。」

 やはり政府のものか。仕方ないな・・・。

 「どうした?言えないか?・・・やはり山越えだろう!!」

 あまり騒ぎは起こしたくないんだが仕方が無い・・・!俺は剣を抜いた。

 「おっと!貴様!やる気か?!」

 「悪いが、通してもらう!」


 俺は剣を抜いて奴の足を狙うが、そいつも剣を抜いた。二つがぶつかって金属音が鳴る。その音に、鳥が音を立てて羽ばたいた。こいつは・・・兵ではないみたいだな・・。力も強くない。奴が持ってるのは、何だか初めて見るような剣だ。幅は結構な幅があるのだがかなり薄く出来ていて、何だか包丁みたいだ。しかしその剣の柄にはしっかりと帝国の紋章が刻まれていた。俺が剣を見切って一気に剣を降ろそうとした時、

 

 「貴様、待て!!」

 後ろからもう一人の男の声がする。あの二人組の“先輩”の方だ。セイラが見つかった・・・!

 「!きゃ・・・!!」

 「・・・お前!!手配書の女だな!!」

 男が逃げられないようにセイラの髪をしっかりとつかんだ。

 「お前、やめろ!」


 俺は振り下ろそうとしていた剣を引いて、“先輩”のほうに向かおうとした。するとやつが後ろから剣を振った。

 「よそ見している余裕があるのかな?」

 「・・・引っ込んでな!!」

 俺は奴の手を狙って剣を振った。

 「って!!」

 奴が持っていた変わった剣が落ちる。その剣を拾い、セイラのほうに投げた。

 

 「!!」

 “先輩”が妨害しようとしたが、それをセイラはしっかりと受け取り、そしてそのままセイラは剣を振った。それは“先輩”の手を傷つけた。その手を押さえながら奴が言う。

 「くっ!貴様ら・・・!!」

 「先輩、ちょっと・・・無理ですよ!・・・ここは引きましょうよ!帰りましょう!」

 「そうだな・・・ちょっと手に負えん!!」

  

 「待て!!」

 弱いが、逃げ足は速いな・・・。そいつらは逃げることを決めると一目散に山を走り降りていった。しかし何故チルドレンを調べていたんだ・・・?

 「何なんだあいつら・・?セイラ、大丈夫か?」

 「うん。ありがとう。この剣・・・。もらってもいいのかな?」

 セイラはその変わった剣を握ったまま聞く。

 「ああ・・・。まぁ、変わってる剣だけど・・・いいんじゃないか?」


 俺達はそのまま山を降りた。どんどん空が暗くなってきていた。

 「まずいな・・・。夜になると、道が分からなくなる。あいつらが邪魔しなきゃもうちょっと早く着けていたかもしれないのにな・・・。それに、夜型のチルドレンが活動し始めるかもしれない。」

 その時、セイラが言った。

 「ウィン、明りが見えるよ!」

 「あれは・・・リグレットだ!!」

 山の上からは街の明りが見えた。この辺りで大きな街はリグレットくらいだ・・・間違いないだろう!

 「よし!助かった!!降りよう!!」

 

 ―そうして、俺達は急いで山を降りていった。幸いそれから変な奴にもチルドレンにも出くわすことはなく、リグレットに着いた頃には夜になっていた。

 「ここがリグレットだ。」

 「ようやく着いたね。すごい大きな町だね。」

 「ここらへんはリグレットしか町はないからな。人が集中するんだ。人も多く、商業も盛んだが俺は初めてだな。まあ食物の種類は港町のフィークには負けるがな。」

 「ふうん。」

 町の奥に進む。もう夜だったから店は殆どしまっている。俺もセイラももうヘトヘトだ。俺はそのまま宿に入る。町の中でも大きな宿だ。

 「ウィン・・・ここに助けてくれる人たちがいるの?」

 「ああ。」

 ウィッシュテールと同盟を組んでいる反政府組織・・・カームウォンツ。俺はこの町は初めて来るが、言ったことのあるメンバーが言っていた・・・。

 

 宿の受付の女性がにっこりという。

 「こんばんは。お二人様ですか?部屋はシングルとダブルがありますが。」

 「ウィッシュテールのものです。」

 女性は少し困ったような顔をしたが、改めて聞きなおした。

 「は?お客様・・・?えーと、お二人様ですか?」 

 「・・・店長を呼んでもらえますか?」

 女性は少し間を置いて言った。

 「―はい。ではこちらへ・・・。」

 

 女性は俺達を奥に通した。その奥の部屋は狭くて四方の木の壁に鏡があるだけだ。3人入ったらもういっぱいになった。そして、女性がその鏡の角を押すと、鏡が回転した。隠し扉だったのだ。その下には地下への深い階段が続いている。

 「どーぞ。」

 そのまま女性に続いて俺とセイラは長い階段を下に降りていった。そして突き当たりのドアを開けると・・・そこには色んな人達がいる・・・。そして女性が振り向く。

 「ようこそ、カームウォンツのアジトへ。ウィッシュテールの人だっけ?」

 俺はほっと胸を撫で下ろした。

 「ありがとうございます。俺は、ウィンといいます。こっちはセイラです。本当に助かりました。」

 「よろしくねー。私はプライン。イリュークでは大変だったわね。さっきもウィッシュテールの人が来たのよ。知り合いなんじゃないの?」

 

 「えっ?」

 「あそこ。ほら。」

 

 そこには見覚えのある顔があった。

 「・・・イエロー!!」


最後までご覧いただいてありがとうございました!

 ご意見・ご感想いただけましたら幸いです!

 ブログもございますのでぜひご覧ください!

 http://motherproject.blog.shinobi.jp/


 応援よろしくお願い致します!がんばります!

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