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episode15 追放

 リグレットを出て、船は川を下っていった。俺とセイラがジョインの操る舟に乗り、イエローとプラインがブレイブの操る船に乗る。しかしこの釣り舟、本当に見た名以上の速さで走ってくれている。かなり改造してあるんじゃないのか?俺は船を見ているとブレイブが、

 「ははん、驚きだろ。ただの釣り舟じゃねぇんだな。俺の釣り用の舟なんだよ。ちょっと昨日夜に強化しておいたんだ。燃料もバッチリ。すげえだろ。」

 と、得意そうに言った。自前だったのか・・・。てっきりどこからか借りてきたんだと思っていた・・・。しかし・・・。俺の様子を見てブレイブが言う。

 「あ?ウィン、お前顔色悪いぞ。」

 ・・・こんなに揺れるものだとはな。兵士時代に船に乗ったことはあるが大丈夫だったのに。

 「お前もしかして船酔いしてんのか?」

 イエローがニヤニヤしながら言った。

 「ウィンが船酔いねえ〜。ふーん。ほらセイラ、看病してやれよ。」

 「いい・・・から・・・。」

 セイラが言われるまま、背中をさすってきた。

 「大丈夫?ウィン?」

 ・・うぷ・・・さすらないでくれ・・・。

 「悪いセイラ・・・放っといてくれないか・・・?」

 「そっか。」

 ってかみんな平気なのかよ・・・? 

 船に揺られている時間がかなり長く感じた。何とか戻さずには済んだが・・・。

 

 「あれ、フィークじゃない?」

 しばらくしてから、望遠鏡を覗きながらプラインが言った。ううー気持ち悪い・・・何とか覗いた望遠鏡の先にあったのは・・・フィークだ!戻ってきたんだ!!だが、入り口の門は硬く閉ざされれている。門もかなりの警備の数だな。

 「ウィン、どうだ?」

 ジョインが俺に尋ねる。

 「・・・やはり表からはきつそうだな・・・。イエロー。」

 「分かった。下水道から行こう。」

 イエローは町から少し離れたところに舟を進めるように頼んだ。町近くの海沿いの崖・・・、横穴から下水が流れ出している。

 「あの横穴からアジトに繋がっている。・・・大丈夫か?ウィン・・・。」

 「・・・了解。問題ない。」

 ようやく舟から降りれるのか・・・俺はとにかく船から離れたくて真っ先に崖を登った。

 「町の外から入れる唯一のルートなんだ。」

 下水の中を奥に進んでいく。明りも無く暗いが・・・奥の暗闇から生き物の気配がした。プラインがランプに火をつける・・・すると・・・それが姿を現した。暗闇でもぞもぞと動き回る。

 「チルドレンだ!!気をつけろ!!」

 チルドレンが騒ぎ出した。キイキイと泣き声をあげる・・・。そして俺達に飛び掛ってきた!!

 

 「来たぞ!!」

 俺は剣を握る。みんなしっかりと武器を手にして、チルドレンに応戦した。心配していたプラインは短い刀を両手に二本しっかりと持っており、どうやら心配ご無用だったようだ。背中を合わせて、司法からの攻撃を防いで確実に片付けていくが・・・。

 「ち、多いな・・・埒があかねえ。」

 イエローが舌打ちした。次から次へとチルドレンが飛び出してくる。どうやらこの入り口周辺のあたりが一番数が多いようだ。ブレイブが俺達を見て言った。

 「お前ら、こいつらを飛び越えろ!!ジョイン、お前もだ!」

 俺とイエロー、セイラ、ジョインは言われたとおりチルドレンの群れを飛び越えた。

 「先に行け!!時間が無いんだろ?!」

 「ブレイブ!!」

 「チルドレンの掃除は任せておけ!!」

 「そーよ。大丈夫。私もいるしね。」

 プラインがブレイブをサポートするようだ。イエローは少し間を置いて、

 「・・・悪い!!ここは任せた!!」

 と声を上げて走り出した。

 

 「ウィン、セイラ、ジョイン、俺についてきてくれ!」

 イエローが先導し、アジトまでのルートを辿る。水路とその脇には、整備のために人が通る通路。通路がない所もあり、その時は下水の中を歩かなきゃならない。薄暗い石レンガの壁が続いていた。下水道って意外と広いんだな・・・。

 「しかし、いざって時のためにアジトにつなげておいたんだが、本当に使うときが来るとはな。ちょっと待て。」

 イエローが地上に続いているのであろう梯子を見つけ、登る。

 「・・・ちっ。見てみろよ。」

 俺も続いて登る。天井についている鉄の蓋。マンホールか・・・。少し押し上げて覗いてみる。兵士がぞろぞろいる。抵抗した人々だろうか?広場に縛られてまとめられている。

 『いいか!!逆らったり隠したりすると貴様らもこうなるぞ!!』

 兵士が人々に叫んでいる。おれは静かに蓋を閉めて梯子を降りた。

 「ひどいな・・・。」

 「ああ、急ごう!」

 俺達はチルドレンを片付けながら、奥に進んだ。そして、角に差し掛かった時、イエローが立ち止まる。しかし臭うな・・・。

  

 「おい、なにもないぜ。」

 ジョインがイエローに言う。確かにここには梯子もないが・・・。確か、ここは俺達は武器や防具を隠した場所・・・。

 「こっちからは見えないようになっているんだ。もし誰か来たらまずいからな。」

 そう言って下水道の天井を指差した。俺は光を当ててよくみると天井に扉がついている・・・。同系色で、こんな暗いところじゃ良く見ないと分からないような・・・。

 「あれか?!」

 イエローは剣の柄を扉のくぼみに引っ掛けて開けた。続けて同じように梯子を引っ張り降ろす。

 「ああ。行こう!!」

 イエローに続いて梯子を上ると、あのトイレの床だ。続いてセイラが出てきた。急いでトイレのドアを開けると・・・。メンバーの何人かがそこにはいた!

 「みんな・・・!!間に合ったか!!」

 「イエロー!!ウィン・・・!」

 俺の目にシースが飛び込んできた。生きていたのか・・・!!俺は思わず駆け寄った。

 「シース!!無事だったのか!良かった・・・!!」

 「ウィン・・・!!あの状況で助かるとは・・・。」

 「偶然助かったんだ。運が良かった。ピックは?!」

 「ピックは・・・。出口ではぐれちまって・・・結局俺一人で帰ってきたんだ。」

 「そうだったのか・・・。」

 ―ピック・・・。そのときシースがセイラを見て、顔をこわばらせた。

 「・・・!あ・・・。」

 「ああ、セイラも無事だったんだ。・・・どうしたんだ?シース?」

 「・あ・・いや・・・違うんだ・・・町の本当の閉鎖の理由って・・・」

 言いにくそうにシースの声が縮む。何だ? 

 「?  ・・・何だよ?」

 「あいつら・・・セイラを探してるんだよ・・。イリュークでセイラがいたのがバレたみたいで・・・。」

 シースが顔を背けながら言った。俺はシースの方を持って聞いた。

 「・・・なんだと?」

 女一人の捜索でここまで・・・?何のために・・・?!おかしい!とにかくフィークから出よう・・・!

 「とにかく早く逃げるぞ!!ほかのメンバーは?!」

 「みんな食堂にいるはず・・・」

 

 「きゃあああーーーーー!!!」


 その時、上から叫び声が響いた。

 「?!  なんだ!?今の・・・!」

 「店からだ!!おい、店番誰だ?!」

 「・・・ひ・・・ヒナだ!」

 「!! ちきしょう!」

 イエローが店に走る。セイラがそれを追い、俺もそれを追った。扉の向こうからヒナの声がする。

 「やめてください!!ここには何もありません!!」

 隠し扉の外側・・・足音で分かる・・・かなりの人数がいる!

 「どけ!!女!!」

 「やめて!!!」

 そして、扉が勢い良く開いた!!

 「隠し扉だ!!奥にいるぞ!!」

 「ここだ!!ここがテロリストどものアジトだ!!」

 ―――やばい・・・ばれた!!

 奴らが踏み込んでアジトに入り込んで来たのだ。かなりの人数だ。

 「きゃああああ!!!」

 「わあああ!!」

 メンバーがざわめく。

 「くそおっ!!ちょっと遅かったか・・・!!」

 俺達は剣を構えた。

 「逃げ場はないぞ!!テロリストども・・・覚悟しろ!!」 

 

 その時ヒナがそう言った男の前に飛び出した。イエローが驚いて叫ぶ。

 「ば・・・!!ヒナ、やめろー!!逃げろーー!!!」

 男の首にナイフを突きつける。

 「動かないで!!みんな、早く逃げて!!早く!!」

 「邪魔だ!!」

 

 兵士の声がするのと同時に、血が舞った。それは、ヒナのものだった。その体は、セイラの目の前にどさっと倒れた。―顔にヒナの血を受けたセイラが目を見開く。

 「・・・・ヒナぁ!!!!!」

 イエローの悲痛な叫びが響いた。

 「捕まえろ!!抵抗する奴は殺すんだ!!」

 兵士が一気にアジト内に流れ込む。相当な数が踏み込んできた。メンバーが慌てふためいて逃げ回る。このままじゃ、やられる!!!おれは騒ぐメンバーに向かって叫んだ。

 「みんな武器を取れーー!!殺られるぞーー!!!」

 

 「!! この女だ!」

 「捕まえろ!!」

 セイラを見つけた兵士がセイラの手を取った。

 ・・・・?!セイラの様子がおかしい。ヒナを見て、見開いて、ガタガタ震えている。

 「ああ・・・あ・・・。あ・・・」

 「おい、逃げろセイラ!!!」

 兵士がセイラを床に押さえつける。セイラは抵抗する様子も無く、されるがままだ。

 「くそお!!!」

 俺は助けに行こうとしたが、次々襲い掛かる兵士から、放心しているイエローをかばいながら剣を受けるのでせいいっぱいだった。

 「イエローしっかりしろ!!」

 だめだ・・・・聞こえていない・・・!!!


 「きああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」

 

 その時、セイラがどこから出したのか分からないような金切り声を上げた。

 「セイラ・・・?!」

 その瞬間。セイラを押さえつけていた二人の兵士が宙にとんだ。そして宙に浮いたまま、その兵士から血が噴き出した。俺の顔に血しぶきが掛かる。イエローとヒナも紅く染まった。

 何だ?今、何があった?そして次の瞬間、何かが俺の前をかすった。セイラだった。セイラはそのまま兵士の中に飛び込んでいった。そして俺が戦っていた兵士は、その一瞬で首がなくなっていた。

 「なっ・・・?!」


 セイラは止まらない。まるでそこには何も無いように走り、兵士を一太刀で切り刻んでいく。ぼとぼとと人間の体の一部が、人間だったものが血と一緒に床に落ちていく。――こんな風景を見たことがある。随分昔―戦場にいた時だ。人が、どんどん死んでいく。でもそれは戦とも違う殺戮だった。舞う血しぶきで、イエローの顔が、ヒナの亡骸が紅くなった。

 「セイラ!!」 

 セイラの目がギラギラしている。金の目の中にある瞳孔が完全に開ききっている。残った兵がその勢いに押され、退いた。

 「全員撤退だ!!こいつは・・・やばい!!全員殺されるぞ!!」

 「撤退、撤退ーーー!!」

 後退し、逃げる兵を、逃がさないとでも言うようにセイラが迫った。兵士の一人の襟を後ろから掴む。

 「ひ、ひいいいっ」

 「やめろセイラーー!」

 俺はセイラに剣を向けた。セイラの剣と俺の剣がぶつかる。勢いづいたセイラの剣を受け止めると、それは思い切り弾き合い、火花が散った。

 「セイラ、剣を引け!!もういいんだ!!」

 「ああああああああああああ!!!!」

 止まらない。興奮しきっている。本気でやらないと・・・ こっちがやられる!!俺は力を込めて剣を振った。左目が熱くなるのを感じる――力では俺のほうがさすがに強く、セイラは後ろに飛ばされた。しかし、すぐさま身軽に体勢を建て直し、兵に向かおうとする。俺はその剣をまた受ける・・・そのまま押し返してセイラを壁に後ろに押しやった。

 

 「落ち着くんだ!・・・こいつらを殺したって・・・ヒナは、ヒナは戻らないんだ!!!」


 それを聞いて、セイラはようやく止まった。一瞬悲しそうな顔をして。

 その体は返り血で髪も、顔も、腕も、べったりだった。セイラは剣を握りしめたまま、そのままよろけて、力を抜いた。セイラの手から剣がすり抜けて、音を出して地面に転がった。そして顔は動かさずにその目だけで、血だらけの、死体だらけのその周りを見廻した。そして、自分の血だらけの両手の平を見つめて、震えだした。 

 「・・・や・・・ああ・・・・あ・・・・。」 

 そして力を失ったかのように、がくんと膝をついた。ようやく落ち着いたか・・・。俺は剣を降ろした。イエローはヒナを抱えたまま動こうとしない・・・。いつもの気丈で明るいイエローはそこにはいなかった。イエローの影から見える閉じられたヒナの瞳は、もう開くことが無かった。ヒナ・・・。


 次の瞬間、突き刺さるような視線を感じて周りを見廻した。ウィッシュテールのメンバーの皆が、こちらを見ていた。さっきのセイラの戦いを見て・・・固まっていた。そのまま、動かない。みんな脅えて蔑むような瞳をしていた。俺はみんなの方に近寄って言った。


 「みんな・・・。」 

 「きゃっ!!!」

 メンバーの一人のサラが、体をビクッとさせて、俺から離れた。?何だ・・・?

 「・・・サラ・・・?」

 「・・・あ・あ・・・・・・。」

 涙目だ。怯えている・・・?その時、奥からセイラに「人殺しぃ!!」という叫びと共に、何かが投げつけられた。それはセイラの頭にあたった。そしてそれが俺の足元に転がってきた・・・石だ。

 「?! おい!リダ!何を・・・」

 石を投げたのは、メンバーの一人のリダだった。セイラが頭から流れた血を手で押さえる。そしてリダをじっと見てゆっくりと近寄った。

 「ひっ・・・!!」

 リダが恐怖に顔を歪めた。

 「く、来るなあ!!!」

 すると他に奴も言い、セイラに石を投げた。皆、それに習って石を投げつける。セイラの体に石が当てられる。石を避けようともせず、ただ皆を見ていた。それがまた皆を怯えさせた。

 「やめてくれ!!みんな!!ダイも止めてくれ・・・!」

 俺は手前にいたダイに向かって言った。ダイは顔を逸らして言う。 


 「ヒナが死んだのも・・・帝国兵はテロリストよりも、むしろこの女を捜してたんだぞ・・・?お前があんな・・・女連れてきたから!お前の責任じゃないか・・・。それにお前も・・・!」

 ダイが言葉に少し詰まった後、シースが言った。

 「ウィン、お前だって、仲間じゃないか!あれだけの兵が止められなかったあの女を止めるなんて・・・普通じゃない!!俺達の事殺すのも簡単だろうよ!」


  ――え・・・?

 

  

 「俺は初めからお前ら二人は怪しいと思っていたんだ・・・」

 ジョインが俺を見て言った。するとみんな口々に言う。

 「私も・・・」

 「それにあの赤い目・・・レッドアイだろ?あいつこそ帝国のスパイじゃないのか?!」

 「あんな女連れてきたから・・・お前の責任だろ・・・?それにお前だって・・・」

 「それに、あの女、あの兵士たちみたいに私達を・・・殺すつもりなんじゃないの?!」

 「みんな、殺されるぞ!!!」

 「化け物!!」

 化け物―・・・

 「ま、待ってく・・・っ!!!!」

 みんなが俺に、セイラに石を投げつけてきた。石が頭に当たる。痛みの走る頭を抑えた。みんな、熱くなっている。俺達に向けられた、いくつもの恐怖と憎しみの目。やめてくれ・・・その目を・・・。

 「セイラ・・・。」

 セイラは石を避けようともせず、膝を突いてうな垂れていた。セイラ・・・。何でこんなことになってるんだろう?何のためにここに・・・来たのだろう?


 「おまえら!!何してる!」

 メンバーの後ろ。地下水路の方から太い声がする。ブレイブがアジトに着いたのだ。そしてその殺戮の跡を見て絶句した。今まで騒いでいたメンバーは押し黙った。

 「ウィン・・・セイラ・・これは・・・・。何だ!!イエロー!!おい!!」

 放心して座り込んでいるイエローにブレイブは近寄り、ヒナの亡骸を見て動きを止めた。

 「・・・ヒナ・・・。そうか・・・。」

 「・・・。」

 イエローは返事をしない。するとブレイブが何も言わずイエローの顔を思いきりグーで殴った。イエローはヒナごと吹っ飛んで壁に叩きつけられた。


 「いいか?!お前はここのリーダーなんだ!!反政府組織にいるってことは、こういうことがいつ起こってもおかしくないって事が分かってたんだろうが!!!遊びじゃないんだ!!お前が今守るべきは・・・今生きているメンバーだろうが!!」

 イエローは頭を振って、ようやくと動いた。

 「ブレイブ・・・すまない・・・。俺は・・・。」

 「謝ってる暇があったら起きろ!!」

 続いてブレイブはメンバーを、俺達を見て怒鳴った。

 「お前らもいったい何をしているんだ!!今すべきことが分からないのか?!!」

 「ブレイブさん、でもこいつら・・・!!俺達の事殺そうと・・・!!」

 「?! 何・・・?!」

 イエローがブレイブの肩を抑える。

 「それは違う・・・。俺が一部始終を知ってる・・・。みんな!!争うよりも今はとりあえず脱出だ!!表に船が止めてある!下水道を走れ!!」

 「あ・・・ああ!!」

 メンバーはブレイブの後について下水道を進んでいった。残された俺は、庇っていた血にまみれたセイラの顔を見る。その目は、どこも見てはいなかった。


 「ウィン・・・」

 ヒナを抱きかかえたイエローが近寄ってきた。

 「悪かった・・・。俺は・・・何も出来ずに・・・。とにかく外に出よう。」

 「・・・イエローを責めるつもりは無いし、誰が悪いと言うつもりも無い。」

 ただ、“化け物”という言葉だけが俺の心に残っていた。

 「セイラ、歩けるか。」

 返事はなかった。歩こうとしないセイラを引きずって、俺は下水道への梯子を降りた。ブレイブたちがチルドレンを戦ったした後が続いている。兵士がまた責めてくるのは時間の問題だな・・・。足を急がすが、イエローもヒナを背負っていて、俺もセイラを引きずっているものだから時間が掛かる。

 そして外の光が見えてきた。下に待機している舟にはすでに乗り込んでいるメンバーの姿が見えた。俺達の姿を見つけて、プラインが呼びかける。

 

 「ちょっと、遅いわよー!もう出すから早く乗ってー!!」

 俺達の血だらけの姿と、ヒナの亡骸を見てプラインが動きを止めた。そしてセイラの様子に驚いた。

  「・・・とにかく乗って。」

 メンバーは俺とセイラが船に乗ろうとすると距離を置いて離れた。リダが俺達を睨み付けている。カームウォンツに戻る途中の船の上では誰も何も話さなかった。ブレイブも、プラインも気を使ってか話さなかった。イエローはヒナの血を拭いていたし、俺も黙って川の水でセイラの体についた返り血と、自分についた血を拭いていた。

 

   

 リグレットの川岸に着いた。ひとりひとり岸に降りていく。ブレイブが皆に言う。

 「よし、みんな疲れてるだろ。カームウォンツのアジトに案内するから着いて来い。」

 その途端、ジョインが言った。俺達を見て。

 「リーダー・・・この二人も・・アジトに入れるんですか?ここまで面倒見てやったんだ・・・もう」

 「・・・とにかく一度落ち着こう。お前らも、来い。」

 ブレイブは俺達を見て手招きした。


 カームウォンツのアジトに着き、イエローがヒナの亡骸を布の上にそっと置いた。みんなそれを囲むように座った。 

 「ヒナ・・・。」

 「俺、すごく世話になったんだ。」

 「私も、ヒナがいなかったら・・・。」

 皆口々にヒナの事を思い返している。

 そのとき、リダが泣きながらセイラを突き飛ばした。セイラは後ろに倒れる。

 「出て行ってよ!!ウィッシュテールから、私達の前からさあ!!」

 みんな少しびっくりしてリダを見た。普段がおとなしいから・・・。

 「ヒナを、ヒナを返してよぉ!!あんたのせいでヒナは・・・!!」 

 「やめろ!セイラのせいじゃないだろ!!」

 イエローがリダの手を掴んで止めた。


 「でも、イエロー。もともとフィークの閉鎖はセイラを探すためだった・・・。」

 「そのせいでヒナは・・・」

 「やめろよ!!そんな事言うなよ!!どうしちまったんだよ!」

 イエローが必死に止めようとしてくれているが、みんなの勢いは止められない。

 「イエロー、お前・・・ヒナが死んだのはセイラのせいだぞ?!」 

 「それにあの殺戮・・・あんなのと一緒になんて恐ろしくていられるかよ!」

 「リーダーがスパイの味方かよ!!」

 「リーダー、何とかしてくれよ・・・!」

 

 「俺達は、殺されるために組織に入ったわけじゃない!」

 

 ―もう、いい。こんな中には・・・これ以上居たくない・・・。そんな目をそれ以上見たくない・・・!!

 「いい。イエロー。もういいんだ。」

 「ウィン、でも・・・!」

 俺はみんなに向かって深く頭を下げた。

 「みんな、迷惑を掛けて悪かった。俺とセイラは・・・ウィッシュテールを出る。だから、それでもう勘弁してくれ・・・。もちろん秘密は守るから・・・。」

 すこし押し黙った空気。その後にメンバーが言う。

 「―ああ、そうしてくれ!!」

 「当然だ!!」

 皆が騒がしく俺達を詰る。皆に背を向けた時、リダが俺達に叫んだ。

 「あんた達・・・出て行ったからってあんた達の罪が消えるわけじゃないんだから!」 

 ―リダ・・・もうやめてくれ・・・

 「絶対に許さないからぁ!!」

 その時、プラインがリダの頬を叩いた。

 「何すんのよ!!」

 「もうやめな。みっともない。あんたたちもだよ。」

 プラインの迫力に皆、おとなしくなってその後は何も言わなかった。

 

 俺は手荷物と剣を持つと、セイラの手を引いた。この細い華奢な手が、あれだけの兵士達を薙ぎ倒すとはな・・・。

 「行こう。」

 セイラはあれから何も話さない。当然か。話したくないよな・・・。俺だってもう・・・。長い階段を登り、宿屋を出た。リグレット・・・もう来ることはないだろう。

 その時イエローが追ってきて、頭を下げた。

 「ウィン・・・セイラ・・すまなかった。みんな誰かを責めないではいられないんだ。」

 「わかるさ。みんな怖いんだ。俺達が。」

 「人は・・・自分と違うものを恐れる。でも・・・」

 「・・・普通に考えたら俺達は化け物・・・か。」

 「それでも俺は・・・お前に、セイラに助けられたよ。あの時だってセイラが兵を倒してくれなかったら俺達はやられていたんだ。」

 ふとヒナの顔がよぎる。

 「あ・・・。イエロー、ヒナのことは・・・」 

 「・・・あれがヒナの選んだ道だ。それに、ヒナを守れなかったのは・・・俺だ。」

 「・・・。」

 「お前らはどうするんだ?」

 「俺達には・・・目的がある。そのために・・・行くよ。」

 「そうか・・・」

 「ああ。」

 「もし、ピックが見つかれば・・・皆を説得できるかもしれない。あいつメンバーみんなと関わり深いから・・・。旅の途中で、良かったら・・・探してくれないか?ピックを。」


 そういえばピック・・・。どこに行ってしまったんだ?お前がここにいたなら、何て言っていたのだろう?化け物だと言っていたのだろうか?俺達に石を投げただろうか?それとも・・・。


 「ああ。分かった。」

 俺はあまりうまく笑えなかったけど、少しだけ笑った。

 「気をつけて行ってくれ。俺は、お前らを・・・応援してるからよ。もしこっちに来ることがあったら連絡してくれ。」

 「・・・ありがとな。」

 イエローは、俺の事情を全て分かっていて俺を組織に入れてくれた。

 「こっちこそ・・・。セイラもな。記憶戻るといいな。」

 しかしセイラは顔をあげようとしないままだった。イエローは俺達が見えなくなるまで見送ってくれていた


 

 こうして俺達はウィッシュテールを抜けた。

 化け物―。確かに俺達は人間とは言えないのかもしれない。

だから俺達はどこかに向かうのだと思う。

 俺は体を。

 セイラは記憶を。

 失くしてしまったものを、取り戻すために・・・。



 

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