2-1.草原の道
ここから2章です。
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2-1.草原の道
ガタガタと馬車が揺れる。
グラントまでの道のりは長く、ルークは馬車を乗り継いで旅を続けていた。
旅は順調だ。
宿場町では休息をとりながら、簡単な採取や狩猟をこなし、途中の精霊祠に寄ってはお参りをする。
馬車での暇な時間は、もっぱら肉体強化魔法の練習に励んだ。
椅子に座って景色を眺めながら、深呼吸をして、静かに集中力を高める。
旅に出てから、なぜか魔法の調子が良い。
旅の途中で魔獣と戦うこともあったが、以前よりもスムーズに戦うことができている気がする。
精霊祠をめぐったおかげだろうか。他に思い当たることといえば、テレウスのおまじないぐらいか。
なんにせよ、幸先の良いスタートが切れたと言えるだろう。
天気がよく、乾いた地面のおかげで、馬車はぐんぐん進んでいく。
景色を見ていると、遠くで動く影が見えた。
「狼だ!」
御者の男が叫ぶ声に、護衛の剣士が馬車の中で器用に立ち上がった。
「6頭か。簡単には当てられないだろうが、逃げながら弓で狙うか。それとも」
護衛の剣士は、乗客を見る。
ひとりの女性が槍を軽く掲げる。ルークも剣に触れて頷いた。
そんなふたりを見て、護衛の剣士は短く頷いた。
「馬車を止めろ、傭兵は客を守ってくれ。迎え打つぞ!」
護衛の剣士は鋭く指示を飛ばすと、馬車から飛び降り、剣を抜いた。
ルークは左腕に小ぶりの盾をつける。腰の袋から赤い魔石を取り出すと、左手に握りこんだ。
「ディーン、反対の茂みからも2体!」若い護衛が叫ぶ。
「くそ、セインはそっちを。すまんが傭兵のふたり、こっちを手伝ってくれ」
槍を持った女性とともに馬車から飛び降りると、護衛の剣士と3人で狼に向かい合う。
狼はルークたちが危険と判断したのか、馬車に目もくれずルークたちを取り囲んだ。
一際大きい狼が吠えると、周りの狼たちは次々と動き出す。
2頭の狼がルークに向かって左右から飛びかかってくる。
ルークが左手に意識を向けると、赤い魔石が光り、次いで手の甲に刻まれた魔法陣が赤く輝いた。
左の狼に向かって、小さな炎の塊が吹き出し、弾けた。
狼は悲鳴をあげ動きを止める。
ルークは鈍色に変わった魔石を放り投げると、続いて右足を踏み出し、右から迫る狼を剣で切り払った。
体を回転させ、左の狼に剣を突き出す。
狼は横に動き剣を避けようとする。
そのとき、ルークの手の甲の魔法陣が、うっすらと灰色に揺らめいた。
「——そこだ」
ルークは狼の動きがわかっていたかのように体の向きを調節し、連続で突きを繰り出した。
狼は短く悲鳴をあげると、よろめいて地面に倒れた。
ルークは再度反転し、右側に倒れている狼にとどめを刺した。
顔を上げて、周りを確認する。
全ての狼が倒れていることを確認し、短く息を吐いた。
ルークは、何気なく左手を眺める。
一瞬、狼の動きがやけにはっきり見えた気がする。
やはり、旅に出てから、調子が上がっているようだ。
「強いね、きみ」
振り返ると、槍を抱えて、にっこりと微笑んだ女性と目が合った。
ルークより少し年上だろうか。
「いや、まだまだだ」
ルークは顔を赤くしながら、剣についた血を払う。放り投げた魔石を拾い、腰の袋に入れた。
「ふたりとも、ありがとう。助かったよ」
「全然平気だよ、それよりおじさんも強いねえ」
女性の声に、ルークも頷く。
「俺も大丈夫だ」
「おじさんでもいいがディーンと呼べ。このあたりではあまり出ないんだがなあ」ディーンは頭をがりがりとかきながら、周りを見回した。「ここで休憩にして、我々は獲物を処理させてもらおう。馬車のみんなに伝えてくる」
「了解ディーンさん、わたしはサラ、よろしくね」
「俺はルーク」
サラは自己紹介を済ませると、狼の解体に取りかかる。
ルークは、エイルにもらったナイフを取り出す。
軽く刀身をなでながら、ふっと微笑みを漏らした。
ナイフを持ち直すと、狼の前に膝をついて解体作業を始めた。




