幕間1.運がいい
幕間1.運がいい
雲ひとつない青空の下、テレウスが青年とともに宿屋から出てくる。
「先生、お元気そうで安心しました」
「ラウルもまた強くなったみたいだね。白穴の樹海は楽しかったかい?」
「はい、いい経験になりました。それに、面白そうなやつとも出会えたんですよ」
そんなふたりの前に、頭からつま先までびしょ濡れのノエラがやってきた。
肩をいからせ、ずんずんと大股で歩いてくる。
テレウスは微笑む。
「涼しそうでいいね、水行ならぼくも誘ってよ」
「ノエラは相変わらず元気だな」ラウルも続ける。
そんな間の抜けたセリフに、ノエラは地団駄を踏んで声を荒げた。
「先輩久しぶりです。暑いからこうなってるわけじゃありません。魔石屋で魔石の爆発に巻き込まれたんです」
ノエラがため息をついて肩を落とす。
「はあ、最近運が悪いんですよ」
ラウルはカバンから布を取り出して、ノエラの頭をガシガシと拭く。
「大変だったな」
「あーあ、どうしたら運が良くなるんだろう」
テレウスは愉快げに笑う。
「運かい?」
「そうですよ、先生、運ってなんなんですかね」
「難しいことを聞く子だね」
「難しいから聞いてるんですよ」
ノエラの質問に、テレウスは顎に手を当てて少し考える。
「さっきね、宿屋で可愛い犬に会ったよ」
ラウルは微笑む。
「可愛かったですね」
「は?」ふたりのやりとりに、ノエラはぽかんと口をあける。
そんなノエラの反応に構わず、テレウスは「撫でたんだよ」といい、ラウルは「撫でてましたね」と返す。
「ふたりとも暑さにやられました? 魔石屋に行水しに行っときます?」
そんなノエラの毒舌に、ラウルは真面目な顔で答える。
「ノエラ、オレはそんな先生を見て、癒されてきたぞ」
しばらく沈黙。
ひととおりラウルに頭を拭かれ終わると、ノエラは口を開いた。
「全然納得してませんけど、なんとなく! なんとなく言いたいことはわかりました」
テレウスはうんうんと頷く。
「よかった。せっかくだし飲みに」
ノエラがテレウスの言葉を遮り、唾を飛ばして早口で捲し立てる。
「再会祝いで飲みに行くんですよね? 良さそうなお店を予約しておきました!」
テレウスとラウルが顔を見合わせる。
ふっとテレウスが微笑む。
「ノエラと旅ができて、ぼくたちは運がいいね」
これにて第1章は終わりです。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
楽しんでいただけたら幸いです。
現在は第3章の途中まで書き溜めています。
第2章以降は、少しずつ投稿する予定です。
これから、ルークにはいろいろな出会いが待っています。
もしよろしければ、今後もお付き合いください。




