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まぐれと呼ばれた傭兵は、新天地で仲間と歩き出す〜はいいろの精霊憑き〜  作者: 果物のぐみぐみ
第4章 グラントの傭兵たち

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4-17.なみだの意味

4-17.なみだの意味


 ルークは宿屋に戻ると、ミナやソルと短い挨拶を交わして部屋に入った。

 

 魔石灯に手を伸ばしかけるが、直前で思いとどまり、明かりをつけずにベッドに向かった。

 ベッド横に荷物を降ろすと、肩の力を抜いて小さく息を吐いた。

 両手からグローブを外していく。

 グローブは普段使いのカバンの横、灰色の熊のぬいぐるみの横にやさしく置いた。指の先で熊のぬいぐるみをちょんと突いた。


 そのまま窓辺に向かう。

 テーブル脇の椅子に腰を下ろした。


「楽しかったな」

 

 ふとつぶやく。

 机に転がしていた青色の魔石を手に取ると、洗って裏返しにしていたコップをひっくり返した。

 水の生活魔法を発動する。コップを持ち上げて位置を調節し、水を注いでいく。


 窓を開くと、部屋の中に穏やかな風が入り込んできた。

 風はルークの顔を撫でて、酒で火照った頬を優しく撫でた。

 

 ルークは水を飲んで、ほっと息を吐いた。


「グラントに来て、ほんとうによかったな」

 ルークは微笑んだ。

 

 椅子に座ってひとりで窓の外の夜空を見ていると、外から聞こえる声に意識が向いていく。

 飲食店が多い中央区画であるため、夜になっても往来には人通りが多かった。

 それぞれが好き勝手にしゃべっているため、個別の会話の内容までは聞き取れないが、楽しそうな声が音の塊となってルークに届いた。

 飲み会帰りの者も多いらしく、ときおり歓声があたりに響いた。


 その声を聞いて、ルークはセントリアでの夜を思い出していた。

 旅立ちを決めて、地図を撫でながらひとり酒を飲んでいた夜だ。


「まだ、やっていける」


 最近では口にすることが減っていた口癖を言葉にしてみた。

「ガイアとエイルは頑張っているだろうか」そう呟くと、ルークは目を閉じた。

 ふたりの顔が頭によぎる。

 その後も、宿屋や雑貨屋の店主、ギルドの受付嬢など、頭の中の景色が切り替わっていく。

 セントリアの街で関わってきた人の顔が脈絡なく頭に浮かんでは消えた。

 やがて頭の中は、グラント領に入ったころに見た草原の景色に切り替わった。

 サラ、ミナ、ソル、騎士団の面々など、グラント領で出会った人々の顔が、瞼の裏側に広がった。

 ふと頭に「グラントの一員だ」と言ってくれた、バルトやマシューの言葉が思い起こされた。


 閉じた目から涙が流れたのがわかった。

「嬉しかったなあ」

 ルークは、あの日のように涙を拭かずに、微笑んだ。


 涙はルークの頬を伝って顎から落ちる。腹のあたりに置いていた手の上に、ぽとりと落ちた。


 ルークはそこで目を開いて、夜空を見た。

 夜空には多くの星が輝いていた。


 ふいにルークは左手を持ち上げて、手の甲を右手で優しく撫でた。

「ルスティカ」

 手の甲は涙で濡れていた。

 窓の方に手をやると、月の光を受けて手の甲がきらりと光った。

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