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まぐれと呼ばれた傭兵は、新天地で仲間と歩き出す〜はいいろの精霊憑き〜  作者: 果物のぐみぐみ
第4章 グラントの傭兵たち

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幕間4.白金傭兵リリウム

幕間4.白金傭兵リリウム


「いいのかな? 俺なんかがリリウムさんと話して」

 ルークはソルの肩に手を触れて、不安そうに呟いた。

「もう、しつこいなぁ。大丈夫だよ。ルークは俺の仲間なんだから」

 ソルの言葉に、ルークは僅かに身体から力を抜いた。

「ソルはすごいなぁ」

 ルークは、ソルの肩に置いていた手をソルの頭に移動すると、わしゃわしゃと撫でた。

「いや、俺もじーちゃんの繋がりで知り合いなだけで……あ、いたよ!」

 ソルは前方を手で示した。

「リリウムさん!」

「おお、ソル、元気か」

「あ、あぁ……白金だ。翠の白金だ」ルークは手を口に当てた。

「うん? 誰だ?」リリウムはルークに顔を向けた。

「俺の仲間だよ」ソルは、固まっているルークに軽く身体を当てながら、嬉しそうな笑顔を見せた。

「は、はじめまして! 傭兵のルークです!」

 ルークは憧れの白金級傭兵を前にして、あまりの緊張に声を裏返す。

 リリウムはそんなルークに爽やかな笑みを見せた。

「そうか! ソルが世話になってるんだな。ありがとう」

 リリウムはルークとソルに顔を向けて微笑んだ。

「よう」リリウムの後ろに立っていたバルトが軽く手を上げた。

 ルークとソルも挨拶を返した。

「ねえねえリリウムさん、ルークが少し相談があるみたいなんだけど」

「そうなのか?」

 リリウムの問いかけに、ルークはぎこちなく頷いた。

「うーん、バルト。ちょっと内緒話してきていいか?」

 リリウムは身体を傾けながら、顔を後ろに向けた。

「ああ、そこのベンチで待ってるよ」

 バルトは頷くと、木陰のベンチを手で示して歩き出した。

 リリウムはバルトの後ろ姿に目をやったあと、ルークとソルににかっと笑いかけた。

「よし、ちょっと内緒話に行くか」

 そう言いながらも、リリウムは歩き出さずに突っ立ったままだった。

 ルークは思わず首を傾げた。

 そんなルークを愉快げに眺めていたリリウムは「よっしゃ、舌噛むから歯ぁ食いしばってろよ」と言って膝を少しだけ曲げた。

「え」ルークが思わず聞き返した。

「いいからいいから」リリウムは笑いながら、歯を食いしばって見せた。「いー。ほら、こうやるんだよ」

 ルークはちらっと横に視線を向けると、ソルが歯を食いしばって前を向いていた。首を傾げながらルークも真似した。

 ふたりの様子を見て、リリウムはにやりと笑った。

 瞬間、身体が浮いた。全身が下から強い力で押し上げられた。

 息が詰まり、ルークはなす術がなく気をつけのような姿勢になった。

 景色があっという間に下に流れていき、視界が青空に包まれる。

 ルークたちは凄まじい速度で高度を上げていき、グラントの街が下に小さく広がっていく。

 数秒のうちにルークたちの上昇は止まり、同時に全身を押す力が弱まった。

「落ちる!」

 下から受けていた力が急速に弱まり、ルークは思わず声を上げた。

 手を広げても掴むものがなく、無意識に自分の体を抱いて息を止めた。

「ルーク、大丈夫だ」

 リリウムは喉を鳴らして笑った。

 ルークはリリウムの言葉を聞いて恐る恐る下を見た。

 距離があるため瞬間的には断定できなかったが、どうやら落ちていないことに気づいて身体から力を抜いた。

「いやあ、急に飛ばされるとみんな似たような反応するのな」

 リリウムは愉快げにルークを見た。

「俺も前にやられたんだ」ソルが唇を突き出して言った。

「すまんなルーク」リリウムが悪びれずに笑う。

 ルークはしばらく口をぽかんと開けていたが、やがて目を輝かせた。

「さすが白金……内緒話をするためだけにこんな……かっこいい」

 ルークの夢を知るソルは、ルークの反応に苦笑した。

 リリウムはルークの反応を見て笑みを強めた。

「それで、なんか相談があるんだっけ? 精霊のことか?」

「あ、そうなんです……え、なんで精霊のことを」

 ルークは驚いてリリウムの顔を見た。その後、ソルに視線を向けた。

「俺は何も言ってないよ。ルークと出会ってから、リリウムさんと再会するのは今日が初めて」

「俺の精霊は敏感みたいでな、精霊に教えてもらったんだ。シルカ!」

 リリウムの襟元から、緑色に光る鳥が顔を覗かせた。

「ソル、スピカ出せよ。ルークも」

 ソルは頷くと、肩当ての隙間から金色の光が漏れる。金色の光が旋回すると、やがてソルの頭の上に鳥の形となって留まった。

「……それが、俺は精霊と意思疎通が取れてなくて」

「意思疎通できない?」リリウムは首を傾げた。

 ルークは頷く。

「一度だけネバ、あ、精霊の世界に呼ばれて、話したんだけど」

「ネバ!? 行ったのか?」リリウムは驚いて声を上げた。

「ネバって白穴の向こうだよね? いつの間に?」ソルも口を開けてルークの顔を見た。

「う、うん。俺の精霊が言うには、意識だけ呼んだって言ってたけど……」

 ソルの上に留まっていたスピカが、羽をぱたぱたと動かして飛び上がった。

「ルークさん、ルークさんに憑いてる精霊さんのお名前は聞いたの?」スピカがルークの頭の上に留まって言った。

「ああ、ルスティカって言ってたよ」

「ルスティカ様だ」スピカとシルカは声を合わせた。

 スピカはあまりの驚きに、ルークの頭の上でぴょんと跳ねた。

「なんだ? 有名なのか?」リリウムはシルカを指でちょんとつついた。

「うん。ネバができた頃からいる精霊さんみたいだよ」シルカは身体をぶるっと震わせた。

「そういえば、人に憑くときもネバからは出ないって聞いたことあるかも」スピカが言った。

 シルカとスピカは、興奮しているのか少しだけ早口になった。

「へえ」ソルはにっこりと笑った。「ルーク。なんだかかっこいいね」

「あ、ああ。俺はスピカさんも可愛くて好きだけど」ルークは頭の上のスピカに手を伸ばした。スピカは「ふふふ、嬉しいな」と言いながら、ルークの手に身体をくっつけた。

「それで、相談ってなんだ?」リリウムはルークに向かって言った。

「あの、ルスティカと意思疎通できないことを相談しようと思っていました。リリウムさんは、昔から精霊憑きを公言して活躍しているから、何かヒントがあればと思いまして」

「あー」リリウムは申し訳なさそうに少し下を向いて、がりがりと頭をかいた。「俺は最初からシルカと話せたからなぁ」

「そうですか……」

「俺もスピカとは話せたから、力になれなくて」

 シルカはリリウムの襟元から飛び出すと、ルークの頭の上に移動した。

「ふつうは、人間に憑くときはアロアにくるから、わたしたちの事例は参考にならないかも」

「うーん」ルークは悩ましげな顔をしながら、頭の上のシルカを優しく指で撫でた。

「力になれなくてすまんな」リリウムは軽く頭を下げた。

「あ、いや! お話できてよかったです」ルークはリリウムに向けて手をばたばたと振った。

「あはは、まあ、ソルの仲間がいいやつそうってわかってよかったよ」

「えへへ」ソルが笑顔で頭の後ろで手を組んだ。

 ルークもソルの顔を見て、微笑んだ。

「よし、じゃあバルトを待たせてるし行くか」

 リリウムがそう言うと、スピカとシルカは光の塊となって、それぞれの宿主の身体に戻った。

 ルークたちは緩やかに下降を開始した。

「最初からゆっくり飛んでくれたらいいのに」ソルが苦笑する。

「ダメだ」リリウムは首を振った。「楽しかっただろ?」

「すごかったです」ルークは大きく頷いた。

「あ、そういえば、テレウスのジジイなら何か知ってるかもな」

「セントリアで会いました。握手をしたときに何かをしてくれたみたいで、ルスティカも何かあったら相談するといいかもって言っていました」

「バルトを王都に運んだ後、ちょっと大陸を飛んで探してみるよ」

「あ、グラントにそのうち行くって言ってましたよ」

 話しているうちにルークたちは地面に降り立つ。

 ルークは思わずしゃがんで、地面を手で触った。

「話はもういいのか?」

「バルトさん、時間をもらってありがとう」ルークは顔を上げてバルトに言った。

「よーしバルト。それじゃあ行くか。ゆっくりと速いのどっちがいい?」リリウムは笑いながらバルトに問いかけた。

「ゆっくりでいい。さっきみたいなのは」

 バルトが話し終わらないうちに、リリウムとバルトは吹き飛んでいく。

 上空からリリウムの笑い声が聞こえた。

4章はこれでおしまいです。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

5章からは少しゆっくりめの更新になりますが、

引き続き書いていきます。

これからもルークたちに、

お付き合いいただければ嬉しいです。

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