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まぐれと呼ばれた傭兵は、新天地で仲間と歩き出す〜はいいろの精霊憑き〜  作者: 果物のぐみぐみ
第3章 兆し

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3-3.研究者の目

3-3.研究者の目


「支部長さん! 手がかりが見つかったって!?」

 騎士団支部にソルが駆け込む。

「ああ、先ほどな。ミナのお嬢ちゃんはどうした?」

 しばらくして、ミナと数人の騎士が追いついてくる。

「ソル、はやすぎるよ」

「ごめん、つい」

 ソルはミナに頭を下げる。

「それで情報って?」

「まあ、待て。ソル、もし情報を共有したとして、その後は騎士団の指示に従えるか?」

「そんな前置きいいから」

「ソル」

 ミナが、後ろからソルの肩に手をおく。

「……従うよ。だから、ルークの情報を教えてください」

「よし、ではあっちの部屋だ」


 部屋を移動すると、数名の騎士が椅子に座っている。

 入室したアルドヴェインを見て、全員が立ち上がった。

 アルドヴェインは手のひらを見せて騎士たちを座らせる。

「それでは今後の動きを説明する」

 アルドヴェインは手早く要点を説明する。

 騎士団の研究所周りを、指名手配された盗賊がうろついていたこと。

 機密事項なので詳細は伏せるが、尋問したところ、ルークのことを話したこと。

 外部に支援を要請して、今すぐルークを救出に向かうこと。


「他の事件や治安維持もある。騎士はここにいる者だけで作戦にあたる」

 アルドヴェインは説明を終えると、コップの水を一息に飲み干した。

「傭兵ギルドに依頼を出すか? それともどこかの名門道場に」

 副官の女の言葉を、アルドヴェインが遮る。

「今回は、ランゼルク槍術道場に依頼する。実は今、ランゼルクのジジイにひとつ貸してるんだ」


 ――――――――――――――


 同じ日の朝。

 ルークは自分が揺さぶられる感覚に目を覚ました。

 薄く目を開けると、自分を見下ろすエルシオンと目が合う。

 ルークは柔らかな寝具に包まれて、うとうととまぶたを閉じる。

「ルークさん、朝ですよ」

 エルシオンの声に、昨日の出来事が思い起こされる。

 ルークは慌てて体を起こした。

「おっと」

 エルシオンが体を引いて、跳ね飛んだ布団を避ける。

「こ、ここで何を?」

 ルークは慌ててベッドから降りる。

「朝ごはんの時間なのに、外から呼んでも全然起きないから、起こしてあげようと思いまして。ついでに現役傭兵の魔法陣とか観察していました」

 エルシオンは、手元の紙の束と筆記具を見せる。

「え、か、観察?」

「朝食を摂ったら、簡単な検査と、いろいろと話を聞かせてもらおうと思っています。まあなんにせよ、退屈はしないで済むと思うので、今日も1日頑張りましょう」

 ルークの戸惑いの表情を無視して、エルシオンがにっこり笑う。

 その時、廊下から足音が聞こえる。不機嫌そうなミレーネが顔を覗かした。

「スープが冷めるんだけど。起こすだけで時間かけすぎ」

 ミレーネは、エルシオンの手元の紙を見ると小さくため息をつく。

「ああ、病気が出ちゃったのね。ルークくん、そんな男はほっといて、朝ごはんにしましょう」

 ミレーネが、ルークの腕を引っ張る。

「あ、わかったから、自分で歩けます」

 ルークはミレーネの後に続いて歩き出す。


「ふふ、検査が楽しみだね」

 部屋にひとり残されたエルシオンがつぶやいた。


 ――――――――――――――


 朝食の後、ルークは個室に案内された。

 部屋の壁や床は、廊下と同じく真っ白だった。

 明るい魔石灯が部屋を照らしている。


「それでは、検査を始めましょう」

 机に向かい合うエルシオンが言う。

「その前に、まず自己紹介。僕は騎士団の研究所に所属しています。魔石関連の研究を担当しているんです」

 ルークは研究についてイメージは湧かなかったが、曖昧に頷く。

「今回、保護中で時間もあるので、現役傭兵のルークさんにもお手伝いいただこうかと。騎士にも行う検査ですのでご心配なく」

「わかりました。みんなやってる検査なんですね」

「ええ、痛みもありませんのでご安心を」

 エルシオンが両手を広げて、おどけて見せる。

 ルークは、エルシオンの柔らかい雰囲気に、表情を緩めた。

「どういう目的の検査なんでしょうか」

「特殊な力について」

 エルシオンが突如真顔になり、鋭い口調で言う。

 丸メガネの奥の目が、ルークを射抜く。

 ルークは思わず息を呑むが、次の瞬間、エルシオンは先ほどまでと同様の、柔和な笑みに戻っている。

「ささ、始めちゃいましょう」

 エルシオンは、淡く虹色に光る魔石を取り出した。

 魔石屋では見たことがない色だ。

 ルークは、炎なら赤、水なら青と、単色の魔石しか扱ったことがなかった。

「すごい色ですね」

「きれいでしょう? この魔石を握って、灯りの生活魔法を使ってほしいんです」

「わかりました」

「すみませんが、この紙をここに。腕と肩を触らせてもらいますね」

 ルークの手の下に、魔法陣が描かれた紙が置かれる。

 同様の紙が、ルークのお腹や右腕にも貼り付けられた。

 エルシオンはルークの背後に回り込み、ルークの左腕と右肩に手を置いた。

 思ったより簡単な検査に、ルークは拍子抜けした気分で魔石を手に取った。

 左手に意識を集中すると、手の先に光の玉が現れる。

「……やっぱりだ」

 エルシオンが小さく呟く声が聞こえた。

 しばらく沈黙が続き、ルークは顔を後ろに向ける。

 ルークの視線に、はっとしたエルシオンは、微笑みを浮かべる。

「ルークさん、もう一度お願いします」


 その後、ルークは指示されたタイミングで魔法を発動していく。

 何度か魔法を使うと、エルシオンが離れた。


 ルークはテーブルに魔石を置きながら振り返ると、エルシオンの顔を見て思わずのけぞる。

 テーブルに背中が当たり、バランスを崩す。咄嗟に肘をついて、なんとか姿勢を保つ。


 エルシオンは手で口を隠して、何かを考えこむようにして、目を見開いている。

 ルークの顔を凝視しているように見えるが、よく見ると目の焦点が合っていない。

 ルークのもっと後ろを見ているような、そんな印象を受けた。


「ルークさん」

「はい」

「体から、灰色のモヤみたいなものが出たことは?」

「……あったと、思います」

「頭の中で、何者かの声を聞いたことは?」

「え? 声ですか?」

「戦いの最中に、周りがよく見えるようになった経験は?」

「いったい何を」

 会話が成り立っていない。


「うん、これは世界を救えるかも」

 ルークが黙っていると、エルシオンの表情が和らいだ。


「ルークさん、大学での研究職について興味はありませんか?」

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