第四十五話 夜明け前の王都
探しものの馬車は、夜明け前の薄明の王都を駆けていた。
魔物災害の最中にはぐれてしまった子どもを探す母親や、親を探す子ども、あるいは失った家族の行方を知りたい者。
アルトの馬車は、王都の人々の大切なものを探すために奔走していた。
見つかった人々が、必ずしも皆無事だったわけではない。
それでも人々は、アルトに、そして馬車に感謝した。
探しものの馬車は、災害で家を失い、頼れる人を失い、行き場をなくした人々も運んだ。
そうした人々は、ときに親類のもとへ、ときに友人たちのもとへ連れられ、あるいは救護院に運ばれた。
王都はまだ、復興に向けて立ち上がろうとする途上にあった。
古の聖女の旧結界の発動により、王都の魔物は一掃され、新たな魔物の侵入も許さなかった。
しかし、魔物災害のさなか、先頭に立って王都を守ろうとした善王フリードリヒも命を落としていた。
王宮は、王国政治の中心であった国王と王弟を同時に失い、王太子が王位を継いだものの、政務の経験は浅く、王都復興は容易ではなかった。
王宮が混乱する中、救護院が王都の民の救済拠点となっていた。
傷つき、失った人々で溢れた救護院はとっくに受け入れの限界を迎え、隣接する大聖堂にも人を迎え入れていた。
「アルトさん、ありがとうございます」
救護院のクラリスは、疲れた笑みを浮かべて、アルトを迎えた。
昼はもちろん、夜も徹して救護活動に従事していたのは明らかだった。
「クラリス様。少し休まれた方がよろしいのではありませんか?」
アルトがそう提案すると、クラリスの顔が曇った。
「そうはいかないわ……。災害で大変な目に遭っている方が、まだまだいらっしゃるのに」
「そうは言っても、クラリス様が倒れてしまったら、王都の復興も人々の救済も立ち行かなくなってしまいます」
クラリスはアルトを見つめ、少しだけ考える。
「……分かったわ」
クラリスは、また小さく笑みを浮かべた。
「では、少しだけ馬車に乗せていただけないかしら」
「馬車に、ですか?」
「ええ。あの馬車は、とても落ち着くの」




