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【連載版】婚約破棄された公爵令嬢が「どこにも行かず、ただ走らせて」と言ったので、辻馬車は夜の王都を走り続ける  作者: Vou@書籍化進行中
幕間 【乗客】惑う公爵令嬢

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第三十八話 行くべき場所

「アルトさん……」


 息を切らせて戻ってきたクラリスの異様な様子に、アルトはすぐ気がついた。


「クラリス様、どうされましたか?」


 クラリスは声を出そうとするが、うまく話すことができない。


「まずは深呼吸を。落ち着いてください」


 クラリスは大きく息を吸い、乱れた呼吸を整えようとした。


 アルトは、クラリスの言葉をじっと待つ。


「王都が……魔物災害に……」


 ようやく発せられたクラリスの言葉に、アルトは大きく目を見開いた。


「行きましょう」


「でも……」


 クラリスはアルトを見る。


「私は、どうしたらいいのか分からないのです」


「何を仰っているのです?」


「アルトさんが大変な目に遭ったばかりだというのに……。アルトさんに、気持ちを整理する時間を持ってほしかったのに……」


 アルトは小さく息を吐いた。


「僕ひとりのことなんて、ちっぽけなことです。そんなことより……」


「ちっぽけなことなんかじゃないんです!」


 クラリスが、アルトの言葉を遮った。


「ちっぽけなことなんかじゃないんです……。王都が魔物災害に襲われたことと同じくらい、アルトさんが抱えている悲しみや怒りが、私にとってはとても大きなことなんです」


「そんなこと……」


「それに、私が王都に行ったところで、何ができるわけでもありません。魔物と戦うことだってできない……」


「あなたは、とても重要な方なのです」


 今度はアルトがクラリスの言葉を遮る。


「王都にとっても。……僕にとっても」


「……」


「あなたは一人ではありません。一人で何でもしようと思うのは、思い上がりです」


「でも……」


 そのとき、アルトの隣にいたノクスが、大きく鼻を鳴らし、鼻先でアルトの肩を押す。


「今この時、王都以外に向かうべき場所はないと、ノクスは言っています」


 クラリスは、ノクスの目を見た。


「それは、クラリス様にとっても、僕にとってもです」


 アルトは、王都の方角へ目を向けた。


「僕たちにとって大事な人たちが、あそこにはたくさんいるじゃありませんか」


「……」


探しものの馬車(ロスト・キャリッジ)を信じてください」

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