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あの日の風の、その続き 〜戦う公爵令嬢と、王女が選んだ未来〜   作者: 凛花


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34/36

番外編 その名に込めたもの。








ーーー




ーー




「……リク、にするわ」



静かな部屋に、リゼの声が落ちた。


腕の中には、小さな命。


まだ目も開ききらないその子を見つめながら、リゼはそっとその名を口にする。



「リク……?」



低く、確かめるような声。


隣に立つクロードが、わずかに眉を動かした。



「そう。リク」



リゼは顔を上げる。


まっすぐに、クロードを見るその瞳は、どこまでも穏やかで。


そして、どこか決意を宿していた。



「私の“リ”と、あなたの“ク”」



あまりにも単純な由来に、クロードは一瞬だけ言葉を失う。


けれど、次の瞬間には小さく息を吐いた。



「……単純だな」



呆れたような声。


それでも、その目はどこか優しかった。



「いいじゃない。分かりやすくて」



リゼはくすっと笑う。


そして、もう一度、腕の中の子を見下ろした。



「でも、それだけじゃないの」



ぽつり、と。


静かに続ける。



「“リク”ってね……大陸って意味もあるのよ」



その言葉に、クロードの視線がわずかに動く。



「広くて、どこまでも続いてて……境界なんてない。」


「そうね……、公爵家とか、貴族とか、そういう“形”に縛られない……」



リゼの指が、そっとリクの頬に触れた。


そこで、ふっと笑う。



「そういう人生を、生きてほしいなって。」



その声は、祈りみたいだった。



ほんの少しだけ、間が空く。



リゼは顔を上げて、クロードを見る。



「……どう?」



問われて、クロードはしばらく何も言わなかった。


ただ、静かにリゼと、その腕の中の子を見ている。



やがて。



「……いい名前だ」



短く、そう言った。



飾り気のない言葉。


けれど、それ以上はいらなかった。


リゼは、ふっと笑う。



「でしょ?」



その腕の中で、小さな命が、かすかに指を動かした。



まるで、その名前を受け入れるみたいに。




ーーー




ーー




「……“大陸”、ね」



ぽつり、と呟く。



風が吹く。


見渡す限りの空。


どこまでも続いていく地平線。


リクは、ゆっくりと息を吐いた。



「形に縛られるな……か。」



昔、聞いた話。


母がつけた、自分の名前の意味。


最初は、よく分からなかった。


ただ、少しだけ――自分には大きすぎる名前だと思った。



けれど。



「……まあ、悪くない」



小さく笑う。



ふと、視線を上げる。



丘の向こうに、城と、街が見えた。



そこには、守るべきものがある。



大切な人たちがいる。



そう、今なら分かる。



守るっていうのは、止めることじゃない。



隣に、立つということ。



リクは、一歩踏み出す。




風が、背中を押した。




その先へ。




どこまでも続いていく、その道へ――










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