第四話 第二話 駄菓子屋さん
第二話 駄菓子屋さん
あきら君の目はとてもかわいらしかった。何か考えている様子だった。
あきら君が部屋を出て行って家の中はとても静かになった。
僕はみんなに聞いてみた。
「あの、僕はあまり外の世界を知らないので教えてほしいんですけど、お兄ちゃんって人間は子どもですか?」
「そうだな、子どもよりは大きいけど、大人の人間よりは小さいな。学校と言うところへ行って勉強をしているらしい」
「へー、勉強って何ですか?」
「勉強って、本を読んだり、字を書いたり、計算したり大人になる準備をしているのかな」
「なるほど、お兄ちゃんは大人になる準備をしているんだね」
「お弁当って何ですか?」
「学校にもっていくお昼ご飯だよ。毎朝ママが作っているんだよ」
「毎朝、作るんだ。すごいね」
「そうよ、ママはあきら君を幼稚園に迎えに行った後に、必ずスーパーというお店に行って、夕食のおかずや、お弁当の食べ物を買ってくるの。私はしばらくママのお財布の中にいたから、わかるわ」
と100円玉が言った。
「そうなんですね、スーパーってところは大きいところなの?」
「そうね、お肉やおさかな、野菜がたくさんあって、いつもママはお財布のお金と相談しながら買い物をしていたわ。そして、私たちを食べ物と交換する時に小さい声で『ありがとう』と言ってくれたのよ。それは今でも続いているわ。私はママの財布大好きだったわ」
「そうなんだね、それはすごいな。毎朝お掃除してくれるの?」
「財布のお掃除ってこと?それはないな。ママは誰よりも早く起きて、みんなの食事の支度をして、お父さんやお兄ちゃんを起こして、忙しそうだもん。毎朝財布のお掃除はむりだよね」
「そうなんだ、僕が初めて入ったおばあさんの財布は、毎朝掃除をしてくれたんだよ。広いお皿の上で明るい光を浴びて、窓から入ってくる風にあたりながら、友達とお話していたんだ」
「まあ、そんな財布があるの?いいわね、私も入ってみたいわ」そう言ったのは別の100円玉だった。
「そうなんだ、僕ももう一度おばあさんの財布に入りたいよ。おばあさんは、いつも友達をたくさん連れて帰っておいでといってくれたの。だから、僕は貯金箱や銀行で会ったお金の友達にそのことを話して、ぜひ、おばあさんの財布に行ってみてと伝えているんだ。みんなもぜひおばあさんの財布に入ってみてね」
僕は、またいつものように、おばあさんの財布の話をした。
ここでも友達ができたのでとてもうれしかった。しばらく、すると家の中にバタバタと物音がした。
「ただいま」とあきらくんの声がした。
そして、バタバタと財布の方に来る音がした。
「やったーこれから駄菓子屋さんに行くんだよ」と嬉しそうに財布を持ちあげた。
そしてママの声がした。
「あきらくんたら、もう本当に言い出したら聞かないんだから。お夕食の支度があるから少しだけよ
さあ、おいで」
と言って、あきらくんの手をつないで、家の外に出たようだった。
財布の中の友達に聞くと、駄菓子屋とは、お菓子というものがたくさんあるお店みたいだ。
そこには子どもがよろこぶものがたくさんあるらしい。どうやら、僕の出番もあるかもしれない!と思って僕もとてもワクワクしていた。
あきら君は財布を大事そうに手に持って、ママと歩いていた。
家の近くなのだろうか?ほどなくして駄菓子屋さんに着いたみたいだ。
「いらっしゃい、あきらくんひさしぶりね」とやさしい声が聞こえた。
「こんにちは。どうしても行きたいというので連れてきました」ママの声だった。
「あきら君はいくつになったの?」
「今年で6歳です、来年小学校にいくんですよ」
「大きくなったね。よく来てくれたね」おばあさんの声にとてもよく似ていた。
僕はまた、おばあさんが恋しくなった。
「どれにしようかな。いっぱいあって迷っちゃうな。ママはどれがいい?」
「ママはいいのよ。好きなものを買いなさい」
「実はね、お兄ちゃんに買ってあげたいの、お兄ちゃんね、僕にゲームを貸してくれたの、だからお兄ちゃんに買ってあげるの」
「そういうことだったのね、あきら君が欲しかったのじゃないの?」
「うん、僕はいいの、お兄ちゃんに買ってあげたいの」
「あきら君はやさしいね。お兄ちゃんが大好きなんだね」
あきら君は、昨日僕をくれたお兄ちゃんに何かあげたいんだ、お兄ちゃんを喜ばせたいんだということがわかった。人間は自分だけでなく、他の人を喜ばせるために僕たちを使ってくれるんだということが初めて分かった。僕はとても感動した。そうか、あきら君ぼくを使ってよと言ってみた。
あきら君とママはしばらく、駄菓子を見ていたようだが、おばあさんに持っていって、
「いくらですか?」と聞いた。
「全部で340円です」とおばあさんが言った。
「ママ、どれとどれで340円になるの?」
といって財布の入口を開けた。
「そうね、これとこれとこれね」
そういって、100円玉3つと10円玉3つをつまんだ。
「あと、10円たりないね」とママが言うと、あきら君が、
「これでいい?」と僕をつまみ出してくれたのだ。
僕は「やったー」と思わず叫んだ。
あきら君とお兄ちゃんを喜ばすことができたことがとてもうれしかった。
あきら君のあたたかくて、柔らかい手が氣もちよかった。
「はい、よくできました。あきら君えらいね。お兄ちゃんきっとよろこんでくれるよ」すると
「うん、ありがとう。また来るね」と言って、あきら君とママは帰っていった。
僕は、とても満足だった。人間を二人も喜ばすことができたのだ。
それから、僕はしばらくこの駄菓子屋さんのレジの中にいることになった。
おばあさんは、僕が最初に入った財布の持ち主と少し似ていた。
お店を閉めたあとに、僕たちの顔を見ながら、「今日もありがとうね。お休み」と言ってくれた。
僕は、レジの中で他の10円玉たちとじっとしていた。お店は暗くなり静かになった。
「こんにちは、ここは居心地がいいですか?おばあさんは優しそうだね」と言った。
「新入りね、ええ、このおばあさんは優しいわよ。でも、年取って身体が弱いるからいつまでこのお店を続けるか、おじいさんと毎晩相談しているわ。おじいさんは外に仕事にでているけれど、それも長くは続かないかもって心配しているわ」
「そうなの。でもこのお店はたくさんの子どもたちが、買い物にくるんでしょう?」
「そうよ、でもおばあさんは、目が悪くなってるから、お菓子を数えたり、お金を数えたりするのが、大変なの。いつも目を細めては、何回も数えているわ」
「そうなんだね、だれか助けてくれる人いないの?」
「そうね、息子がいるけど、遠くにいるみたいで、めったにかえってこないわ。私がここへきてからは一度も見たことないわ」
「おばあさんは子どもたちのためにがんばっているんだね」
「ええ、子どもたちの笑顔を見ると元氣が出るんですって」
僕はおばあさんが駄菓子屋を続けられたらいいなと思った。




