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第二章 第一話 貯金箱って何するところ?

第二章 貯金箱って何するところ?

 第一話 貯金箱って何するところ?


財布と言う入れ物の口が開くのは、突然だった。

財布の中は暗いので、僕は寝てるか、他の顔の違うお金たちとお話しているか、どちらかだった。


次の日、おばあさんと言われるその人間は、お財布の口を開けてしわしわの手で、僕たちを外に出した。僕は最初はまぶしくて周りが見えなかったけれど、どうやら広いお皿の上に僕たちは置かれていた。

おばあさんは、「ありがとうね」と言いながら、財布を丁寧に何か白い布で拭いていた。そして、僕たちを見つめながら、「たくさんお友達を連れてきていいからね」と声をかけていた。


僕たちは、おばあさんにとって、おばあさんの欲しいものと交換するための道具なのだと、誰かが言っていたが、おばあさんの言葉はとても優しかった。

僕はとても居心地がよくて、新しい空氣を身体いっぱいに吸って、お皿の上でのんびりしていた。


すると、穴の開いた50円玉が僕に言った。「あのさ、このおばあさんは特別だからな。普通はこんなに毎朝財布の掃除なんてしないんだぞ。ほとんどの人間が財布は、たいていかばんと呼ばれるもっと大きな器にいれっぱなしで、いつも暗いんだ」


「そうなの?」と僕が答えると、他のお金たちも「そうだ、そうだ」と口々に言った。

「でも、財布から出してもらって、広いお皿の中で手足を伸ばしてのんびりするって最高だね。ずっとこのおばあさんの財布にいたいな」

「そんなわけにはいかないよ。いつ何かと交換されるかわからないからね」と言ったのは5円玉だった。

「俺たちは、よく神社というところで、出番が来るんだぜ。人間の言葉でお賽銭というらしい。俺たちはいつも人間の願い事を叶えるためにつかわれている。神社のもっと大きな箱に入れられるんだ。そこには、それはそれはたくさんの仲間たちがいるんだ」

「へー、すごいね。神社ってなにするところなの?」

「わからないけど、人間たちは俺たちと引き換えにお願い事をするらしい」

「何を願っているのだろうね?」

「それは人間によって違うけれど、お金がもっとたくさん入ってきますように!とよく言ってるな」

「お金って、僕たちだよね。人間は僕たちのことが好きなんだね?」

「そうだな、お金がたくさんあると、人間の欲しいものがよりたくさん手に入るからだろうな」

「じゃ、僕たちは大切にされているんだね?」

「それは、みんなではないんだ。このおばあさんは、毎日朝明るくなると、こうして俺たちを財布から出して、新しい光と空氣を吸わせてくれる。こんないい人はいないよ。前の人間の財布では、一度もありがとうなんて、言われたことなかったからな」

「へー、全部の人間がお金がすきなわけじゃないってこと?」

「そうかもな。俺もまだわからない。でも、時々財布の中で一緒になった他のお金に聞いたら、ほとんどの人間はお金にありがとうなんて言わないんだ。俺たちは情報交換している。このおばあさんはお金を大切にしてくれるから、みんな居心地がいいと言ってるんだ。この財布から出て行ったお金はほとんど帰りたいと思っているよ」

「僕は、他の人間の財布を知らないから、わからないけどここが居心地がいいのはよくわかるよ」

すると、1円玉が言った。

「俺はお金の中でも一番小さいお金なんだそうだ。けれど、人間の欲しいものには値段と言うものがつけられていて、人間が欲しいものをくださいというと、お店の人間が○○円です。と伝える。その時に最後に1円とついたら、俺たちの出番なんだぜ」

「へー、いいね。5円玉は神社というところで活躍して、1円玉さんは、○○1円と呼ばれたら出番なのだね?」

「そうだよ」

「僕はなんといって呼ばれたら、財布を出れますか?」

「10円という値段がついているものは少ないので、おそらく○○十円と最後に言われたら出番だとおもうよ」

「わかりました。人間の言葉を聞いていたら、呼ばれるかどうかわかるのですね」

「そうだよ。おばあさんはお金の顔がちがっていても、みんなにありがとうと言ってくれるので、もう一度帰りたいと思うんだよ」

「早く、出番がこないかな?」僕はわくわくした。

しばらくして、おばあさんはきれいに拭いた財布に、僕たちを入れ始めた。広いところから狭いところへ入れられるけれど、きれいになっていたのでとても氣持ちよかった。


その日、おばあさんは家の外へ出かけて行った。どこに行ったか分からなかったが、おばあさんがじゃりじゃりと石の上を歩く音がした。すると、5円玉が「おっと、そろそろ俺の出番だな。きっと神社だよ」

と言ったので、耳を澄ませていると「カラン、カラン」と音がした。

そして、お財布が開けられ、外の光が入ってきた。さっき話してた5円玉がしわしわの手でつままれた。

「じゃあな、若いの。また会おうな」と言って、外へ出て行った。

なるほど、ここが神社というところで、おばあさんは毎朝ここに来ては、5円玉を1枚ずつ選んでもっと大きなお賽銭箱という箱に入れるらしい。おばあさんは、何を祈っているのだろう?


それからしばらくすると別の人間の声が聞こえた。

「おはようございます。今日もいいお天氣ですね」

「おはようございます。本当に晴れると氣もちがいいですよね。今日は何をもらおうかな?えっと、これはおいくらですか?」

「それは350円だよ。新鮮で美味しいよ」と言った。

「まあ、とてもきれいで美味しそう。じゃ、これを一つくださいな」おばあさんは、その人間と話をしながら、財布を開けた。ぱっとまぶしい光が入ってきて、100円玉を3つと穴の開いた50円玉を一つつまむと、外へ出した。100円玉と50円玉はうれしそうに、「さようなら、また会おうね」と言って出て行った。僕も「さようなら」と真似をして言ってみた。

おばあさんは小さい声で「ありがとう。またお友達をたくさん連れて帰ってきてね」と僕たちに言った。

それを聞いて、なんだか僕たちは誇らしかった。


「毎度ありがとうございます。おばあさん、元氣で長生きしてね」と声がして、またどこかへとことこ歩き出した。おばあさんは一体次はどこへいくのだろうか?

僕たちは、耳を澄ましておばあさんの声を待った。

 しばらくすると、おばあさんは、ピタッと足を止めた。そして、ピンポーンと音がした。

どこかの建物に着いたらしい。中から


「はーい、少々お待ちください」という人間の声が聞こえた。



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