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転生したのに魔法適性ゼロ、でも絶対一番になります!  作者: スンスンスン
外の世界

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7話 掃除

依頼を受けた翌日、俺たちはクライン王国の城壁を出て、エドモンド男爵の領地へと向かった。  領地は、かつての豊かさを失い、ひび割れた大地と立ち枯れた木々が広がる、絶望的な光景に変わり果てていた。

「……空気が重いわね。アステリアの地下にある『あの匂い』に似てる」  サリアが不快そうに鼻を寄せた。彼女の言う通りだ。ここには、放置された戦場のような、腐敗した魔力の残滓が漂っている。周りの植物も、俺たちの村で生息していた不気味な植物が生え始めていた。

領地の境界付近で、俺たちは数体の魔物に遭遇した。村の周辺にいた「角ウサギ」や「土蜘蛛」といった雑魚どもだ。  俺が拳を振るうまでもなく、短剣を一閃させるだけで事足りる。だが、奇妙だった。数体を仕留めると、残りの魔物たちは怯える風でもなく、組織的な動きで森の奥へと逃げていったのだ。

「待って、アルス! 深追いは危険よ!」 「わかっている。だが、ここで逃がせば男爵の悩みは解決しない」

確信があった。これは「逃走」ではなく「誘引」だ。  案の定、森の開けた場所に出た瞬間、周囲の茂みから数十体の魔物が一斉に姿を現した。包囲網。明らかに知性を持った動きだ。

「ヒヒッ……。やはり来たか。あの方と同じ臭いだ。お前も村の追手だな?」

奥から現れたのは、山羊の頭に人間の胴体を持つ、歪な魔物だった。そいつは濁った瞳で俺を凝視し、滑らかな人語を操った。

「だが、前のやつらとは少し違う。歪で、濃密な香りだ…」

「魔物が喋った……!?」  サリアが驚愕に目を見開く。村の教本に「人語を解する魔物」など載っていなかった。

「お前たちが領民をさらったのか?」 「さぁな。俺たちに人間の区別などつかない。だが、お前はいい。喰い甲斐がありそうだ!」

魔物が手を掲げるとその先端からどす黒い炎の塊が放たれた。魔法を使う魔獣。アステリアの常識では、魔法は「選ばれた人間」だけの特権だったはずだ。

「アルス、危ない!」  サリアが防御魔法を展開しようとする。だが、俺の方が速かった。

(――神経加速ニューラル・ブースト、最大出力) (――筋結合マッスル・バインド、右腕に全魔力を封鎖)

俺は回避しなかった。真正面から黒炎の渦へと突っ込み、その中心に拳を叩き込む。  果実を貪り、内側で限界まで圧縮された魔力が、拳の衝突と共に一気に開放される。

「『魔力を通した一撃』――ただの衝撃だ。受け取れ」

ドォォォォン!!  空気が爆ぜた。黒炎は霧散した。続けて2発目の俺の拳は山羊頭の魔物の胸部を捉えた。    バキバキバキッ!!  内側から爆発するような破壊。魔物の強固な骨格が、粉々に粉砕され、後ろの樹木数本をなぎ倒しながら吹き飛んだ。

「なっ……魔法も使わず、我らの障壁を……グハッ……!? バカな、人間が……これほどの……出力を……」

魔物は絶命の直前まで信じられないといった様子で俺を見て、そのまま塵となって消滅した。 周りを囲んでいた魔物は統率を失いばらばらに逃げていった。

魔物の消滅した跡に、一つ、鈍く輝く結晶が転がっていた。

「……何、これ?」  サリアが近寄ろうとする。俺は反射的に、彼女より先にその結晶を拾い上げた。  掌から伝わるのは、これまでに感じたこともない高純度の魔力の拍動だ。

(魔力のこもった石? こんなもの、村の魔物にはなかったぞ)

直感した。これは魔力の塊だ。これを「摂取」すれば、俺の飢えた細胞はさらに進化するだろう。だが、今の俺の異様な修行を知っているサリアが見れば、間違いなく悲鳴を上げて反対する。 「アルス、それを見せて……」 「……いや、ただの死骸の欠片だ。汚いから触るな」  俺は嘘を吐き、サリアの目を盗んでその結晶をポケットの奥へと隠した。

魔物の巣となっていた洞窟の奥へ進むと、そこには鼻を突く死臭が充満していた。  そして俺たちは、見てはいけないものを見てしまった。

「……あ」  サリアが口を押さえ、その場にへたり込む。

そこに転がっていたのは、数名の死体。  村の精鋭部隊の装束を纏った、見覚えのある男たちだ。  だが、その死に様は異常だった。魔物に食い荒らされた跡はあるが、致命傷は別にある。

死体のすべてが、焼かれたように黒焦げになっていた。

「……ライゼン」  俺はその名前を吐き捨てた。    かつての仲間、村の誇りだった精鋭たちを、ライゼンは迷いなく屠ったのだ。

「どうして……どうしてこんなことができるのよ、ライゼン……」  サリアの震える声が洞窟に響く。

(……待ってろよ、天才)

神と崇められ、かつての仲間に手をかけるお前の首を、この「無能」の拳で引きちぎってやる。


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