表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したのに魔法適性ゼロ、でも絶対一番になります!  作者: スンスンスン
アステリア~イゾルデ編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
43/79

43話 破綻した技

心臓が、聞いたことのない速度で脈打っている。古木の根元へずり落ちた俺の肉体は、イゾルデの放った黒炎に容赦なく喰い破られ、全身の表皮が炭化してボロボロと剥がれ落ちていた。衣服は焼き切れ、炭化した皮膚の隙間から、ドロドロとした赤黒い血が間断なく噴き出している。 だが、噛み砕いた魔石の凶暴なエネルギーが、細胞膜の内側から無理やり補修を続ける。ピキピキと音を立てて炭化した皮膚が剥がれ、その直下から生の赤黒い肉芽が、ものすごい勢いで盛り上がり、血管を繋ぎ、神経を接合していく。それは医療や生物学の常識を完全に無視した、魔石の暴力的な再生機能だった。細胞が強制的に超高速分裂を繰り返す代償として、全身を焼き焦がすような激痛が神経を突き抜ける。しかし、その激痛と引き換えに、俺の肉体は強引に「動ける状態」へと引き戻されていく。 俺は一呼吸で立ち上がり、気管に入り込んだ煤を血痰とともに地面へ吐き捨てながら、地を睨みつけ、再びイゾルデに向かって重い足を進めた。


「あら? しぶといのね。今の、普通の人工魔族なら消滅してるくらいなんだけど」


イゾルデが、心底意外そうに端正な眉をひそめる。その視線に対し、俺は裂けた唇の端を吊り上げ、ぐにゃりと歪んだ笑みを返した。


「おいおい、何回言わせんだよ。俺が上で、お前が下だ。……イグニスをぶっ潰すために用意した、取って置きを見せてやるよ」


――ガァァァァァァァァッ!!!

俺の身体のすべての毛穴、すべての傷口から、どす黒い魔力が濁流となって一気に噴出した。 広がる魔力は、イゾルデの操るものと同じ無彩色の黒炎。だが、俺はそのすべてに、「超振動」を加える。 左拳という局所だけじゃない。体外に放出された黒炎の魔力粒子、果ては俺自身の骨、筋肉、内臓、皮膚の末端細胞にいたるまで、そのすべてを分子レベルで超高速振動させる。物質の結合を揺るがす波動。俺の存在そのものが、超振動パンチと同等、いや、それ以上の凄まじい破壊エネルギーの塊へと変質していく。


「――っ、が、ぁ……あ」


あまりの超高周波の負荷に肉体が耐えかねて、骨が悲鳴を上げ、俺の肉体が外側からグズグズと崩れ始める。網膜の毛細血管が同時に破裂して視界が真っ赤に染まり、指先の肉が自壊して肉片となり周囲に飛び散る。だが、肉が消し飛んだその端から、魔石の持つ圧倒的な再生能力が細胞を無理やり繋ぎ止めていく。 ミリ秒単位で繰り返される、破壊と再生の、同時狂奔。肉体が消滅しようとする速度と、再生しようとする速度のデッドヒート。


「あなた、面白いわね…。身体が、崩れているじゃない。自滅する気?」


狂気の沙汰を見るようなイゾルデの冷淡な言葉に、俺は溢れ出てくる血の泡を奥歯で噛み殺して、狂おしく笑った。


「いや、死なねぇ。――俺が諦めねぇ限り、負けねぇんだよ。お前らが天才だろうが天災だろうが関係ねぇ。俺が全部、蹴散らす……!」


ドンッ!!! 足元の地面を陥没させ、俺はその崩壊し続ける異形の姿のまま、イゾルデに向かって突っ込んだ。 空間全体を歪ませながら巻き込む、黒炎と黒炎の再衝突。 先ほどの一撃では、質量と密度の差で一方的に押し負けた。だが、今の俺が身に纏う黒炎は、触れるものすべての分子結合を強制分解する「超振動の嵐」だ。激突した瞬間、世界から音が消え、イゾルデの展開した絶対的な黒炎の壁が、俺の放つ超振動波に触れた瞬間から外側に向かってガリガリと粒子レベルで削られ、虚空へ分解されていく。


「な、に……っ!?」


ゆっくりと削られ、無敵の防壁が明確に押し負けていく現実。そして、その背後から肉薄してくる狂気的なアルスの特効攻撃を眼前にし、イゾルデの美貌は初めて、底知れない恐怖に歪んだ。


「私が、こんなやつに力負けするですって……!? ありえない、嘘よ!」


イゾルデが顔を恐怖に歪め、体内の膨大な魔力を最大出力まで跳ね上げる。周囲の樹木が瞬時に炭化するほどの狂烈な熱量が俺の全身を襲うが――まったく通用しない。その熱量も、放射される魔力もろとも、俺の全身から放たれる超振動の波がすべて干渉し、虚空へと散らしていく。


「そこを、退けぇぇぇぇッ!!」


魔力の壁に強引に割り込み、イゾルデの懐へ潜り込み、俺は限界まで引き絞った左拳を力任せに振りぬいた。

ドンッ!!!

肉肉しい、そして重金属が衝突したかのような濁った衝撃音が、夜の樹海に凄絶に炸裂する。 直撃のコンマ数秒前、イゾルデは本能的な恐怖に従って全魔力を前方に一点集中させ、強固な魔力の盾を完成させていた。だが、俺の左拳は、彼女の強固な盾を真っ向から粉砕し、その奥の肉体へと突き抜ける。


「あ、がっ……、はあぁっ!?」


凄まじい衝撃波が体内を駆け巡る。イゾルデは、その絶大なダメージをまともにその場にとどまって受け止めるのを避けるため、天才的な戦闘直感によって咄嗟に身体の周囲に暴風の気流を纏わせて地を蹴り、衝撃の物理エネルギーを、自身の身体ごと強引に上空へと逃した。 それでも、彼女の肉体には防ぎきれなかった甚大なダメージが突き抜けていた。クロスしてガードした両腕の骨がミシミシと嫌な音を立てて軋み、内臓の破裂に伴って口元から鮮血が激しく溢れ出す。

夜空の遥か上空――。

衣服を破られ、ボロボロになりながらも、アルスの物理攻撃の手が絶対に届かない高度まで一気に舞い上がったイゾルデが、激しく胸を上下させて息を荒げながら、眼下の地上に取り残されたアルスを見下ろした。


「……は、ははっ! あなたには付き合ってられないわ。こうやって空にいれば、あなた、その無茶苦茶な身体のまま勝手に死ぬでしょ。お笑いね、はははは!」


肺から血を吐き、息も絶え絶えになりながらも、イゾルデは眼下の地上で身動きの取れない俺に対して、勝利を確信したように勝ち誇った声で嘲笑する。 地上で、超振動の負荷によって全身の皮膚を崩壊させ、夥しい血を流しているアルスは、届かない天空に浮かぶ天災をじっと見上げ、血の混じった息とともにぽつりと呟いた。


「……お前、飛べるのかよ」


超振動の過負荷によって視界が激しくかすむ中、重力に縛られたまま、決して届かない天空を見上げるアルスの言葉が、静かに夜の樹海へ消えていく。 振動を解除すれば、その瞬間に圧倒的な力の差により焼き尽くされてしまう。


「随分、楽しそうじゃねぇかよ。アルス」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ