表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したのに魔法適性ゼロ、でも絶対一番になります!  作者: スンスンスン
アジール ~ ガウル編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
27/41

27話 不落を穿つ拳

 人工魔族の襲撃から一夜明けた、翌朝。

 アジールの荒涼とした訓練場には、張り詰めた緊張感が漂っていた。

「さあ、始めようか」

 ガウルがその巨躯を揺らし、訓練場の中央へと進み出る。その皮膚が瞬時に黄金色に変質し、彼の肉体を絶対無比の城塞へと変えていく。

「まずは俺からだ!」

 ライゼンがギラついた目を輝かせ、前に出ようとした。昨日披露した新技『神雷穿しんらいせん』の手応えが、彼を突き動かしていた。あの超収束された破壊の光線なら、ガウルの盾をも穿てるはずだ、と。

 だが、ガウルは大きな掌を前に出してそれを制した。

「いや、ライゼン。お前との再戦は、今は必要ない」

「あぁ? ビビってんのかよ、ガウル」

「違う。お前の新技は、昨日の実戦で十分に見せてもらった。……正直に言おう。あの技を受けるのは、今の俺でも『防御だけ』ではキツイ。」

「ッ……!」

 ライゼンは言葉を詰まらせた。しかし、ガウルの真剣な眼差しに嘘がないことを察し、チッと不機嫌そうに舌を鳴らして一歩下がった。

 ガウルはフッと口元を緩めると、今度は静かに佇む黒髪の少年に視線を向けた。

「さて、アルス。次はお前だ。昨日の一撃、随分と綺麗に魔族を処理していたようだが……その実力、この盾で確かめさせてもらうぞ」

「あぁ」

 アルスは一歩前へと踏み出し、深く、長く呼吸を置いた。

 自身の肉体を、細胞、筋肉、神経レベルで完全に把握し、制御する独自の戦闘ロジック。脳の奥深くから、全身を巡る微細な信号を極限まで研ぎ澄ませていく。

 回路を持たない無能と蔑まれた男が磨き上げた、対ガウル用の一撃。

「ふーっ……」

 次の瞬間、アルスの姿がブレた。

 魔力制御による超速の踏み込み。ガウルが反応して腕を交差させ、絶対的な岩の強靭さがその身体を覆う。

 アルスは腰の捻り、脚の踏み込み、全ての運動エネルギーを右拳へと一点集中させる。

「シッ――!」

 放たれた拳が、ガウルの硬質化したガードの上へと突き刺さる。

 ――ズ、ズゥゥゥゥンッッ!!!!

 アジールの地下空洞全体を震わせるような、奇妙な重低音が響き渡った。

 派手な爆発はない。しかし、拳が触れた瞬間、ガウルの無敵を誇る岩の身体に明確なゆらぎが見えた。

「なっ……が、はっ……!?」

 ガウルの顔が驚愕に歪んだ。

 次の瞬間、ガウルの腕の表面を覆っていた超硬度(黄金色)の岩の装甲が、パキパキと音を立てて細かくひび割れ、ボロボロと砂のように崩れ落ちていく。衝撃は肉体の奥深くまで浸透し、その巨躯が大きく揺らいだ。

 ドサリ、と重い音が響く。

 あの絶対不落の守護者と呼ばれたガウルが、ガバッと激しく片膝を突き、苦しげに胸を押さえて荒い息を吐いていた。

 サリアは青ざめた顔で即座に駆け出し、ガウルの傍らで治癒魔法を展開した。

「ガウル、動かないで! すぐに治します! ……アルス! 無茶苦茶だよ、いくら何でもやりすぎ!」

 サリアに本気で怒られ、アルスは少し気まずそうに自分の拳を見つめた。

「すまない、手加減したつもりだったんだが……想定以上に威力が乗った」

 治癒の光に包まれながら、ガウルは驚きを隠せない様子で、崩れかけた己の腕とアルスを交互に見つめていた。

「……振動、か?」

「あぁ。気付いたか」

 アルスは拳を下ろし、淡々と解説を始めた。

「この技は、拳に魔力を集中させ、超高速で振動させることで破壊力を格段に引き上げているんだ。どれだけ外側を硬くしても、魔力の振動により触れたものを砕く」

 アルスは少しだけ顔を顰め、自身の右腕をさする。

「ただ、この超振動は強烈すぎる。そのまま放てば俺自身の骨や筋肉まで粉々に吹き飛ぶ。だから、腕から体幹にかけての全神経を同調させ、魔力による『制震制御』により、自分へのダメージを相殺・軽減させている。……正直、この出力を身体が受け入れられるレベルまで制御するのには、かなり苦労した」

 その淡々とした説明を聞いていたライゼンが、驚愕し、頭を抱えた。

「おいおいおい……。魔力を超振動させるだけでもイカれてんのに、それを自分の身体が壊れねえように制震コントロールしてただと? お前、ますます人間離れしてんな……不気味の塊かよ」

あきれ果てたようなライゼンの言葉に、ガウルはしばらく沈黙していたが、やがてサリアの肩を借りてゆっくりと立ち上がった。

 剥がれ落ちた岩の装甲の奥から、人間の皮膚が戻っていく。ガウルは豪快に笑い、アルスの肩に大きな掌を置いた。

「ハハハ、見事だ! アルス、お前は間違いなく天才だよ。回路の有無なんて関係ない。俺は、お前という男を心の底から認める」

アルスはその言葉を、ただ静かに、しかし確かな野心を瞳に宿しながら受け止めるのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ