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転生したのに魔法適性ゼロ、でも絶対一番になります!  作者: スンスンスン
偽りの神 ~ライゼン編

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11話 拳と雷

深夜の大聖堂。数時間前に背を向けたはずの謁見室の扉を、俺は再び押し開けた。

 玉座に深く腰掛けたライゼンは、俺の再訪に驚く風もなく、ただ酷く不快げに俺を睨み据えた。

「お前が戻ってくることは分かってたよ、アルス。……サリアは置いてきたんだな」

「ああ、危ないからな」

「……ハッ。こんなことにサリアまで巻き込みやがって。お前のせいで、あいつの人生はめちゃくちゃだよ」

「あいつが勝手についてきただけだ」

「違う!」

 ライゼンが激昂し、玉座の肘掛けを叩いた。バチィッ! と激しい火花が空間に飛び散る。

「お前さえいなければ、サリアは村を出なかったんだ! 無能のくせに、お前はいつもサリアの中心にいて、いつも俺の目の前でチョロチョロと目障りなんだよ! 努力だけが取り柄の出来損ないが……!」

「……わけのわからないことを。それがお前の遺言でいいのか?」

「てめぇのな! 『迅雷ボルト』!!」

ライゼンの叫びと同時に、視界が真っ白に染まった。

 成人の儀で、俺の意識を一瞬で刈り取った超高電圧の雷撃。それは正確に、俺の心臓を貫く軌道で放たれた。

だが、俺は逃げなかった。

 迫る雷撃に対し、俺はただ静かに、右の手のひらを突き出した。

バリバリバリィィィン!!

鼓膜を裂く爆音が轟く。しかし、俺の身体は吹き飛ばされなかった。激しい電光が俺の手のひらに衝突し、そのまま霧散していく。

「――馬鹿な! 素手で防ぎやがった……!?」

 玉座のライゼンが目を見開く。

俺もこの一年、ただ無駄に鍛えていたわけではない。ライゼンの雷対策は十分にしてきた。

 素手で受け止められたのは、俺が自分の右手を『完全な絶縁体』へと変えたからだ。

電気は電子の移動によって発生する。ならば、手の中の電子の動きを魔力で一時的に止めれば、電流は通らない。常時は使えないし、細胞の機能を維持するために魔力粒子で代替するリスクもあるが、一瞬だけでも防御できればそれで価値がある。

あとは反応速度だ。見てから動く脳の信号も、本来は電気信号。それすらも魔力粒子で代替し、格段に反応速度を上げている。

 ただ、肉体の物理的な限界があるため、心臓を守るファイティングポーズからフォームを崩すことはできない。肉体をガチガチに固定し、最小限の動きで雷をいなす。

ライゼンの驚愕の表情が、次第に怒りへと変わっていく。

「お前はいつもそうだ! 無能のくせに! 努力すればいつか天才に届くと思ってる。俺が手加減してやればすぐにつけ上がりやがって。目障りなんだよ。努力したって才能の前には無意味なんだ! 初めから順番は決まっているんだよ!」

激昂したライゼンの魔力が跳ね上がる。

「死ねぇ!! 『天雷インドラ』!!」

以前、その衝撃だけで俺に致命傷を負わせた必殺の雷魔法。それが、今のライゼンは俺を包囲するように連射する。

頭上から、左右から、逃げ場のない速度で巨木の如き雷柱が同時に牙を剥く。轟音、光、放電熱、すべてが網の目のように俺を圧殺しにかかる。

 だが、俺は一歩も引かない。

筋結合マッスル・バインド――全開)

俺は全身の筋肉に魔力を限界まで溜め込み、密度を極限まで高めて強固な岩と化した。

 バチバチと皮膚を焼く衝撃を強引に肉体だけで受け止める。衝撃波が内臓を揺らし、口の端から血が漏れるが、歩みは止めない。

天雷インドラまで受けるか・・・!?」

魔力の嵐を力任せに押し切り、爆煙を引き裂いて、一気にライゼンの懐へと肉薄した。

(届く――!)

俺の拳が届く、絶対の距離。

 俺は右拳を振り上げ、ライゼンの胸のど真ん中めがけて、すべての質量を乗せて振り抜いた。

勝った。そう確信した瞬間。

 目の前のライゼンが、にやりと笑った。

バチッ!!!

「――が、はッ!?」

直撃の衝撃。しかしそれは俺の拳ではなく、俺の全身を襲った凄まじい反発エネルギーだった。

 俺の身体は後方に激しく吹き飛ばされ、大聖堂の床を転がって石畳へ叩きつけられる。肺の空気がすべて飛び出し、激しい咳き込みと共に血を吐いた。

(なぜだ……? 攻撃のモーションは、完全に俺の方が速かったはずだ……!)

混乱する脳内で、必死に現状を分析しようとする。

 痛む身体を押さえ、信じられない思いで前方のライゼンを見た。

ライゼンは一歩も動いていなかった。

 だが、あいつの両腕は――肘から先が、完全に青白い『雷そのもの』へと変貌していた。

「……本当は、イグニスの真似だからやりたくなかったんだがな」

腕をパチパチと爆ぜさせながら、ライゼンは冷酷な目で俺を見下ろした。

 物理的な質量を持たないエネルギーの腕。だからこそ、俺の拳はあいつの肉体に触れることすらできず、逆に電撃で一方的に弾き飛ばされたのだ。

「お前があまりにしつこいからさ。……これで始末してやるよ」

雷と化した両腕が、眩い光を放ち始める。

 絶縁の盾すら焼き切るような絶望的な熱量が、謁見室を満たしていった。


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