# エピソード107 ## 「大賞受賞作家」
# エピソード107
## 「大賞受賞作家」
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翌朝。
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学校の正門。
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「おはよう!」
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「見た!? ニュース!」
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「夏音先輩だ!」
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朝から校内は大騒ぎだった。
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新聞。
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ネットニュース。
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出版社の公式発表。
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新人賞大賞受賞。
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高校生作家・夏音。
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その話題で持ちきりだった。
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教室に入った夏音は驚く。
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「夏音、おめでとう!」
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「サインちょうだい!」
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「テレビに出るの?」
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次々と声を掛けられる。
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夏音は困ったように笑った。
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「ま、まだ何も決まってないよ」
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それでも。
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友達はみんな自分のことのように喜んでくれた。
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一方。
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職員室。
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「恒一先生!」
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「おめでとうございます!」
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他の教師たちが集まってくる。
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「最終選考に残ったそうですね!」
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「惜しかったですね!」
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「でもすごいですよ!」
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恒一は照れくさそうに頭をかいた。
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「ありがとうございます」
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最終選考。
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受賞は逃した。
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それでも。
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自分の作品が認められたことは大きな一歩だった。
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その時。
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職員室の電話が鳴る。
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「はい、○○小学校です」
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電話を受けた先生が振り向く。
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「恒一先生」
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「出版社の黒川さんからです」
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「はい!」
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恒一は受話器を取った。
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「もしもし」
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黒川の声が聞こえる。
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「先生」
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「おめでとうございます」
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「ありがとうございます」
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「ですが」
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黒川は少し笑った。
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「話はまだ終わっていません」
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「え?」
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「東京へ来られますか」
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「またですか?」
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「今度はもっと大きな話です」
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恒一は息をのむ。
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放課後。
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出版社。
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黒川。
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玲奈。
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そして神谷。
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三人が待っていた。
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神谷が笑顔で立ち上がる。
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「先生」
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「最終選考、お疲れさまでした」
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「ありがとうございます」
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神谷は一冊のファイルを差し出す。
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「これを見てください」
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恒一が開く。
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そこには。
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**『出版企画書』**
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という文字。
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「……え?」
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黒川が静かに言う。
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「編集部で話し合いました」
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「先生の作品を」
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「書籍化したいと思います」
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恒一の手が止まる。
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「書籍化……?」
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玲奈が微笑む。
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「新人賞は逃しました」
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「ですが」
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「作品そのものの評価は非常に高かったんです」
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神谷が続ける。
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「だから」
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「賞とは別に出版したい」
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恒一は言葉を失った。
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受賞しなかった。
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だから終わりだと思っていた。
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違った。
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挑戦は。
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ちゃんと誰かが見ていてくれた。
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その頃。
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別室では。
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夏音も黒川から説明を受けていた。
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「夏音さん」
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「はい」
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「大賞受賞作は来年春に発売予定です」
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「はい!」
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「そして」
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黒川は少し笑う。
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「先生の本も同じ年に出版予定です」
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夏音は目を丸くした。
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「先生も!?」
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「はい」
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その瞬間。
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夏音は勢いよく立ち上がった。
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「やったー!」
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思わず叫ぶ。
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廊下まで聞こえるほど大きな声だった。
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数分後。
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廊下で恒一と夏音は顔を合わせる。
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目が合う。
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どちらからともなく笑う。
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「先生!」
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「夏音!」
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「先生の本!」
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「夏音の本!」
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二人は同時に言って。
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同時に笑った。
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夢だった。
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本屋に。
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自分たちの本が並ぶ。
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そんな未来を。
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かつては想像すらできなかった。
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しかし今。
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その夢は。
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現実になろうとしていた。
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神谷は二人を見つめながら小さくつぶやく。
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「ここからが、本当のスタートだ」
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その言葉の意味を。
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二人が知るのは。
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もう少し先のことだった――。
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### 次回
# エピソード108
## 「サイン会」
初めてのサイン会が決定!
緊張で眠れない夏音。
一方、恒一は「先生」と「作家」の二つの顔の間で、新たな悩みを抱え始める。
そして、二人の前に現れる一人の少女が、物語に新しい風を吹き込む――。




